【答えてくださった方】
幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。
♦おりものの量が増えるのは全然悪いことじゃない!
おりものは専門的には帯下(たいげ)と呼ばれ、雑菌が腟に入るのを防いだり腟に潤いを与えたり老廃物を排出する、そして受精を助けるなど、大役を果たしていることを知っていますか?
おりものの量は女性ホルモン「エストロゲン」の分泌と連動していて、ホルモンが多くなる時期にはおりものの量も増え、減少すればおりものも減っていく。
つまり、女性ホルモンの分泌がゼロに近づく閉経以降は、おりものは減っていくんですよ。
ではなぜ、この方々のように閉経に向かっているはずの40代女性に、おりものの急な変化が起こるのでしょう?
最初の質問、量が増えたという方。
42歳という年齢はいわば女盛り、女性として円熟しているときで、女性ホルモンが更年期前に最後の力を振り絞って出てくることが多い時期。
女性ホルモンのレベルがすごく高くなっていることがあります。
ホルモンが増え、おりものも増えている。
これは、いつでもセックスができる状態なので、全然悪いことではなく、ポジティブに考えていいと思います。
ただ、それは妊娠に向けて子宮というベッドがふかふかになっている状態なので、妊娠を希望していない方は気をつけないといけませんね。
口の中に唾液、鼻には鼻水、目には涙があるように、人間には潤いが必要です。
どこも乾燥していたらいけません。
腟の中もしっとり潤っていたほうがずっといいんじゃない?
そのほか、量が増えるのは汗をかくのと同じく夏の暑いとき、性的な感情が高まっているときなど。
セックスの後も女性ホルモンとともにおりものが増える傾向にあります。
また、おりものシートや尿もれシート(パッド)を使っている人、きつい下着や通気性の悪い下着をつけている人も腟内が蒸れて、おりものが増加する傾向があるかも。
月経が不順になると、腟では「デ-デルライン桿菌(かんきん)」という善玉菌、乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)の細菌叢(そう)のパワーが落ちてくるので、いろいろな雑菌が繁殖しやすくなります。
皮膚の常在菌でもある大腸菌やブドウ球菌などが入ってきて、細菌性の腟炎を起こしやすく、おりものも増えてくるんですね。
♦おりものを毎日チェックして、健康のバロメーターに!
おりものの色が変わり、においも強くなってきたという2番目の質問。
おりものの量・色・状態はその時々で変化するのが普通で、とても個人差があります。
質問者の方は48歳ということだから、閉経に向かっていて、なおさら変化が大きい時期。
正常なおりものは、卵胞期の前半は半透明から白っぽく、排卵前後には粘度が低下して透明、びよーんと生卵の白身みたいに伸びる感じに。
排卵が終わるとベタッとしてショーツにつくと黄色くなるアレです。
色は、不正出血があると赤茶っぽくなることもあります。
ほかにも性器クラミジアや淋菌などの性感染症(性的接触によって感染する病気)にかかると、においが強く茶色や緑、紫色になったりすることも。
子宮頸がんや子宮筋腫、ポリープなどでも色が変化することがあります。
子宮頸がん検査は当然ながら、身に覚えがあっていつもと違う感じがしたら性感染症の検査もしたほうがいいでしょう。
今現在セックスをしていなくても、過去の性交で感染していることもあるんですよ。
そして、体調がいいときはバリアができているので雑菌も追い出すことができるけれど、疲れている、寝不足、ごはんを食べていない…などパワーダウンしているときは、口臭や便臭も強くなるのと同様に、おりもののにおいは強くなる傾向にあります。
ね、心当たりがあるのでは?
いやいや、そういうことではなく、もっと異常を感じるという人!
ぜひ気軽に婦人科を受診してください。
婦人科受診の目安としては…
おりものの状態(量・色・においなど)が急に変わったことに加えて、
デリケートゾーン(外陰部)がかゆい
排尿痛や性交痛がある
不正出血(月経以外の出血)がある
これらが当てはまる場合です。
私は、おりものは女性にとってすごくいいものだと思っているんです。
なぜ「下り物(おりもの)」なんていう名前なんでしょう?
昔は、性病などのイメージだったんでしょうかね。
産婦人科医としては、おりものは健康状態を見るのにとてもよいツール。
不妊治療の方などには、おりもののことは詳しく聞きますね。
おりものがたくさん出ているということは、ちゃんと卵巣が機能している証しですから。
女性にとっては健康のバロメーター。
トイレで尿や便を観察することも大事だけれど、おりものもちゃんと観察しておきましょう。
取材・文/蓮見則子