Book Reviw
自分の体を生きるための物語
『わたしに会いたい』
西 加奈子 著/集英社
1,540円
人とは歩き方が違うことを周りにからかわれるミィ。彼女は己の中にもう一人の「わたし」の気配を感じ、その存在を探し続けるようになる。表題作をはじめ、生殖、若さ、加齢、病など心や体とかかわりの深い短編8作を収録。繊細な世界観の中から生への希望を伝えてくれる。
四季折々の植物を愛でるヒントにも
『BOTANICAL DIARY ボタニカルダイアリーに「植物画」を描いて、楽しむ』
芝田美智子 著/主婦の友社
2,530円
ボタニカルアーティストによる、植物画の指南書。画材のそろえ方やデッサンなど基礎指導のほか、著者の作品や四季折々の花の写真なども。ボタニカルアートの歴史や、生活の中に取り入れるコツも収録。実践するのはもちろん、ビジュアルブックとしても充実の一冊。
平凡が持つ幸せを嚙みしめたい
『トゥデイズ』
長嶋 有 著/講談社
1,760円
育児のため、郊外にある築50年のマンションに引っ越した美春と恵示。一人息子を守り、働き、“普通の大人”として過ごすことへの小さな違和感と感動。人生の中の貴重な時間を描いた長編。漫画評論家でもある著者の、思春期の少女を主人公にした漫画原作「舟」も収録。
2024年の大河ドラマの参考にも!
『嫉妬と階級の「源氏物語」』
大塚ひかり 著/新潮社
1,815円
光源氏を中心に平安貴族の生き様を描いた『源氏物語』。広く知られるこの作品を、紫式部の社会的な立場からひも解く古典エッセイ。狭い世界ゆえの嫉妬、そして「紫式部が上流貴族の末裔だったから」という、物語への考察が深い。名作への新たな解釈に好奇心を刺激される。
撮影/名和真紀子 取材・原文/石井絵里