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認知症の母の介護について。どうしてあげるのが母にとって幸せ?【60代読者のお悩み】

地曳いく子

地曳いく子

non-no、MORE、Oggi、eclatなど雑誌を始めとし、タレントの衣装も担当。イタくない大人のスタイリングを得意とし、テレビ、トークショーなどで活躍、キャリア30年のスタイリスト。大人のおしゃれを考え直す「50歳、おしゃれ元年。」(集英社)をはじめ、「服を買うなら、捨てなさい」(宝島社)、「ババア上等! 余計なルールの捨て方 大人のおしゃれDo!&Don’t 」(集英社)など著書多数

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今回は「親問題」にぶつかるおふたりのお悩みにお答えいたします。人生経験豊富な地曳さんならではのお答えに思わず納得!

 

お悩み:その34

認知症の母親の介護についてです。どうしてあげるのが母親にとって幸せなのか、わからなくなっています。(62歳・パート・アルバイト・兵庫県)

 

地曳さんのお答え

私も親の介護をしました。

最後は認知症になった母に「あなたは娘のいく子じゃない!」と全否定されて、涙ぐんだことも…。

 

ただ、私の母の場合、認知症と言っても常に症状が出ているわけではなくて、たまに親戚が来たりすると、その瞬間だけはしっかりするんですね。だから親戚からは「いく子ちゃんって本当に大袈裟ね! お母さん、全然普通じゃないの!」と、なぜか私が責められて悔しい思いをしたりすることもありました。

 

実際に介護をしているときは気付かなかったんですけど、きっとあの頃は私自身が弱っていく母を認めたくなかったんです。料理も掃除もなんでも出来て、しっかりしていた母がどんどん変わっていったのがショックで…。そういう母を見ているのがすごく嫌でした。
それに自分の親であるからこそ、「いつかは自分もそうなるんじゃないか」という恐怖心もありました。

 

…で、認知症っていうのはある意味、もう違う人生を歩んでいるんです。全く違う人間になっていると思って、昔のお母さんの姿を重ねないほうが、自分も楽だし、お母さんのためでもあると思います。

 

もう親子の立場が逆転していると思って、“お母さん”ではなくて“小さい娘”として見ましょう。
小さい子どもがいる家に、石油ストーブやガスコンロなど、火事になる元があったり、危険なものが手に届くところにあったら危ないですよね。だからオール電化にして火事のリスクを回避したり、危ないものは厳重に閉まったりして物理的な危険から守ってあげましょう。

 

「あれは何? これは何?」としつこく聞かれたり、「ああじゃない! こうじゃない!」と、ガミガミ言われることもあると思いますけど、絶対に逆らわない。あなたも小さい頃は、お母さんに「あれはなんて言うの? これはなんて言うの?」「ああして! こうして!」と言っていたはずなんです。
本人はもうわかってないんだから、否定しないほうがいいし、否定したところで自分が悲しくなるだけですから。

 

イラスト/松元まり子

イラスト/松元まり子

 

 

ところで、あなたは私と同い年だから、あなたのお母さんもギリ戦争を経験している世代ではないでしょうか? だとしたら、調子が良いときがあれば、一緒に温泉やエステなど、いろいろところに連れて行ってあげてください。お母さんが、娘時代にできなかったことをさせてあげるんです。外に出るのが難しかったら、ちょっと高級なケーキを買って帰ったりしてお母さんに“おもてなし”をしてあげてください。そうすれば、お母さんは幸せだし、あなたも幸せ。

最後に。
介護で一番重要なのは、まず自分自身を大切にすることです。
あなたにも自分の人生があっていろいろなことを抱えている中で、お母さんを想う気持ちは素晴らしいと思います。だけど、無理をし過ぎて不調が出てしまったら元も子もありませんから、出来る限りの範囲内でやってあげてくださいね。

 

 

お悩み:その35

毒親から心身ともに解放されるには、物理的に離れる以外にどうしたらいいですか?
それと、私自身が親から抑圧され、親の希望通りに育てられてきたので、私が親の立場になった今、自分の子どもをどうやって育てていいのかがわかりません…。「型にはめてはいけない」と思いつつ、最低限の躾はしなければいけないし…。どこまでが躾で、どこからが虐待なのか、線引きがわかりません。(39歳・自由業・長野県)

 

地曳さんのお答え

まず、お子さんに対して。

簡単です。自分がされて嫌だったことはしなければいい。逆に、されて嬉しかったことをすればいいだけ。そこは“毒親”に育てられたあなたが一番よく分かっているでしょう。
そもそも、そうやって「躾をしなければいけない」とか、お子さんをコントロールしようとしている時点であなたも毒親に片足を突っ込んでいます!

 

子どもに本当に必要なのは、お礼を言うとか悪いことをしたら謝るとか、躾というか人として大切な部分を小学校に入る前までに教えることだと思います。それ以降はもうその子の個性で一人の人間なので、極端な話、重大な犯罪をさせなければ大丈夫!(笑)
私も小学生の頃まではよく親に言われていました。「自分がされて嫌なことは、他人にはするな」って(今でも意図的にやっちゃうこともありますが笑)。

 

あとね、子どもってあまりに躾とかコントロールしようとすると、あなたみたいに考えられない人間になっちゃう。それが一番怖いです。あなたは親御さんに言われた通りにしてきた結果、今こうやって何が良くて何がいけないのか自分では考えられなくなっているんですよね。
同じことをお子さんにしたら、あなたと同じようになりますよ。負のループです。

 

人間、誰でも人から言われたことだけをやるほうが簡単なんです。でも後々のことを考えたら少しくらい失敗させてでも、自分で考えて行動できる力をつけさせたほうが、生涯を通して見たらその子のためになります。どうしたって親のが先に亡くなるんですから。
うちの場合も、何事も自分で考えるように育てられました。勉強も強制されたことはありません。「あなたが勉強しなくて馬鹿になっても、追々困るのはあなたでしょう」って。
まー、あまりにも自分で考えさせられ過ぎたせいで、今の私みたいなのが出来上がっちゃったんですけど(笑)。

 

「自分も毒親になってるかも…」と自覚がある分、まだ大丈夫ですよ。本当の毒親だったら「この子のためにやってあげているのに!」「こんなにしてあげているのに!」としか思いませんからね。

 

それと、親御さんから心身ともに解放されたいということですが、まず、身体的には一緒に暮らしているのだとしたら、物理的に離れる以外に解決法はないと思います。同居していないなら、極力連絡をしないとかできますが。いくら親とかきょうだいでも合わない人は合わないからですからね。

 

次に心理的な部分ですが、あなたはもうダブル二十歳になるのに、まだ子ども時代に受けた躾の呪いを引き摺っているんですよね。だったら、もう今から自分で自分の躾をし直しちゃいましょう!(笑)

片っ端からお稽古事をして、その道の先生たちにビシバシ怒られてください(笑)。「ちゃんと正座をしなさい!」とか「もっと字を綺麗に書きなさい!」とか、それこそマナー教室にでも通って、箸の上げ下げから躾され直されよう!(笑)。

そうすれば、あなたのためにもなるし、お子さんへの「躾をしたい欲求」も解消されるし、親御さんからの呪いからも解放されて一石三鳥です。いや、そんな好奇心旺盛で逞しい母親の姿を見れば、お子さんにも良い影響があって、一石四鳥になるかもしれません(笑)。

 

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