自分でも「まったく何十年たっても成長してないね」、と思うのですが、アラフィフの今も、子どもみたいにきれいな色のものが好き。キラキラしてカラフルなものが好き。ビビッドな色が絶妙に組み合わされたものを見ると、心が動き出します。
そんな私が、以前よりフォローしている美術雑誌のSNSでよく見ていた展覧会のビジュアルが、まさにツボで。その展覧会、ふと気づくと「今月末まで」、になっていたので、慌てて参上しました。
表参道 GYREのジャイルギャラリーの「チェ・ジョンファ個展 花ひらく森」。
入り口すぐにある鮮やかな色のキラキラポールに、さっそく気持ちがアガります!
「きーれーいー!」
さまざまな色の組み合わせが、お互いに引き立て合って醸し出す美しいハーモニー。
「すごいなー」と思ってしばらく見ていると、「ん!」と気づきました。
「このパーツはもしや?」
ふたつペアになったガラス玉のように見えるものや、大きなビーズのように見えるものは、目を凝らせば「ボウル?」「グラス?」「かき氷皿みたいな?」
よく見ると、日常でも見かける類の、ちょっと懐かしい食器などがたくさん使われています。あれは? これって? あ、ここ! と見分けるのも楽しい
私にとっては今回初めて拝見したこの作家は、チェ・ジョンファ氏。青森県の十和田市現代美術館の巨大な「フラワー・ホース」や、京都で行われた「アジア回廊 現代美術展」での「フルーツの木」など、やはりカラフル&大胆でいて、土地や時代の文脈を深く意識した作品に定評のある超有名な韓国人の現代美術作家さんです。
予備知識を持たず訪れただけに、来た動機とは全然違うところで反応が起きてますが、それこそが展覧会に足を運ぶ醍醐味というもの。
会場にはポールのほかにもねじれバージョンなども。キラキラでわくわく!
なんだかプレシャスなものでできているように見えるけど、実は……というのが面白い
会場の先には、さらにポールたちが。それぞれに静謐なたたずまいは、宗教的な場で見る道具にも似て、厳かさも感じられたりします。
なんかお寺で見るような儀式の道具? と思うけど、よく見るとそれぞれ全然違う、身近なものたちの集積
近寄ってよく見ると、やはりそれぞれの作品をかたちづくるパーツたちには「前世」があることが見えてきます。鋳物っぽい器だったり箱枕だったり。それらはたぶん、とても日常的なモノたち。それもチープで古い「ガラクタ」とも言えるそれが、気配とか、往時の記憶をまといつつ別のモノたちと出会い、「積み重なって」いくことで思わぬエネルギーや可能性が引き出され、全然違う世界を醸し出す不思議さに惹かれます。
特に面白かったのは、このコーナー。「そこに目をつけたか!」というような、意外なモノたちの堂々たる姿が、面白くて、なんだかニコニコしてしまう。
年月や風雨にさらされたモノたちは、過去に役立った来歴や、個々の性格も垣間見える
さて、後ろの壁面も含むそれぞれの作品のパーツの「前世」は何でしょう?
その質感ごと楽しむためにも、ぜひ現場でご覧ください♪
ほかにもネジレ系とか、動く作品など、作家の発想は、さまざまに展開。
絶妙な色、エネルギーを感じるようなフォルム、質感……。もちろん素材の来歴も含め、ワクワクがいっぱい
見た目の面白さや美しさに惹かれて近づくと、「えっ!」という驚きが待っている。その驚きの仕掛けの意味を知って、「なるほど~!」と、また驚く。
美しさやダイナミックさを入り口に、ヒネリやコンセプトの深さで目ウロコに至る。
頭と心がかき回されて刺激されるその感じは、前に流行った「アハ体験」(古くてスミマセン・笑)とかいうものを思い出させるようなスッキリ感もあり。
そんな現代美術の楽しみは、最近のワタシには欠かせない刺激。
というわけで、今回の展示は色や影が美しい作品に間近に触れて、いろんな角度から写真も撮れて楽し~い! しかも無料です。
コンパクトな会場ですし、ほぼ解説も無いサッパリとした展示なので、「へえ~!」「ほお~!」と、楽しむだけで終始しましたが、「モノ」のもつ不思議な魅力や存在感に触れて、身近なものやかたち、そうしたものに満たされた日常の世界を見る目も、変わる気がします。会期はもうあと10日足らずなので、ぜひ急ぎ訪ねてみて!
館内の吹き抜けに、お気に入りのポールが♪ やっぱりキレイ。観たあとは地下のカフェでもちろん、お茶タイム
「チェ・ジョンファ個展 Blooming Matrix 花ひらく森」 表参道のジャイルギャラリー(GYRE GALLERY)にて開催中。 2020年2月24日(月)まで