20代~30代のはじめごろ、年上の知り合いたち(女性)から頂き物をすることが多かった。
とくに食料品。
遊びにおいでと誘われ、ご自宅に伺ったりすると
「これ、いただきものなんだけど、おいしいから少し持って帰らない?」
「あらら、肌が荒れてるね。
ごはんはちゃんと食べてるの?
そうだ!これ持っていきなさい。
私、好きでよく取り寄せてるんだけど、おいしいよ。
あたためるだけで食べられるから」
と高級レトルト食品や果物、パンやお菓子などをよくいただいた。
ホテルの名前が記された缶づめのスープや自分ではとても買えないような佐藤錦、紹介がないと売ってもらえないことで有名な半蔵門の老舗洋菓子店のクッキー、百貨店にしか入っていないパン店のおいしいクロワッサン……
都心の中でも超都心で暮らし、仕事とプライベートのバランスをほどよく保ちながらバリバリ働き(=稼ぎ)、おいしいものをたくさん味わってきたのにちがいない年上の知り合いたちは
「お福分け」
「口福」
と言って包んだお土産をもたせてくれた。
当時の私の食生活はひどいものだった。
少しでも長く眠りたかったので朝ごはんは食べず、昼は会社の中にある小さな売店のサンドイッチかおせんべいで済ませ、夜は会社の近所の店屋物か仕事がらみの飲み会ででるおつまみを食事替わりにしていた。
だからいただいたものはどれも文字通りの〝ご馳走〟で、こんなすごいものを気前よく自分に分け与えてくれる彼女たちに〝真の大人だけがもつ心の余裕と豊かさ〟を見た思いがした。
あれから20年近くが経ち、あのときのみなさんの年齢に私も近づきつつある。
そして気がつけば……
!
なんと私自身が似たことをするようになっていたのである。
いただきものを「お福分け」するのはもちろん、気に入ったものは敢えて大量に取り寄せ、欲しいとも言われてないのにせっせと人に配るようになっていた。
とはいってもこれは私がようやく〝真の大人だけがもつ余裕・豊かさ〟を備える身になったからではない。
(それは、これからご紹介する〝配っているもの〟が高価ではないことからもおわかりいただけるかと思う)
単におせっかいなのである。
そして自分が見つけたよいものを、ほかの人にも知ってほしいだけなのだ。
とどのつまりはおせっかいで押しつけがましいということ。
ということで今回は
「買ってみたらよかったのでたくさんの人に配りまくってきた物」
の一部を紹介させていただくことにする。
まず一つ目がこの甘酒。
金沢の醤油蔵が作っているもので一本税込価格756円(490ml)。
ご存じのとおり〝飲む点滴〟と称され今やどのスーパーにもおいてある甘酒だが、これは玄米からできているという一風変わった商品だ。
あるとき、食べるものにはこだわりがある知り合いと話していたら
「寝る前におちょこ一杯分の甘酒を飲んで寝ると、翌日の体が違うわよ」
と寝酒ならぬ寝甘酒をすすめられた。
「私は甘酒のあのベタっとした甘さが苦手で。
寝る前に飲むのはちょっと……」
と返したら
「うちの娘も甘酒が苦手だったんだけど、これだけはおいしいって飲むの。
この甘酒は香ばしくてさっぱりしてて、ほんとにおいしいわよ」
と、わざわざ商品サイトを開いて画面をプリントしてくれた。
その人が勧めるものはそれまでも〝アタリ〟が多かったので、さっそく自分でネットで検索し購入。
そうしたら……
本当においしい。
「子どものころにまずい甘酒を飲んで以来、甘酒は嫌い」といううちの相棒もこれだけは飲む。
以来、取り寄せては知り合いに配ってきた。
「さっぱりしていて、こんな甘酒は初めて」
という感想が多く、そういうときは
「配った甲斐があった」
と素直にうれしい。
そして2つ目がこのりんご酢。
三年熟成で原材料は、りんごのみ。
サイズは大小あり、我が家は配りやすい下の小ビンタイプ税込価格378円(150ml)を購入している。
このりんご酢との出会いは、毎月相棒やワンコと一緒に行く山形料理のお店。
そこでは提供する料理に使っているお味噌や醤油、七味など(すべて山形産)も売られていて、出される料理のおいしさから試しに買ってみたのがきっかけ。
相棒が酢の物が大好きなため家でよくつくるのだが、このお酢を使うと本当においしい酢の物ができる。
2度発酵させているからなのか、とてもまろやかでノドがツンとすることがないので、相棒はまるでサラダを食べるかのようにバクバクとこの酢の物を食べる。
これもあちこちに配りまくり、もらってくれた人の中には
「健康のためお風呂あがりに炭酸水で割って飲んでる。
今までのお酢と違い、のみやすいから続けられる」
という感想をくれた人も。
最後にぜひ紹介したいのがこちら。
豆腐?チーズ?はんぺん?
いえいえ、食べ物にはあらず。
台所用石鹸で、180gのものが二つ入って税込価格308円。
これがすごいったら!
お皿やお鍋なんかの油汚れもサッとおち、ふきんもこれで洗うと真っ白に!
しかもしかも……
手が荒れない。
荒れるどころか、逆にお皿を洗い終わったあと手肌がやわらかくすべすべになるという不思議な石鹸。
10数年前、在籍していた編集部の編集会議に出すネタを探していたとき、口コミで大絶賛されている人気の固形石鹸があるのを知った。
長野の福祉事業所で丁寧に作られているという。
興味を持ち、取り寄せてみたのがこの石鹸との出会い。
だから使い続けてもう10数年ということになる。
むか~し昔、相棒が初めて台所で洗い物をしてくれるというときに
「こんな石鹸、使いにくそうでいやだ」
と一丁前なことを言った。
「でもこれだと終わったあと手がカサつかないよ、だまされたと思って一度使ってみ」
と言って使わせたところ
「ほんとだ」
と驚いていた。
その実力の高さに「台所だけで使うのはもったいない」と、我が家ではお化粧するときに使うスポンジやパフ、シャツやブラウスなど衣服の襟や袖口を手洗いするときにもこの石鹸を使用。
窓のサッシを拭いた真っ黒な雑巾だって、この石鹸を溶かした石鹸水に漬けておけばしっかり汚れがおちる。
これには毎回感動すら覚えている。
そういえば、「十和子道」の取材でお世話になった君島十和子さんにも差し上げたことがある。
「白いものは白くキープするのが君島家のキレイのルールのひとつ」ときき、だったらぜひ一度使ってみてくださいと次の取材のときに差し上げたのだ(当時は別の有名な固形石鹸を十和子さんはご愛用だった)。
するとその晩
「本当によく汚れがおちます!」
と興奮した様子の長いメールが届いた。
家中の白くしたいものを探し、片っ端から洗ってみましたと書いてあった。
よいときけばすぐ実践するそのフットワークのよさに、「さすが十和子さん」と感心するばかりだった。
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どのお宅にも「我が家の定番」っていう物がひとつはあるものだ。
遊びに行ったときなどに
「自分は秋田出身なのでうどんは絶対ここの稲庭うどん」
「主人が九州の人なんでうちのお味噌汁はこの麦味噌ひとすじ」
「たまたまデパートの地方物産展で買ってみたらおいしくて、それ以来メーカーから定期的に取り寄せているの」
なんてきくと、新たな逸品との出会いにわくわくしてしまう。
そういえば飼っていた猫(昨年18歳半で亡くなりました)の介護が始まってからというものすっかり自宅に人様を招かなくなってしまった。
ではそろそろ何か企画してみようか……
と思っていたら、このたびの新型コロナウィルスの感染拡大が起き、当然ながらごはん会はしばらく見送ることにした。
今は一日も早くウィルスの脅威がおさまるのを心から願うばかりだ。