50歳を迎える半年くらい前、夏休みを利用して一気に〝お金の整理整頓〟をした。
老後の資金を考え始めたのだ。
まずやったのは自分の総貯蓄額を正確に把握すること。
このくらいというなんとなくの額は普段からわかっていたが、5つあるすべての口座の残高を通帳に記帳し、正確な額を出した。
次が加入している保険とクレジットカードの見直し。
保険の見直しは素人判断では不安だったので、料金はかかるがFP(ファイナンシャルプランナー)に相談することにした。
頼んだのはOurAgeで「女50歳からのキラキラ老後計画」を連載している安田まゆみさん。
プロにお金の相談をするのは今回が初めてである。
いざ相談するとなったとき、まず大変だったのが準備。
なにしろ毎年届く保険証書は届いたらそのまま封筒ごと棚に放り込んでいただけなので、それを引っ張り出して開封して約款やらチラシを捨て、証書だけを取り分ける作業だけで4~5時間かかった。
安田さんからは
「保険は最新の証書だけ手もとにあればいいんですよ。
それを相談にいらっしゃるときにもってきて」
と言われていたので古い証書は破棄。
とはいっても個人情報が書いてあるので、他人にみられたくない箇所はいちいちローラーケシポン↓で黒く塗り潰してからゴミ箱へ。
話は逸れるがこのローラーケシポン、本当に便利。
家庭用シュレッダーと違い、場所もとらない。
最近は文具店だけではなく郵便局でも売られているのを見かけた。
ついでにねんきん定期便も整理。
2回くらい中身を見たことがあるが、あとは開封もせず保険証書と同じところに放り込んでいた。
なのでいったんすべてを開封。
これも記載されている内容をみたところ最新版だけあればよさそうだが、〝消えた年金事件〟のことが頭にあるので、安心のため全部保管しておくことにした。
(ちなみに〝消えた年金事件〟以来、心配性な私は何かあったときに備え給料明細も保管することにしている↓)
こうして各種保険証書をそろえて安田さんの事務所に行った。
みてもらった結果、保険のひとつを解約することにした。
それは掛け金が年間約43000円で満期返戻金なしというもの。
死亡したときに支払われる額はそう多くはないが、入院したときの補償が比較的手厚いものだった。
が、他の保険と補償内容がかぶっていたし、この掛け金で返戻金がなしというのはあまり魅力的ではないので解約しようと判断した。
プロに相談して思ったことだが、プロの意見はあくまでも参考とするもの。
解約する・しないは自分が判断することであり、それについて後日後悔したとしても自己責任である。
で、さっそく保険の解約にとりかかってみたが、若干面倒だった。
なにしろ解約したい場合どこに連絡したらいいのか、誰でもすぐわかるように記載されていないのだ。
この保険会社がたまたまそうだったのかもしれないが。
クレジットカード(年会費1万円+税金)も入会してから14年の間、ただの一度も使ったことがないものがあり、これもこの機会に解約(退会)することにした。
今度こそは電話一本でスムーズにできるかと思ったら……
違った。
コールセンターに電話し、退会の意思を告げたところ
「お客様のカードはキャッシュカードとクレジットカードが一体になったもので、キャッシュカードのほうは指紋認証システムも採用されています。
そのため店頭にお越しいただき指紋データの消去作業を行う必要があります」
私の指紋を確認し、退会を希望しているのが本人であることが間違いない、とわかってから手続きができるということだった。
あたりまえだが電話で指紋の確認はできない……。
暗証番号や本人確認ができるものを言えば済むと思っていたので、がっくりした。
そしてカードを作成する際に指紋を登録したことすら覚えていなかったことに、我ながら衝撃をうけた。
仕方がないのでその銀行の最寄りの支店に行った。
指紋データを消す作業はけっこう時間がかかった。
たくさんの書類を書き、ハンコをあちこちに押し、小さな機械に指紋を読み込ませるのを何回かした。
こうして不要なものを減らし現在の資産状況を把握したら、今度は〝お金のエンディングノート〟の作成にとりかかる。
使用したのは安田さんが理事を務める一般社団法人「エンディングメッセージ普及協会」のメッセージノート(セットで税別1500円)。
『ライフデザイン編』と『シークレット編』の2冊に分かれていて、『ライフデザイン編』は認知症や意識不明などになったときに備え、自分の意思を伝えるもの。
・資産状況(加入してある保険の内容も)
・老後の財産管理について(自分で自分の財産管理ができなくなったとき誰に管理してほしいか、など)
・介護や治療の希望(延命治療を望むかどうか、など)
といったことを記入する。
『シークレット編』は
・遺産分割の希望(自宅は売却しその利益を○○さんと○○さんで分割して相続してほしい、など)
・金融資産など資産の詳細
といったように、家族を含め他の人にはまだ内緒にしておきたいことを記入する。
内容が内容なので(とくに『シークレット編』)記入したあとは取り扱いに気をつける必要がある。
安田さんによれば、家族には
「私にもしものことがあったら見てほしいノートを書いておいたので、リビングの棚をのぞいてね」
といった感じで
・自分の希望を書いたノートの存在があること
・それがどこらへんにあるのか
を伝えておくくらいにしておいたほうがいいそうだ。
このお金のエンディングノート、いざ書いていくと大変だった。
人がひとり亡くなるとこんなにたくさんの情報が事後処理にあたる人たちに必要となる、という事実にまず驚いた。
全く何も情報が残されていない場合の後を処理する人たちの手間を痛感する。
印鑑はどこ、通帳はどこ、そういえばどんな保険に入っていたのか、株はどこの証券会社のどの支店で担当は誰なのか……
イチから家捜しして探すしかないのだろう。
投資などの資産運用をせず、不動産は自宅だけという私でこれだけあれこれ書くことがあるのだから、手広くやっている人はなおさら大変だろうと思う。
他にも身にしみたことがある。
それはこうしてエンディングノートを記入するのは頭がしっかり働き、体力もあるうちがいいということ。
いろんな書類を探して揃えて、記入していくのは時間も手間もかかる。
(不要なものを解約するにしたって、あれほど面倒だったのだ)
作成後気が変わったり、保有している資産の内容が変わったら、そのつど該当する箇所だけ書きかえていけばいい。
安田さんからは
「ノートに記入する際はまずエンピツで書いたほうがいいですよ」
とアドバイスをもらっていたが、納得した。
また今すぐには書けない箇所もあった。
たとえばお墓のこと。
私には子どもがいないので合同墓に入りたく、それもできれば樹木葬がいいと思ってはいるが、具体的に○○霊園希望・予約済、とまではまだ書けない。
気になっている墓苑(公益財団法人 日本生態系協会が運営しているものでコンセプトは〝自然が増えるお墓〟だという)はあるのだが資料請求したり説明会に行ったこともないので、とりあえず「合同墓、樹木葬希望」とだけ記入した。
そもそもお墓探しの前に老後の住まいをどうするかを考えなきゃいけない。
自宅で暮らしたいのか、気に入る施設があれば入りたいのか、都心がいいのか、風光明媚なところで生活したいのか……
イメージ程度だとしても考えることはこんなにたくさんある。
安田さんの連載では、老後の計画を考える手順として
① 将来自分が送りたい理想の老後をイメージする
↓
② 老後資金をどれくらい蓄えられそうかプランを立てる
↓
③ ②で算出した金額で実現可能な生活と①の理想をすりあわせる
とあった。
そこで50歳が目前に迫り、①を考えながら②を実行しはじめたというわけだが、不要なもの(保険とクレジットカード)を解約したら、今度は新たに何か始めてみようと思い立った。
繰り返しになるが、家は買ったが投資も資産運用も一切してこなかった。
でも前々から気になっていた積み立てがあった。
それについては次回ご紹介する。