男一瞬、ダチ一生・・・・・・
救急車の待つ場所まで、ゴトゴトと車椅子で運ばれながら、そんな言葉が浮かぶ。
違う違う。ギャルの格言みたいなんじゃなくて・・・・・えっと、なんだっけ。
改札からホームへの階段の最後の1段を降りる時、体がふわっと浮いて、左足が地面にぐにゃりと着地した。なんかいや~な音とともに。
どこかのどなたかに連れて行ってもらった駅員事務室では「10分休ませてもらえれば、帰りますんで!」とハキハキと話していたのだが、15分くらいたった頃、足が脈を打ってきた。
ダメだ。歩けない。病院に行かねば。
駅員さんに話かける。
「あの~救急病院に行きたいんですが、タクシー呼んだら地上まで(地下鉄の駅だった)私を運んでもらえますか?」
「いや~救急車を呼んだ方がいいんじゃないですか。そうしましょう」
ひえ~。
世の中大変な時に、足が痛くて歩けないだけの私が救急車なんて~。
7分後、はじめて自分が運ばれるための救急車に乗った。
「意識はクリア、血圧正常、体温36度4分、呼吸正常・・・・・」搬送先の病院に報告している声が聞こえる。
大丈夫です。私、階段から落ちただけなんです。ごめんなさ~い。
病院の救急口を通り過ぎ、夜でシーンとした救急診療室に入ると、一画にブルーシートと透明ビニールで仕切られたエリアがチラと目に入る。時は自粛明けすぐ。戦いの場だっただろうと、心が痛む。
レントゲン後。
「一番大きな骨は無事だね。でも、じん帯にそって付いてる細かい骨が、ポキポキっとね、折れてるね。今日は固めといて、明日CT撮るから朝イチで、また来て」と先生。
足から足首にかけて固定され、ものすごい強さで包帯を巻かれる。松葉づえの使い方を指導され、痛み止めを処方され、タクシーで帰宅。
赤く膨らみはじめた足先を見ながら、考える。
毎日、ヨーグルトだってチーズだって食べてます。豆腐も好きだし納豆だって。小松菜だってチンゲン菜だって食べてます~。カルシウム摂取してるでしょ~。なんでなんで~。
なんで折れたかな~、とぐるぐる考える。
ん? 体重のせい? あるな。あと5キロ軽ければ、細かい骨がポキポキっとしなかったかも。でも、自重だよ。
自重で骨が折れるなら、今までだってチャンスはいっぱいあったはず。そんなチャンスいらないけど。
娘に、いよいよパンパンになった足を高くする台をベッドに作ってもらい横になり、まだ考える。
う~ん。
・・・・・・あ。
折れたんじゃなくて、折ったんだ、自分で。
その時、私は明日のことを考えていた。
階段を降りていることを、忘れてた。心ここにあらずの瞬間に、階段から落ちた。
そーだ。それだわ。
マインドレス骨折。
「今・ここ・私」が、どれだけ大切か。
注意一秒、ケガ一生・・・・・・
ダチは一生でいいけど、ケガとは早くおサラバしたい。
とほほ。痛い。
(つづく)