こんにちは。3月に予定されている宮沢和史さんのライブが無事に行われることを切に願っている、ライブ大好き編集者のすぎです。
さて先日、2018年にインタビューでお会いしたドキュメンタリー映像作家の信友直子さんから「コロナで上映会が全然できなくなってしまったので、父とのオンラインイベントをはじめました」というメールをいただきました。
映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』は、アルツハイマー型認知症になった87歳の母と、老老介護する95歳の父(ともに撮影時の年齢)の姿を、離れて暮らすひとり娘の直子さんが広島県呉市の実家に帰るたびに撮影した作品で、大変な評判を呼び、数々の映画賞を受賞。昨年11月にはDVDも発売されました。
連日のように全国を(時にはアメリカやイギリスなど海外の映画祭にまで!)上映会や講演会で回っていた直子さんですが、昨年の3月以降、新型コロナウイルスの影響でほぼすべての予定がなくなってしまったそうです。
実はOurAgeのインタビューが予定されていた当日、お母さまの文子さんが脳梗塞で倒れ、直子さんは急遽、実家に帰ることに。文子さんが病院に入院し、容態が安定してから再度インタビューの時間をいただいたという経緯もあり、その後の信友家のことは気になっていました。
あのとき「これから先も私は父と母を撮り続けるだろうし、信友家の物語はまだまだ続く」とおっしゃっていたとおり、文子さんが倒れ、映画が公開されてからも、直子さんはずっと2人を撮り続けていました。
「家に帰りたい」という一心で、リハビリをする文子さん。曲がった腰で、毎日面会に行き、文子さんを励まし続ける98歳の父・良則さん。いったんは回復するも、新たな脳梗塞で全身まひになってしまい、療養型の病院に転院することになる文子さん。いわゆる寝たきりの状態が1年以上続き、2020年6月14日、大好きだったアジサイの季節に文子さんは永眠します。
その経緯は、9月にフジテレビの『Mr.サンデー』で紹介され、11月末の『ザ・ノンフィクション』では、拡大・再編集した「おかえり お母さん ~その後の『ぼけますから、よろしくお願いします。』~」という作品として放映されました。
文子さんの闘病のようす、良則さんの深い愛情。60年連れ添った夫婦の別れのシーンは、もちろん悲しいのですが、そんな中にも幸せなニュースが!
2020年11月1日、良則さんが100歳の誕生日を迎えられたのです!! お祝いに出かけたお店で大好きなハンバーグを完食する姿には、見ているこちらも嬉しくなってしまいました。
耳こそ遠いものの、頭は本当にしっかりしていて、今も新聞3紙に目を通し(最近、4紙からひとつ減ったそう)、健康のために毎日自分で布団の上げ下ろしをしているという良則さん。
「~じゃろう」という、のんびりとした呉弁と、ユーモアあふれる前向きな発言、優しくチャーミングな笑顔で、映画の公開以来、たくさんのファンを抱えているようです。もちろん私も、そのひとり。
・・・という前提があっての、「父とのオンラインイベント」です。例によって本題に入るまでが長くてすみません。
もともとは映画の公式Facebookでつながっているファンの方たちに向けて行われたイベントなのですが、「コロナ禍がこの先いつまで続くかわからないので、生活のためイベントのアーカイブを販売し、広くお知らせすることにしました」とのこと。
詳細はそれぞれのURLをクリックすると出てくるのですが、約100分のトークイベントで、チケットは1200~1500円と、まさに映画感覚。1度購入したら3月いっぱいまで何度でも見られます。
2020年10月4日配信 「認知症が私たち家族にくれたギフト」(ゲストは父・良則さん)
https://peatix.com/event/1780619/
文子さんが倒れてからを振り返る直子さん。「お父さん、こうなこと言うとったねぇ」「たくさん世話しとったねぇ」と聞くと、「ほうかいのう。忘れてしもうたがのう」と言いながら、文子さんの魅力をたくさん話す良則さん。四十九日用に書いた自筆の原稿を良則さん自身が読み上げる姿は、その内容とともにグッときます。
2020年11月1日配信 「信友良則さん100歳おめでとう」オンライン生誕祭(with信友直子監督)
https://peatix.com/event/1780635/
宣言通り、元気に100歳を迎えた良則さん。イキイキと輝いています。
写真を見ながら振り返る100年の人生。戦争の話や、好きな勉強ができなかった無念さ、40歳という遅い結婚で生まれた直子さんへの思い・・などなど、私も泣いたり笑ったり、忙しかったです。そして語られる長生きの秘訣には、とても納得しました。
2021年1月4日配信 「ついに信友家から初配信! 母 文子の誕生日前日祭(with 信友監督&父 良則さん)」
https://peatix.com/event/1769231/
ようやくインターネット回線が開通した信友家を案内しながら、文子さんの人生と思い出を語ります。ピカピカに磨かれたキッチンや、今も良則さんが使っているという二槽式の洗濯機。昭和のままの黒電話。
ファンの方からプレゼントされたという家族3人のあみぐるみは、直子さんはカメラを手に持ち、良則さんは大好きな辞書を抱えているという芸の細かさで、本当にかわいい。
「母が認知症になったことで、父がこんなに妻思いでカッコイイことに気付けたし、仲良くなれた」という直子さん。
どんな境遇にあっても、人生を俯瞰で見つめ、「くよくよしてもしょうがない、何か良かったことを見つけていこう」とする姿勢には、大いに共感するのでした。