リモートワークが定着し、TV を見る時間が増えた人も多いはず。TV全体の視聴率が上がり、ネットフリックスは大人気…かくいう私も、ずいぶんTV視聴時間が増えました。
仕事の合間に一息入れて、BSや契約しているWOWOWをつけると、懐かしの名画が。つい見入って「やっぱり好きだなぁ。いい映画だなぁ」という再会も。そんな中、大好物の「映画×音楽×ライブ」を扱った2本を再発見。ぜひともお披露目させてください!
【右】『アマデウス』【左】『スクール・オブ・ロック』です!
音楽としては『アマデウス』はクラシック、『スクール・オブ・ロック』はロックがテーマですが、共通なのは映画の中でふんだんにライブやリハーサルが見られること。そして演奏者はどちらも、超一流!二重三重に楽しめる、極上のエンタテインメントです。
まずは『アマデウス』。1984年公開、同年のアカデミー賞を8部門も受賞しました。映画史に残る傑作ですから、ご存じの方も多いはず。80年代ポップスファンならご存じ、♪ロックミー・アマデウス…(ファルコ)の曲もこの映画にインスパイアされたそう。それほど多方面に大きな影響を与えた映画です。
舞台は18世紀、音楽の都ウィーン。天才モーツァルトと、彼の才能に嫉妬する音楽家サリエリの物語です。もともとは英国の劇作家ピーター・シェーファーの舞台劇でしたが、シェーファー自身が映画の脚本も手掛けています。映画の中で演奏される曲はすべてモーツァルト。指揮者はサー・ネヴィル・マリナー。
(↑音楽が素晴らしすぎて、サントラ【右】まで買ってしまいました…)
とにかく豪華絢爛の音楽劇!モーツァルトの音楽を知らなくてもノー・プロブレム(いや、知らない人はいないはず。TVCMで今でもたくさん使われています)!贅沢を極めたウィーンの宮廷や貴族の館、夜な夜な行われる仮面舞踏会、優美な衣装、大げさなカツラを身に着けて集う紳士淑女たち…よくぞここまで、という華麗さ!画面の美しさだけでも目を奪われます。
さらに素晴らしい音楽と素晴らしい演技が盛り上げます。サリエリ役のF・マーリー・エイブラハムは、アカデミー賞主演男優賞をこの役で獲得しましたが、むべなるかな。実は、彼はそもそもエキストラだったそう。台本の読み合わせで、たまたまサリエリ役を演じたところ、あまりの演技力の高さから監督にサリエリ役を任されたとか。某有名俳優もサリエリを演じたくて、オーディションまで受けたのに、その役を彼が見事に射止めたわけです。
この映画の素晴らしさを語り始めると、とめどなくなるので、この辺で最後にして。もう一つライブ好きとしては、映画の中で演じられるオペラの豪華さを、ぜひ見ていただきたいです。劇中劇だなんてもったいないほど、ゴージャスで息をのみます。最近はなかなか劇場にも足を運びにくいですが、この映画ではウィーンのオペラ劇場に入った気持ちになれますよ。
さて、もう1本。『スクール・オブ・ロック』です。
こちらの舞台は21世紀アメリカ。ロック愛は誰にも負けないけど、その愛が強すぎて周囲をドン引きさせるロックミュージシャン・デューイ。バンド仲間と大喧嘩し、啖呵を切ってやめたはいいけれど、お金も仲間もなく、人生崖っぷち。そんな彼がひょんなきっかけで、地元の名門私立小学校の臨時教師になりすまし…。
教師と生徒の交流の物語は、お馴染みの『金八先生』をはじめ山ほどありますが、この映画は立場が逆。なりすまし教師デューイは、生徒以上に早く授業が終わらないかなと待つばかりで、優秀な生徒たちに「授業をしてくれ」と抗議される始末。終業時間になると、誰よりも大喜びで外に駆け出します。先生が生徒を指導するのではなく、生徒が先生を変えていく物語なのです。
ダメ男デューイは、生徒たちのクラシック演奏を聞いて驚きます。彼らは素晴らしい音楽の才能の持ち主でした。そこでデューイは悪だくみを。それは生徒たちをだましてロックバンドを組み、ロックコンテストで優勝して賞金をもらうことでした…。
とにかくデューイを演じるジャック・ブラックが楽しい!ダメ男だけど、憎めない、そしてとても演技とは思えない“暑すぎるミュージシャン”です。「ロックは昔は反抗の音楽だった。それがダメにされたんだ、MTVに!」「ブラック・サバスもAC/DCも知らないのか?学校は何を教えてるんだ!」「教育的な音楽なんだ、エンヤみたいな」など、ロック好きには痛快なセリフが炸裂。
特に秀逸なのはデューイの「ロック史」の授業。黒板に書かれたアメリカの音楽史は、カントリーとブルースからスタート。カントリーはフォーク、ロカビリー、ポップロック、パンクロックへ、ブルースは、ドゥワップ、ファンク、ヒップホップへと発展し、さらに枝分かれを重ね…ここはリチャード・リンクレイター監督ならではの“ロック愛”がうかがえます。「ロックは真剣勝負なんだ。たったひとつのステージで世界を変えられるんだぞ」というセリフが出てきますが、これこそ監督が伝えたかったことではないでしょうか。
デューイと生徒たちのセッションシーンも素敵です。生徒たちが自己表現の方法を見つけ、表情が輝きだすところも見どころ。リハーサルを重ねながら、よりよいものを作りあげていくシーンにはリアリティがあります。映画の中でふんだんに使われている音楽は当然ロック。ドアーズ、ディープ・パープル、クリーム、ザ・フー、スティーヴィー・ニックスと、一度は聞いたことがある曲がかかります。エンドロールの最後の最後まで、ロック愛と笑いにあふれた、楽しく元気になれる映画です。
ジャンルは違えど、2本を観ていて感じるのは“音楽の力”。直接、感情に訴えかけるその力は、確かに世界を変える強さを持っていると思います。ライブや演劇、映画などは、“心のパン”。今、制約があって遠ざかっているからこそ、その力強さを切望しているのかもしれません。
コロナ禍が過ぎ去って、以前のようにライブや観劇などが普通にできるような日が来たときも、この気持ちを忘れずにいたいと思います。