それは、ある朝突然起きました。
いつものように目を覚まし、家事を終え、仕事にとりかかろうとしたときのことです。
急に体調がおかしくなったのです。
頭がフワフワッとして重い貧血が起きたようになり、そのままソファの上にゆっくりと崩れ落ちてしまったのです。
私に心疾患の持病があることは以前書きましたが、こんなことは初めてでした。
リビングには契約している警備会社直通の「非常ボタン」があるので、本来ならそれを押せばいいのですが、手にも足にも力が入らず、ボタンがあるところまでたどり着けません。
困ったことに、このときは携帯電話も固定電話も手が届かないところにありました。
痛みはなく、あるのは体がソファに吸い込まれていくような、どんどん沈み込んでいくような不気味な感覚。
「このまま眠ったら、死んでしまうかも」と雪山で遭難した人のようなことを考え、指先でソファのクッションを強く握ろうとしたところまでは覚えています。
その後は……
そのまま眠ってしまったのか?または気を失ったのか?
覚えていないのです。
気づいたときには、なんと3時間くらい経っていました。
ヨロヨロと起き上がって、しばしぼんやり。
手も足も動かせることを確認すると、今度は自分の身に起きたことを思い、とても怖くなりました。
すがるような気持ちでかかりつけの病院に電話し、事情を説明。
ようやく私の心臓を診てくれている循環器内科のY先生が電話口に出て、その声が耳に入った瞬間……どれだけホッとしたことか。そして〝医療につながる〟ということがどれだけありがたいことなのか、心から実感しました。
一連の出来事をきくと、先生はその場で心電図、超音波、血液検査などを手配。後日検査データを見ながら、診察を受けることになりました。
そしてデータが全て出揃い、迎えた診察の日。
「倒れる前、動悸や不整脈を自覚する時間帯はいつが多かった?」
「頭痛はあった?疲労度は?その日はいつもより疲れていた?」
「それはどんな感じの動悸?強さは?バチバチって突然来る感じ?」
検査結果を見ながら、いろいろ質問を投げてくる先生。
それに答えようとするのですが、体の不調、とくに心臓の不調って言葉にするのが難しい。
「心臓全体がその日は朝から重く感じたんです。いきなりバチバチっていうよりも……まずはず~んと……なんて言えばいいのか、そのあとドン・ドドンってくる感じでしょうか。バチバチではなくてド~ンです」
という、わかるようなわからないような答えになってしまうのです。
先生も困ったのだと思います。
そのときでした。
「ギリコさんみたいな人にこそ、Apple Watchを使って欲しいんだよなぁ。
Apple Watchってきいたことはあるでしょ?」
と言われたのです。
Apple Watch?
「ジョギングしてる人とか、オシャレな男子がよく着けてるやつですよね」
「…………まあ、そうね。そうなんだけど、そういう風に〝Apple Watchって若い人や、元気でスポーツを楽しんでいる人が使うもの〟と思ってる人、世間に多いんだよね。
でもね、Apple Watchって中高年とかあなたみたいな病気の人にこそ、使って欲しいのよ。
なぜかというとApple Watchで心電図がとれるんだから」
!!
Apple Watchで心電図がとれる。
驚きました。
「Apple Watchで心電図もとれるし、血中酸素濃度も測れるんです、今は。
心臓の病気じゃない人にだって、Apple Watchは使って欲しい。
とくに中高年。
今はまだ心房細動や不整脈が出ていない段階の人でも、これから年齢的に不整脈なんかが出てくる可能性が高いんだから。とくに心房細動や不整脈の感知に関して、Apple Watchはかなり優秀なんですよ。
Apple Watchには『不規則な心拍の通知プログラム』という機能があるんですけど、それは医療機器として承認をされたんです(※2020年9月、アップルウォッチの『不規則な心拍の通知プログラム』が国内で医療機器として承認された)」
「ギリコさんの場合だったら、心電図機能を活用してほしい。
〝あれ、なんか調子がおかしい〟と思ったら、その場で心電図をとってスマートフォンにデータを保存しておく。そして診察のとき、そのデータを僕に見せてくれれば、言葉で状況を説明するよりも話が早いんです」
………。
「そこまで便利なものだとは、知りませんでした。
買います、すぐに買います!」
と、その場で先生に誓った私。
すると、それを聞いた先生は
「でもApple Watchってけっこうな値段するんですけど……大丈夫?」
とこちらの懐事情をまず心配してくれました。
帰宅し、相棒にApple Watchで心電図や血中酸素濃度が測れることを興奮して教えると、やはり相棒もかなり驚いた様子。
ネットで「Apple Watch 心電図」などと検索し、一連の記事に目を通すと「本当だ!」と私と同じくらい興奮しはじめました。
なぜなら、相棒も年齢とともに体のあちこちにガタが出始め、今年の人間ドックではまさに不整脈を指摘されたところだったのです。
ふたりで銀座のアップルストアに行き、店員さんから数種類あるApple Watchそれぞれの説明を受けました。
その結果、私が購入したのがこれ↓。
Apple Watch Series6、GPSモデル、ナイキとのコラボだという限定バージョン。
文字盤のサイズは一番小さい40㎜、ケース(文字盤を囲んでいるフレームのこと)は軽いアルミニウムです。
そして気になる値段は……
保険料(保険の期間は2年)込みで、55880円。
確かに安くはありません。
メカとかデジタルといったハイテクなものは苦手な私ですが、ここまできたらもうやるっきゃない!
アプリの設定、スマートフォンとの同期を自力で完了したら(予想していたより簡単でした)、いよいよ使用開始です。
★次回は実際にApple Watchで心電図をとってみた様子や、そのデータを診察の際に主治医に見せたときのことなどをご紹介します! その続きはこちらからお読みいただけます!
(上の写真は相棒のApple Watch。これから相棒が心電図をとるところです)