子どもが大きくなったらすっかり縁遠くなっていた「絵本」や子どもの本。なぜか最近、子ども向けの絵本やティーン向けの本に関わることが増えて来て、急に新たに興味が湧いてきています。定番の名作だけでなく、新たな素敵な本がたくさん出ていて、知るほどに楽しくて、奥深いと感じるものだからです。
そんなことを考えていた先日、ワタシが児童書のことを知りたくて、FacebookでフォローしているJBBYさん(一般社団法人日本国際児童図書評議会)のポストにて、こんなお知らせを拝見しました。
〈J B B Y 「世界の子どもの本展」が3月8日(火)より、出版クラブビル・クラブライブラリーにて開催です!
*2020年国際アンデルセン賞受賞作家の作品をはじめ、60の国と地域から選ばれた世界の児童書約200点を展示。
「世界の子どもの本展」(観覧無料)〉
(JBBYさんFacebook 投稿より)
ワタシが気づくのが遅かったので、見つけたのは3月も半ばすぎ。おお、と思ったのですが、幸い出版クラブビルは、小社オフィスと同じ神保町にあります。さっそくお邪魔してみることにしました。
比較的新しいこちらのビル。外に本展示の案内がありました。
入り口はこちらのエスカレーターのようです。
なんだか別世界への入り口のようで、ドキドキ(笑)
上がってみたら、この光景! えー! と驚きです
通路を兼ねたスペースなので、決して広くはないのですが、
上に高く伸びる書架、らせん階段。なんだか思いがけず異空間に出会った感じです。
そして、展示スペースには、今回の展示に合わせて揃ったたくさんの子どもの本がありました! その数は、200冊近いそうです。
ここにある本は、世界的に信頼されている、「子どもの本を通して国際理解を深め、世界に平和を」という理念で活動されている団体、I B B Y(国際児童図書評議会)が選んだ2020年の「オナーリスト」(2年ごとに発表される、すぐれた本のリスト)に選ばれた本、約200点。それぞれが、いろんな国(全部で60か国)から来ているのが、添えられた国名などでわかります。
中には日本語の翻訳が出ている本もありますし、各国の言語のものもありますが、各作品に「あらすじカード」がついています。(下の写真に写っている、黄色いカードが大きめのしおりのようになっていて、そこに、日本語であらすじが書いてあるのです!)だから、知らない言葉の作品でも、絵を見たりして、なんとなく様子が想像がつきます。
日本からはこちらの本が。『よるのおと』は、とても素敵な絵本でした。子どもの本、と言っても小さい子どものものだけでなく、ヤングアダルト向けの本も選ばれています
世界の新作を手にとって見られる贅沢さ。同時に、世界の「今」を思うと切なさも
「展示している本は、自由に手にとってご覧いただけます」
とあるので、いろいろと抱えて中央のテーブルに陣取り、読んでみました。
自然や日常などを描いた本、ファンタジーやほとんど絵だけの本、社会問題に触れた本もあれば、絵や仕立てで面白く見られる本、などなど。見ているだけでも幸せな気分になります。
一方で、最近の情勢を考えると、広い世界だからこその難しさも感じてしまう瞬間も。
本の近くに国旗が添えられているのを見て心が揺れたりも…
今、世界が揺れている時に見ると、そこにいる小さい人たちは、どんな思いで
本を手にしているのだろう? 遠くに逃げるにあたって、どんな気持ちで本を選んだんだろう? などと、つい考えてしまいます。
この展示をされているJBBYさんは、一般社団法人日本国際児童図書評議会という団体です。
皆さんもきっと「国際アンデルセン賞」をご存知ですよね?
会場にしつらえられた、2020年「国際アンデルセン賞 作家賞」受賞のジャクリーン・ウッドソンさんのコーナー
国際アンデルセン賞といえば、古くはリンドグレーン、ケストナー、トーベ・ヤンソンから、日本だと安野光雅さんや、最近では角野栄子さん(『魔女の宅急便』の!)も受賞された賞。
その賞を創設、運営されているのが、IBBY /国際児童図書評議会。本拠地はスイスだそうです。その日本での支部として活動されているのがJBBYさんです。
「国際アンデルセン賞」については、ワタシも知っていたものの、この賞を決めている団体の由来までは詳しく知りませんでした。それが、今回この展示で紹介されている本から知ることに。第二次世界大戦の後にできた団体だったのですね。しかも創設したのは、女性。
会場のJBBYコーナーに展示されていた、その女性、イエラ・レップマンのことを描いた本は、とりわけ胸に沁みました。
翻訳をされているのは、現在JBBYの会長を務めていらっしゃる、さくまゆみこさんです
先の大戦ののち、戦火で荒んだ街の中で、各国から本を集めて展示を始めた女性の活動が、この団体の始まりだったのです。たった1人の活動が、子どものための本の大切さを共有する人たちの共感を呼んで、世界に広がった。その原点が、この本ではやさしい絵と言葉で描かれています。
作: キャシー スティンソン 絵: マリー ラフランス 訳: さくま ゆみこ
出版社: 小学館 1760円
今、世界が揺れている中で、何十年も前の試みや思いが、ひしひしと我がことのように感じられます。
だからこそ、そうならないように、いろんな世界のことを知って、そこにいるみなさんのことを考えたい。
そういう意味でも、今だからこそ見たい展示です。神保町での展示は、4月28日まで(予定)。
まもなくやってくる、4月2日は、アンデルセンの誕生日。そして、それにちなんでIBBYによって設けられた「国際子どもの本の日」。
JBBYさんでは3月はじめより、「子どもの本の日フェスティバル」をオンラインで開催されていました。
残念ながらさまざまなイベントは終わってしまいましたが、現在も見られるコーナー「翻訳家が訳書を紹介!」では、担当した本、『子どもを守る言葉「同意」って何?』の翻訳家、中井はるのさんも登場されて、本書について語る動画が公開されていますので、ぜひ、ご覧いただけたらうれしいです。こちらの配信は、4月2日までです。
「世界の子どもの本展」は、このあと、希望に応じて全国での巡回開催も予定されているそうです。みなさんの町でも、世界の絵本が見られるといいですね! お近くの方は、ぜひ、神保町にもお越しください!