2022年は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に夢中。沼にハマりすぎてつぶやきにも書いてしまいました。しかし今年は、まったくハマらず。
そのぶん、来年の『光る君へ』はかなり期待大な私です。まず、舞台は平安時代。2012年の『平清盛』も平安後期が舞台でしたが、あの埃っぽいディストピアな雰囲気が、とても新鮮に、そしてリアルに感じました。っていうか、1000年前ですから誰も見たことのない、ある意味描き方が自由な舞台。どんな映像が見られるか、ワクワクです。
そして今回は男性ではなく女性が主役の大河。主演は吉高由里子さん。脚本は大石静さん。なにより、ヒロインは紫式部!1000年以上前に“世界最古の女性文学”『源氏物語』を書き、いまだに読み継がれているという偉人。世界中見渡しても、ここまでの女性作家って、いないだろうと思います。
とはいえ、『源氏物語』を原文で読んだ、という方、なかなかいないのではないでしょうか?私も、古文の授業でかじったきり、あとは名作漫画『あさきゆめみし』でストーリーを追ったくらい。ましてや、紫式部の手記と言われる『紫式部日記』に関しては、うっすら内容をどこかで見た程度。
そんな、私と同じくらい古典オンチなみなさんに、超ーーーーオススメ!あの名イラストレーター小迎裕美子さんが描いてくれました!
【右】『新編 人生はあはれなり… 紫式部日記』
(小迎裕美子・紫式部 著 赤間恵都子 監修)
【左】『新編 本日もいとをかし!! 枕草子』
(小迎裕美子・清少納言 著 赤間恵都子 監修)
KADOKAWA 刊 各1,320円
こちら、ぜひ2冊購入して一気に読んでください!清少納言と紫式部、いろんな意味での宿命のライバル、性格も真逆だった…というのがイラストで一目でわかっちゃうのが、とにかく楽しい。ああー、高校時代にこの本に出合いたかった。もう少し古文の成績、良かったかも…。
まず、『紫式部日記』から。解説にあったのですが、実は個人的な“日記”というより、仕えていた中宮彰子のお産を大きく取り上げた記録のようです。ここに、のちに摂政となる藤原道長、彰子の宮中の様子などが描かれ、同時に自分の抱える孤独な思いや悩みも記されていくのですが、これが…暗いっ!!!
「つらい。苦しい。将来が不安。本当に嫌。あぁ無常。
…笑ってしまうほどのネガティブワードが。自意識がこんがらがって、こじらせている平安系絶望女子の姿がそこに!」
「はじめに」で小迎さんはそう書いていますが、言い得て妙。そんなシキブ(小迎さんは敬意と愛情をこめてこう表記、同じ理由で清少納言=ナゴンに)の姿をイラストで、楽しく、そして見事に描いてくれています。シキブの、ネガティブで堂々巡りしていて、でも決してそこから外れない、徹底していじいじしている姿は、ある意味あっぱれ!友だちにはなりたくないけど、そういう部分、自分にもあるなぁと思ってしまう。
対照的なのが清少納言こと、ナゴン。「春はあけぼの」が有名ですが、今、口ずさんでみても名調子でわかりやすくて、大きく共感できるところなど、『枕草子』も1000年読み継がれる名著ですよね。「にくきもの」「うつくしきもの」「あはれなるもの」をさまざまあげていますが、「わっかるーーー♪」と21世紀の私たちも激しくうなずいちゃう、表現の巧みさ。たとえば
「どんどん過ぎ去っていくもの。
帆をかけた船。人の齢。春、夏、秋、冬」
「近くて遠いもの。
情愛のないきょうだい。親戚の間柄。12月の大晦日と正月の1日」
うまいっ!と膝を叩いてしまいそう。こちらも小迎さんのイラストが絶妙で、私は何か所も声を上げて笑ってしまいました。
2冊とも、巻末に原文も掲載されていますが、ナゴンの『枕草子』はやっぱり読みやすく、名調子。ズバッと表現できるナゴンの明晰さ、屈託のなさ、ときには、かなりの意地悪さも感じられます。対してシキブの文章は、な、長い…。情景などを緻密に、丁寧に表現しているよう。内容はまったく理解できないものの、二人の個性が文体にも現れていることを感じます。
“宿命のライバル”と書きました。そこには当時の政治情勢や女性たちの立場など、様々な要因が絡んでいます。この辺も『光る君へ』ではかなり描写されると予想されます。そういった当時の事情についても解説されているし、そしてカバー裏には人物相関図も!これがまた、わかりやすくて、この時代の面倒な人間関係、姻戚関係が頭に入ってきます。あぁ、この相関図も高校時代にあったら、日本史の成績も上がったかも…。
とにかく、小迎さんの楽しいイラストのおかげで、1000年前のヒロインたちが一気に身近に感じられます。明るくお調子者で、かなりイケズなところもあるナゴンと、とにかく暗いこじらせ系、忖度ばかりしてそんな自分に疲れてしまうシキブ。あなたの中にもきっと、二人がいるはず。