「私は、自分の居場所を作り出す女の話が欲しかった。不当な扱いへの忍耐や、他者への献身や、コミュニティのための自己犠牲を讃える物語ではなく。(中略)私たちと同じように、ままならぬ毎日を騙し騙し生きる女が闘いの庭に植えた一粒の種に絶えず水をやり、芽吹いたら日の当たるところへ苗を移し、少しずつ少しずつ花を咲かせるまでの日々。私が知りたいのは、そういう話だった」
これは、最近読んで感銘を受けた本のあとがきの一節です。ジェーン・スーさんが「週刊文春WOMAN」で女性たちをインタビューしてきた連載を1冊にまとめた本。こちらには、ジェーン・スーさんが長年、取材したくてたまらなかったという、我らが一条先生のインタビューも掲載されています。
【右】『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』
(ジェーン・スー著 文藝春秋刊 1,650円)
【左】『不倫、それは峠の茶屋に似ている たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集』(一条ゆかり著 集英社刊 1,760円)
連載『一条ゆかりの今週を乗り切る一言』でも、毎回名言を連発し、大人気を誇っている一条先生。昨年、連載が単行本化され、さまざまな取材を受けてきましたが、ジェーン・スーさんのインタビューはあっという間に単行本化されました。一条先生のインタビューはトリを飾っています。さらにオビにはこんな名言が。
私はずっと、私のためだけに存在する私の椅子が欲しかったー一条ゆかり
この言葉は、インタビュー中にぽろっと先生が発した一言。すかさず、この一言を「ぜひオビに使わせてください」と選んだジェーン・スーさん。お二人ともさすが“言葉のプロ”だと感じました。
一条先生がどんなことを語ったかは、スーさんの著書を楽しみに読んでいただくとして、担当編集としては驚かされました。同じ先生の体験談を語っているのに、インタビュアーが入るとこんなに違って読めるのか。いつも一条先生との打合せは笑いが絶えません。言葉の選び方もさながら、大変な経験でも先生が語ると、なぜか楽しく聞こえて、つい笑ってしまうのです。
でも同じ話でも、聞き手によっては、こんなに印象が変わるのかと。ジェーン・スーさんの目というフィルターを通して見えてくる一条先生の姿は、凛としてブレない、酸いも甘いも知りつくした大人の女性。より一条先生の深みを教えてもらった気がします。
そういえば最近、一条先生の新聞取材の記事にこんな一文がありました。「酒場で、酔った少年誌の編集者にヘラヘラ笑われながら、頭から酒をかけられた。悔しかった」。その話は、先生から直接聞いたことはありましたし、その際も本当にひどい話だと思いましたが、記事で客観的に読むと、信じられないひどい話だと感じます。いくら昭和の、男性優位の頃だからといって…。でもその屈辱をそのままにせず、糧にしてヒットを連発した一条先生。同じ女性として尊敬の念に堪えません。
ちなみに、ジェーン・スーさんの単行本では、君島十和子さんのインタビューも収録されています。他に、齋藤薫さん、大草直子さん、吉田羊さん、北斗晶さん…魅力的でユニークな女性たちの、努力、闘い、夢、憧れがいきいきと描かれていて楽しめます。前書きにジェーン・スーさんはこう書いています。
「私が敬意を表す女たちに話を聞いて回ったら、最初から特別で、すべてがお膳立てされていた人など誰もいなかった。出だしから幸運の女神に微笑まれた人も、突然、王子様に見いだされたシンデレラもいなかった。みんな、自分の足でしっかり大地を踏みしめていた」
あなただって自分の足でしっかり大地を踏みしめているはず。あなたと同じように努力を重ねてきた女性たちの言葉は、必ずあなたを元気にしてくれると思います。