『ブギウギ』、見てますかーー?私は愛助(水上恒司さん)の、キラッキラの瞳にハートを射抜かれてしまいました。く、苦しい…。スズ子(趣里さん)と愛助のラブラブ生活にもフラグが立ち、今週はひたひたと迫る悲劇の予感。ますます目が離せません。
ヒロイン、スズ子のモデルとなったのは、ご存じ笠置シヅ子さん。最初、彼女の名前を聞いたとき「あれー、この人知ってるー」と、思ったOurAge世代は多いはず。私にとって彼女のイメージは、『家族そろって歌合戦』(TBS)での、審査員を務めていた姿です。ニコニコしながら家族の歌声に耳を傾けていた、気のよさそうな大阪のおばちゃん…。あとは『東京ブギウギ』の明るい歌声でしょうか。
どんな人なのか、どんな人生を送ったのか、まったく知らぬままドラマを見はじめ、「こんなにスゴい人だったのかー」と驚かされました。
松竹楽劇部(現・OSK日本歌劇団)に入ったのは12歳のとき。22歳で活躍の場を東京に移し、ヒット曲『ラッパと娘』をレコーディングしたときは、弱冠25歳!娘を出産した3カ月後、33歳で『東京ブギウギ』をレコーディング、これが日本中で大ヒット。その後、多くのヒット曲を輩出しましたが、歌手を廃業したのが43歳のときでした。太く短い歌手活動を駆け抜けていったわけですね。
劇中で趣里さんがのびやかに歌い踊る曲の数々を聞くにつけ、「モダンだなぁ」「スイングしてるわぁ」と思っていましたが…、いやいや、これって趣里さんが上手なんじゃないの?今風にアレンジしてるから、耳に心地いいんじゃないの?と疑念が。そんなある日、見つけましたよ、この2枚のアルバム!
【左】『福来スズ子傑作集』【右】『ブギウギ ヒットパレード 笠置シヅ子名曲撰』
朝ドラ人気の影響か、復刻版が多く出されているようです。昭和と令和、新旧のブギウギ対決!これはぜひ聞き比べねばっ!
まず先攻は令和から。趣里ちゃんの魅力が存分に発揮されているのは、劇中でも多く演奏され、愛助のハートも鷲掴みにした『ラッパと娘』でしょう。伸びやかな歌声、舞台狭しと踊る躍動感、スイングの魅力が存分に味わえます。
では昭和バージョンはどうか。これがまた驚きました。趣里ちゃんの澄んだキラキラした歌声に対し、笠置さんは逆に、ややハスキーでパンチのある歌声。えー、大人っぽい!なんでもこの曲を作曲した服部良一さんは、高音を出さず地声で歌うように指導し、笠置さんは練習中に喉をこわしてしまったとか(そんなシーンもドラマにありましたよね)。
その声と、音程を外れそうで外れない歌い方で、なんともセクシーで挑発的なんです。この曲を初めて聞いた人たち、さぞや驚いただろうなぁ。今って、日本語の曲でも英語のフレーズが入っている曲が多いじゃないですか、でもこの曲は♪バドジズデジドダ~しか謎の言葉がなくて、あとは全部日本語。なのにこんなにスイングジャズしてる!服部良一さんのすさまじい才能を感じます。
他に、『センチメンタル・ダイナ』『アイレ可愛や』『東京ブギウギ』も聞き比べることができました。どちらもそれぞれの個性が実に魅力的ですが、やはり笠置さんのジャズシンガーとしてのうまさには本当に舌を巻きます。バックのアレンジも本格的でハイレベル!今のように録音技術が高くない時代の音ですが、逆にレトロで、耳に優しく感じられもします。
↑名曲撰なのでヒット曲だらけですが、それにしても「ブギ」という曲名、多すぎ!『東京ブギウギ』『大阪ブギウギ』『名古屋ブギウギ』『ヘイヘイブギー』『ジャングル・ブギー』『ホームラン・ブギ』、いくらヒットしたからって…そして『買い物ブギー』、これ名曲決定!ラップの先駆けみたいな曲で、笑っちゃいます、元気出ます!
↑趣里ちゃんの澄んだ声が実に魅力的。このアルバムには幻の名曲『大空の弟』が収録されています。ドラマで趣里ちゃんが歌うたびに、朝からおいおい泣いていました(私だけじゃないはず!)。音源が残っていないため、笠置さんがどんな風にこの曲を歌ったか、今ではわかりようもありません。
↑笠置シヅ子さんのことが知りたかったら、こちら『笠置シヅ子の人生』(メディアソフト刊・1,210円)がおすすめ。わかりやすく、また楽しい写真がたくさん!ドラマで再現されているエピソードも多く、「え、あの話、本当だったの?」とビックリすることも。
子どもの頃、『家族そろって歌合戦』を見るたびに「変わったヘアスタイルのおばちゃんだなぁ」くらいしか思ってなかった自分に説教したい、「人は見かけじゃないよっ!」って。こんなに豊かな才能を持ち、大恋愛をして、シングルマザーとして子どもを育て…なおかつ、笠置さんはいつもユーモアを忘れなかったそうです。たくましく、しなやかで、伸びやかなその生き方は、残された彼女の写真の笑顔からうかがい知ることができます。