JR西川口駅から歩いて12分ほど。埼玉県戸田市の住宅街に小さな店がオープンしました。
「Sweets.Stand.パラソル」
文字通り、赤いパラソルが目印です。
この店の経営者兼パティシエが…
左の女性、私の従妹、Y子ちゃん。隣は彼女の姉、K子ちゃん、店の手伝いをしています。二人ともOurAge世代の女性です。
「Sweets.Stand.パラソル」がオープンしたのは7月29日。まだ1カ月も経っていない新しい店です。実は私、親戚なのに、Y子ちゃんが自分の店を開く計画を進めていたなんてまったく知りませんでした。さっそく店をのぞきに行くと…
テイクアウトの店ですが、パフェやゼリーが食べられるカウンター席もあります。
フルーツケーキをはじめ、旬のフルーツを使ったスイーツがこの店のウリ。シャインマスカットのショートケーキ(¥800)、シャインマスカットのパフェ(¥1,150)は定番で販売中です。
この季節は冷たいスイーツがなんといってもおいしい!左からマンゴープリン(¥520)、コーヒーゼリー(¥500)、もものシュワシュワjelly(¥550)。両親と3人でシェアしました。
焼き菓子もオススメ!特に地元、戸田ボートレースにちなんだ「ボートフィナンシェ」は激推し!アーモンドなどのナッツがのったフィナンシェで、ありそうでなかった甘さ控えめほろ苦スイーツ。ワインにも合いそう♪
変わったところではボトルに入った杏仁豆腐「ミルクミルク杏仁」(900ml・¥1,800) 。地元埼玉の牧場から届いた、濃くておいしい西武酪農牛乳を使用。5日ほど日持ちするので分けて食べられる、家族でシェアできる、と杏仁豆腐好きの注目を集めているようです。
Y子ちゃんはフルーツを扱う老舗店で、ずっとパティシエとして働いていました。その会社を辞めたあともいろいろとフルーツ系のパティシエをしていたことは知っておりましたが…よもや自分の店を開くとは。なぜこのチャレンジをするにいたったか、聞きました。
「幼稚園の頃からお菓子を作るのが好きで、母がマーマレード作ったりアップルパイ作ったりするのをメモ書きしたり、作るのを手伝ったりしてました。小学校に入った頃、友だちとドーナッツを作ったのが最初かな? 家で作ったおやつを学校に持っていくようになって。
その頃はまだ、パティシエになるって決めてなかったけど。たぶん小学校高学年だと思うけど、イトコ3人からお菓子の本をもらったんですね。それがこれなんです」
え、イトコって…ええーーー、私たち(私には弟と妹がいます)⁉ ええーー全然覚えてない!そんなことしたの?
「そうだよ。3人からこの本もらったの。これが最初の、そして今でも教科書」
かれこれ40年近く前の本。たくさん付箋が貼ってあって、使いこまれてボロボロ。一生懸命ケーキを作ってたのが伝わってくる…うぅ、オバちゃん、泣きそう(従妹だけど)。
「その頃はまだ、こんな立派なものは作れなかったけど、どのページにどのお菓子が載っているかわかるくらい、いっぱい見て作って。これが今でも原点です」
パティシエになりたい、と心に決めたのは高校生のとき。同時に「いつか自分のオーブンを持ちたい(業界では、自分のオーブンを持つ=自分の店を持つということだそうです)」という夢も芽生えました。ところが製菓の専門学校に進学したい、という希望に両親は猛反対。別の進路を選び、その後就職するも「毎日のようにお菓子を作ってました。自分で課題を作って、できないのは何回も繰り返し作って勉強していたの」。そして初志貫徹、勤めていた会社を辞め、21歳で地元のお菓子会社に就職。その後数社を経て、老舗フルーツ店ではアルバイトから社員となり、35歳で副工場長に、その後は課長を任されるまでになりました。
「でも私としてはここでの仕事は終わりかなって。下の人たちも育ってて、私がいなくても大丈夫だし、お菓子を作るうえでの高みを目指すっていうのがそこにはなかった」
その頃からボンヤリと考えていた「自分の店を持ちたい」という夢をかなえるため、30代半ばから起業セミナーに通って経営の勉強をスタート。物件を押さえて見積もりを出し、事業計画書を作って、商工会議所に相談することを始めたそう。とはいえ、計算の甘い事業計画書にはすぐNGを出されます。
「毎回、事業計画書を書くたびに『やはり店を持つなんて、よっぽど環境がそろっている人でないと無理なんだな』と諦めていました。それでも気づけば物件情報を眺めていて…」
そんなこんなで、最初に相談してから10年が経過。これだ!と思う物件に出会ったのは今年の3月のことでした。
「今の店は、3月末に物件が決まって改装をスタート。ところが最初にやってくれるって言ってた内装会社が、住居メインの会社で『やっぱりウチではできません』って言われちゃったのね。また一から内装会社を探してやってもらうことになって、4月の半ばに見つかって。5月初めには内装は終わる予定、そしたら5月後半くらいにはオープンできるかも、と思ってたんだけど…」
いよいよ厨房機器を搬入しようとしたら、なんと希望したオーブンが入らない!その問題に対処して迎えた搬入当日、今度はそのオーブンが不良品だと判明。そうこうするうちに、厨房機器の鍵を握るプランナーと連絡が取れなくなる。
ようやく見つけたオーブンを搬入したら、今度は電気の引き込みがされているとの話が、実はできていない状態と判明。東電に動力申請をし、引き込み工事が必要、3 週間待たされる。そして工事終了予定を教えてもらえない状態で 2カ月…とにかく想定外なトラブルが山のように発生。暗闇を手探りしているような状態が続いたのです。
その合間にも材料を探し試作を重ね、器のサンプルを取り寄せて選定し、実際作って見比べて…一方で税務署に行ったり、経理の整理をしたり、食品表示の手配をしたり。5月末オープンの当初の予定は延期を重ね、7月29日となりました。聞けば聞くほど自分の店を開くって、想像以上に大変なんだ、とつくづく感じます。
「開店にこぎつけるまで何度も、『ダメかもしれない』『無理』と諦めかけました。でも内装で大変だったとき、近所の人が『何をやっているのかしら?』って見てるから『こういう店を出します』って説明したら、オープンした日にその人が『よかったわね』って来てくれて。
今はやっとスタートラインに立てたという気持ちです。店は人通りの少ない道にあるから、まだ全然知ってもらえてなくて。直近の目標は、もっとこの店を知ってもらうこと」
店の名前を「パラソル」にした理由は?
「私、趣味がマラソンなんだけど、レースに出ると、給水所にパラソルが立ってるんですよ。そんな、気軽に元気や楽しさを補給できる場所をみんなに提供できたらなって。みんなが集まってこられる店にしたいなって思ってます」
Y子ちゃんは47歳。真夏の大冒険はまだまだ続きます。