別府の青い空、青い海。いろんな意味で魚三昧。
こちらは、海とつながっているかのようなインフィニティ・プール!……ではなくて、別府湾に面した水族館の水槽です。

今回の旅は、博多で所用を済ませたあと、連休を利用して別府に足を延ばしました。
別府を初めて訪問したのはほんの4年前なのですが、素晴らしい温泉の数々、レトロだけど寂れていないゆったりとした街並み、親切な街の皆さん、おいしい魚介類……。あっという間にとりこになりリピーターに。行くたび駅前の写真を撮っていたら、同じ写真がこんなにたまってしまいました。

こちらは通称「ピカピカのおじさん」。別府を世界有数の温泉観光地に育て上げた実業家、油屋熊八さんの銅像です。
さて、温泉が名物の別府ではありますが、三連休の最終日に、人気の地獄めぐりや砂風呂はさぞ混んでいるだろうと思い、友人に勧められた「大分マリーンパレス水族館『うみたまご』」へ行くことに。

別府駅からバスで10分、「高崎山」へ。お猿で有名な高崎山です。海と山が接近していて両方楽しめるのも別府のいいところ。猿のいる山のすぐ向かい側に『うみたまご』はあります。

館内に入ると、トドの玄太郎くんが飼育員さんと一緒に迎えてくれます。なんと、展示室を飛び出し、通路を歩くお客さんを追いかけてパフォーマンスを見せてくれました。

水槽には、なじみのある魚から、見たことのない魚、大人気の熱帯魚など、色とりどりの魚が泳いでいます。中央の大回遊水槽には約1,500尾の魚類が暮らしているそう。

酷暑の三連休でしたが、空調が効いてひんやりと薄暗い館内で、悠々と泳ぐ魚たちを眺めるのは快適で最高にリラックスできました。

そして屋外へ出ると、抜けるような空とあくまでも青い海。イルカプールで、ショーを終えたイルカがのんびりと一人遊びをしていました。その向こうに見えるのが、最初にご紹介した海に泳ぎ出ていけそうな水槽です。

それは「別府湾プール」という名のタッチプール。危険のない魚たちが泳いでいて、手を入れて触ってみることができます。別府湾を一望できるこの立地で、海の生き物と戯れる経験……! 私もエイに触ってみました。口は下側にあるので、上から触っても噛まれないはずなのですがちょっと怖かったです。

海、山、空と一体になった、水族館だけでは生み出せない景観が素晴らしい『うみたまご』でした!
これだけ愛でておきながら・・・。
この日はもうひとつ行きたいところがあり、JR別府駅に戻って特急ソニックにちりん号で中津駅に向かいました。前日、博多から別府に移動する車中から見かけたものが忘れられず……。

中津駅のホームにあった「日本一長い鱧(ハモ)の椅子」。左の普通の椅子と長さを比べてみてください。
初めて降り立つ駅でしたが、福沢諭吉の故郷で、黒田官兵衛の城下町だと知りました。実は、鱧の名産地であることも知らなかったのですが、この椅子を見て即座に「鱧食べに行こう!」と決めたので、宣伝効果がすごすぎます。

鱧の湯引き、鱧入り茶わん蒸し、鱧しゅうまい。大変おいしゅうございました。

実はこれ以外にも、旅の初日から魚三昧。「魚かわいい」などと言いながらすみません……。九州って本当に魚がおいしいですね。
大分・別府が大好きな理由
来るたびに大満足の九州。中でも大分・別府には少し思い入れがあります。
私が初めて大分県に行ったのは、2021年、前の職場の仕事で「大分国際車いすマラソン」の取材をするためでした。ほとんどのクラスの世界記録がこの大会で出ている有力大会で、海外の選手たちに愛され、毎年の“Oita”での再会を楽しみにしている選手が少なくありません。官民一体となって続けて来たとても雰囲気のいい大会で、私も毎年の取材が楽しみでした。
今年で44回という長い歴史を持つこの大会が大分市で開催されるのは、「日本のパラリンピックの父」といわれる医師、中村 裕博士の革命的ともいえる尽力があったからです。

(2023年 第42回大会 大分市の大分県庁前からのスタートの様子)
中村博士は別府市出身の整形外科医で、1960年代にイギリス留学し、スポーツを取り入れたリハビリテーションに感銘を受けて帰国。リハビリへのスポーツの導入、障害者スポーツ大会の実現、さらには就労支援のために奔走しました。その根底にあるのは「障害のある人が『保護すべき対象』ではなく、社会参加する存在となれるよう支援する」という理念で、「No Charity, but a Chance!(チャリティではなくチャンスを)」と表現。共感したオムロンの立石一真氏、本田技研の本田宗一郎氏、ソニーの井深 大氏などと共同出資会社を次々と設立し、障害者雇用促進に大きく寄与しました。中村博士は、別府が働きやすく、住みやすい街になるよう、市内のタクシー会社を1軒1軒回って、車いすの乗客の乗せる際の工夫などを説明したといいます。

(2021年 第40回大会のゴール地点の様子)
今も、全国平均を上回る障害者雇用率を誇る別府市。地元の方は観光客にも優しくて、タクシーの運転手さんに親切にしていただくたびに、中村博士の逸話を思い出しました。
何か、ゆるっと受け入れてもらえるような気持ちになる別府。のんびりと心からリフレッシュできた九州旅でした。先日の大雨で被災された地域もあったとのことですが、一日も早く、平穏な日常が戻りますようお祈りしております。


