旬の野菜を意識して摂れば、すでに薬膳。
暑すぎますよね、今年の夏。体は正直で買い物にいっても、いつも同じような食材に手がのびて、あぁ体が欲しているんだなぁと思います。そんな“体が欲している”旬の食材やその適した食べ方を教えてくれるのが「薬膳」。そう気づき、ここ最近は酷暑と更年期のWパンチを乗り切るために、日々のごはんに意識して取り入れています。
きっかけはこの春にNHKで放映されていたTVドラマ『しあわせは食べて寝て待て』。一生付き合わなければならない病気にかかった桜井ユキさん演じる主人公が、引っ越し先の団地で出会った大屋さん(加賀まりこさん)と訳あり料理番さん(宮沢氷魚さん)から、身近な食材で体調を整える薬膳を教わりながら、自分らしい「しあわせ」に気づいていく話でした。
出てくるお料理がどれもすばらしくおいしそう(フードコーディネーターは飯島奈美さん)で、薬膳いいなぁと思っていたところに、以前からお世話になっている料理家の石川智佳子さん(公式インスタはこちら)が門前仲町にスタジオを作り料理教室をしている、しかもテーマが「ちょこっと薬膳」……。これは参加するしかない!と。

ポイントを押さえた料理教室で薬膳がぐっと身近に
石川さんが新しく作ったスタジオKITCHEN KOISHIで行っている料理教室。いつもは旬の食材を使った家庭で気軽に取り入れられるフレンチやイタリアンが人気ですが、今回はリクエストが多かった薬膳を、いろいろな資料で研究して初心者でも取り入れやすいメニューを考えてくださいました。勉強家の石川さんの付箋だらけの資料も見せていただきながら、少人数で和気あいあいと手を動かしているうちに、あっという間にバラエティ豊かな全8品の出来上がり!

習ったのは手前から「鶏肉と冬瓜、じゃがいものスープ」「夏野菜と生姜のピクルス」「ハトムギのお粥」「太刀魚の山椒煮」「山芋と、えび、きくらげの卵炒め」。あとからいただいた「白キクラゲの薬膳デザート」「なつめの柔らか煮」「クコの実の梅酒漬け」、そしてお土産にくださった「赤じそのジュース」。メニュー名を見ているだけでいかにも健康になれそうなラインナップですよね。
その後、料理教室中にポチった石川さんおすすめの薬膳テキスト『新版 毎日使える薬膳&漢方の食材事典』(ナツメ社)も届き、薬膳熱は高まるばかり。早速、両親たちを呼んだ息子の誕生日会では「夏野菜と生姜のピクルス」と「山芋と、えび、きくらげの卵炒め」を作り大好評。「鶏肉と冬瓜、じゃがいものスープ」は、月2回ペースで作る大のお気に入りになりました。

特別に石川智佳子さんの「鶏肉と冬瓜、じゃがいものスープ」のレシピを公開!
冬の瓜と書くのに旬が夏の冬瓜。私は体質的に熱がこもりやすい「陽熱」タイプなこともあり、体にたまった熱を冷ます効果が高く、余分な水分を代謝してむくみによる体の重さやだるさを改善してくれるこのレシピに、とくに惹かれるのかもしれません。大好きでよく作っている「参鶏湯」的な鶏のコクをいかしたシンプルな味わいも好みです。
あまりに気に入って何度も作っていて、今回ブログでご紹介したいと石川さんにお伝えしたところ、ぜひレシピも読者さんにご紹介ください、というお申し出が(泣) ありがたくここに特別公開いたします。

●鶏肉と冬瓜、じゃがいものスープ
(石川さんより)コロナのステイホーム中に料理家がおすすめする「料理リレー」というプロジェクトがあって、「鶏胸肉のスープ」というシンプルなおかずを紹介しました。自分でもよく作るスープだったので、特に気負わずにSNSに出したのですが、これがスマッシュヒット!我ながらびっくりするくらいの反響をいただいて、「ああ、皆さんこういうのを求めているんだな」と、図らずも勉強になったことがあります。前置きが長くなりましたが、これはその時のスープに薬膳の考え方を取り入れて、より体を温めつつ(鶏肉、じゃがいも、しょうが、陳皮)、肌に潤いを与え(鶏手羽肉)、体の余分な水分を出して(冬瓜、冬瓜の皮)、消化を促進する(しょうが)ように、アップグレードしました。
【材料】(4人分)
鶏胸肉・・・1枚
(塩小さじ1、砂糖小さじ1/2 )
鶏手羽肉・・・5本
じゃがいも・・・2個
冬瓜・・・300g
白ネギ 1/2本
しょうが、にんにく・・・各1片
酒・・・大さじ1
塩・・・適量
(あれば)陳皮、冬瓜の皮、パクチー・・・各適量
【作り方】
1. 鶏胸肉の皮を外し、肉1枚につき、塩小さじ1と砂糖小さじ1/2ずつをよくすり込む。ポリ袋に入れ、冷蔵庫で1-2日ねかす。
2.鍋に水1.2ℓ、塩(小さじ1)、酒(大さじ1)、白ネギの青い部分、スライスしたしょうが、半割りにして軽くつぶしたにんにく、手羽先、皮をむいて大きめの一口大に切ったじゃがいもと冬瓜、お茶パックに入れた陳皮と冬瓜の皮を加え、中火にかけて沸騰させる。沸騰したら弱火にしてアクを取りながら15分煮込む。
3. 洗った1の鶏胸肉を加え、火を止めてフタをし、余熱で15分火を通す。
4. 鶏胸肉と青ネギを取り出して粗熱をとり、鶏肉を細かくほぐす。
5. 野菜がまだ硬いようならさらに煮る。
6. 火を止め、千切りの白ネギ、ほぐした鶏肉、ざく切りにしたパクチーを加える。ナンプラー(小さじ1)、塩、粗びき黒こしょうで味を整える。
・・・・・・・

レシピにもありますが、これぞ薬膳だなぁと感動したのは、冬瓜の皮をいかすこと。実は冬瓜の皮には強い利尿作用があり、生薬としても使われているのだそう。皮に近いところほど薬効があるので、このように皮を煮だして使ったり、皮をむくときもできるだけ薄く、緑色が残るぐらいにしておくのがいいんだとか。勉強になりますね。
更年期対策に常備したい薬膳代表食材「なつめ」と「クコの実」
さて、四捨五入すると還暦という年齢になりまして(執筆している本日、誕生日です笑)夏バテ対策も必須ですが、それと同じくらい更年期対策も深刻です。薬膳には、お年頃の女性に優しい食材もいろいろ。なかでも近年スーパーフード“ゴジベリー”としても注目されている「クコの実」は滋養強壮にいいのはもちろん、その抗酸化作用の高さからアンチエイジング食材の代表格です。

1日20g目標で摂るとよいそうなのですが、ドライフルーツでポリポリ食べるのは、口の渇きが気になる夏にちょっとしんどい。石川さんに習った「梅酒漬け」にしました。
ノンアルがよければ梅シロップでも、それがなければ酢水でもかまわないそうで、これならデザートやおやつとして20gをあっという間に食べられます。私は毎年梅しごとをはりきりすぎて梅酒の置き場に困っていることもあり、梅酒をどんどん消費しています。これはいい!
そしてもうひとつ、心身の疲労回復と冷えによいと教わったのが「なつめ」。なつめは参鶏湯を作るときに使うので常備していたのですが、ただ水煮して冷蔵庫に入れておけばこんなに食べやすくおいしいのだと目からうろこ。中国では「1日3個のなつめで老いしらず」と呼ばれていて生食でも食べられていて中国女性にとっては美の秘訣なんだとか。
調子にのり、薬膳の本に書いてあった、クコの実となつめを入れた白ワインも仕込みました。楽しみながら体質改善。薬膳最高ですね~!
記事が続きます夏の常備菜「夏野菜の出汁浸し」も薬膳でバージョンアップ!
そんな感じですっかり「ちょこっと薬膳」ブームの夏ですが、日々のごはんのためにいつも以上に常備しているのが、夏野菜を焼いて出汁に漬けるだけの「出汁浸し」です。
好みの味を付けた出汁(面倒なときは白だしを使います)にその時ある野菜を焼いたりゆでたりして、どんどん漬けていくだけ。冷蔵庫で冷やしておいて朝昼晩、野菜が足りないときの副菜にいつでも食べられるようにしています。
これまでも、父の家庭菜園で取れるなすやトマト、ズッキーニを消費しなくては!とせっせと作っていましたが薬膳に目覚めた今、意識して入れているのが滋養強壮、アンチエイジングに良い山いも(長いも)やオクラなどねばねば系。
出汁の味付けはそのときによって梅干しや柑橘(写真はすだち)、酢、ごま油、みりんなどバリエーションはいろいろ。その時の気分で変えているので同じような夏野菜が続いても飽きません。
くだものでも薬膳!山脇りこさんの「スイカとトマト、ミントのサラダ」をヘビロテ中。
最後に、先月から私が担当させていただている山脇りこさんの連載「鍋・保存袋・ボウル1つで簡単!ONEレシピ」」の最新回が薬膳的にも大傑作だったのでご紹介。

見た目だけでも元気が出てくる真っ赤なサラダ。トマトもスイカも体の熱を冷ましてくれる夏の養生に必須の食材。そのうえ抗酸化作用のあるリコピンもたっぷりで、これはもう作らない理由がない。
レシピはこちらです。
映えもばっちり、ミント味もおしゃれでおもてなしにも大活躍。夫婦二人暮らしでなかなかスイカには手が出ないわ~といっていたのが嘘のよう。半個ならためらいなく買うようになりました。

ご存知の方も多いと思いますが、そのほかにもOur Ageには「薬膳」で検索すると参考になる記事がたくさん。漢方薬剤師の樫出恒代さんの連載「女性のための漢方救急箱」には、自分の暑がり/寒がり体質チェックとそれに合わせた食事選びのコツがわかる記事「薬膳で元氣になる!タイプ別でみる食材の選び方は?」もありました(私はもちろん暑がりタイプ)。ぜひ、この記事をはじめ「薬膳」関連の記事に、一度目を通して興味を持っていただけたらと思います。
まだまだ続く夏を「ちょこっと薬膳」で乗り切りましょう!


