「青春は飴のようにのびる!!」を実現し続ける、奇跡の70歳
漫画家として第一線で活躍し続けてきた一条ゆかりさん。現在は、杉並区の一軒家に引っ越して悠々自適な生活を送っているとか。そのライフスタイルは、家庭菜園を楽しんだり、韓国語を勉強したり、またハイテク機器を使いこなしたり、手間をかけて料理を作るなど、70歳とは思えない活動ぶりで、脳トレにも役立っているそう。最終回の今回は、ジムに通い、いつまでも体を動かせるようにするだけでなく、自分のことは自分でするという自立意欲について聞きました。
(19年12月取材)
Yukari Ichijo
一条ゆかりさん
1949年、岡山県生まれ。高校1年生のとき、「雨の子ノンちゃん」で単行本デビュー。’67年、第1回りぼん新人漫画賞に「雪のセレナーデ」が準入選し、「りぼん」にデビュー。以降、コメディからシリアスな恋愛ものまで、次々と大ヒットを生み出し、長きにわたり少女マンガ界に君臨。’86年、『有閑倶楽部』で第10回講談社漫画賞少女部門受賞。2007年、『プライド』で第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
OurAge連載のコラム、「今週を乗り切る一言」も、大好評。
自分でできることも人にやってもらう
ような人間には、なりたくないの
70歳になってジムにも通いはじめました。「ワールドウィング」という施設で、おもに関節の可動域を広げることを目的にトレーニングしています(緊急事態宣言期間は休止、現在は再開)。
週に2回通う「ワールドウィング新宿」(問☎03-6279-0541)は、医療分野やスポーツ界からも注目のジム。専用のマシンで、瞬発力やパワーの向上、関節の可動域を広げることを目的にトレーニングします。
「いくつになっても自分の足で歩くのが目標なので、下半身の筋肉を鍛えなければと。もともと股関節がすごく硬いので、それをなんとか緩めて、将来は180度…まではいかなくても150度くらいまでは開けるようになりたいですね。足首も硬いので、ケガをしないように柔らかくしたい。NHKの『趣味の園芸』を見ていると、杉浦太陽くんがぺたっとかかとをつけたまましゃがんで庭仕事をしていて、うらやましいなと。私も早くそうできるようになりたいです」
肩甲骨とその周辺の筋肉を動かすトレーニング。「きつそうに見えるけれど、あんまり痛くないところも気に入ってます」
ジム通いをサボらないようにするため、ここでもケチケチ性格を活用!
「うちからジムのある新宿まで、生まれて初めて定期を買いました。『今日は雨だから行きたくないな』と思っても、定期がもったいないから行かなくちゃってなるじゃない? 定期のおかげでジム通いが続いています(笑)」
努力のかいあって徐々に健康を取り戻していますが、気がかりなことも。数年前から患っている緑内障です。緑内障は視神経の障害で視野が狭くなり、放っておくと失明にもつながる病気です。
「タバコやお酒をやめたのも、緑内障に悪いからという理由が大きいですね。今は薬で進行を抑えているけれど、右目はかなり悪いし、左目も手術が必要で、いつか全盲になる可能性もあります」でも、ことさら病を悲観する様子はありません。
「闘っても無駄なものは、闘わずに受け入れるようにしています。心配したからって病気がよくなるわけじゃないし、悩んでいる時間があったら、万が一のための準備をしておきたいんですよね。それでこの前、ちょっと点字をやってみたら、すごく難しいの。私なんて麻雀の盲牌もできないから点字は無理かも(笑)」
病気ともユーモアをもって向き合うその姿に、大きな勇気をもらいました。
そんな一条さんが現在、目指しているのが「人に頼らない生活」です。
「この前、庭の木を自分で切っていたら、友人に『植木屋さんにやってもらえばいいじゃない』と言われたんですが、私、そういうのイヤなんです。忙しければ人に頼むけれど、今はたっぷり時間があるのだから、自分でできることは自分でやりたい。自分でできることも人にやってもらうような人間には、なりたくないの」
この強い自立意欲こそが、一条さんの日々のモチベーションになっています。年齢を理由に何でも人任せにしているうちに、体も頭も衰えて、本当に何もできなくなってしまう―そのことをよくわかっているからでしょう。
「王様のように何でも人にやってもらうのはラクかもしれないけれど、私はできるだけ人に頼らないで生きたい。王様と召し使いを両方自分一人でやるから、めちゃくちゃ大変だけど」
そう言って笑いつつ、現在の暮らしを楽しんでいる一条さん。今いちばんハマっているのは、なんと楽天のポイントをためることだそう!
「なんでも研究する癖があるので、真面目にポイントをためたら1年でどのくらいになるんだろうというのを実験していて。徹底的に楽天を使うようにしていたら、恐ろしいほどたまるのよね。すぐに5000円分くらいたまっちゃう。しかもお買い物マラソンという魅惑的な企画があって、エントリーするとポイントが何倍にもなりますよと。今はまだ手を出してないけれど、ケチな私だから、いつか必ずやると思う(笑)」
この尽きることのない研究心と貪欲な探求心が、一条さんをいつまでも錆びつかせないヒミツなのでした。
みんながハマった一条ゆかり作品④
プライド
オペラ歌手を志す麻見史緒と緑川萌。お嬢様と貧乏育ちという対照的な二人のプライドをかけた闘いを鮮烈に描いた大ヒット作
撮影/山田英博 取材・原文/佐藤裕美