コロナ禍の中で、OurAge世代のライフスタイルはどう変わった? これまでとは違う日常の中で見つけた「私にとっての真実」を、寺島しのぶさんに聞きました。今回は、前編です。
体調不良で知ったのはあきらめること・抗うこと
多くの人がライフスタイルの急変を余儀なくされた2020年。「うつらない・うつさない」という緊張感のある日々を過ごしながらも、女優・寺島しのぶさんは「自分にとっては大事な気づきの一年でした」と言います。
このタイミングでなければ、伝えられなかった現在の思い、貴重な体験とは――?
いちばん大切に扱うべき“自分”というものに、ようやく目を向けられた一年でした。というのも2020年年始に、足の指を骨折したのに続いて、原因不明の頭痛にも悩まされるようになったんです。
MRI検査を受けたり、人間ドックで再検査になったりと、坂を転げ落ちるようにいろんな不調が続き、「これは何かのサインだな」と思いましたね。おかげさまでどれも大きな病気ではなかったのですが、もともと丈夫なのをいいことに、心も体もずいぶん酷使してきたことに気づかされました。
役者としての私は、若い頃からずっと「自分追い込み型」。そうすることで、役に没頭しているという実感も得られる。撮影期間中はそこにギューッと入り込んで考えていても、負担を感じることはまったくありませんでした。
でも今、48歳。若い頃とは違い、ちょっとしたことで体が痛くなるし、できないことも増える。「そりゃそうだよねぇ〜!」と、ようやく思えるようになりました(苦笑)。
自分がいちばん、自分を大切にしていなかったと気づきました(寺島しのぶさん)
コロナ禍以前は、「いや、昔の私はこんなんじゃなかった!」とあがいていたけれど、ある種、今の自分を受け入れてあきらめることもカッコいいな、と。潔くあきらめることは、別に悪いことではないのだということが、自分を見直しながら、少しずつわかっていきました。
ただ、50歳まではもう少し抗(あらが)ってみたい。ある人生の先輩から、「50を越えると、今はまだできていることがさらにできなくなる。でもそこで自分を受容できたら、閉経も相まって自由になれる。心も体も第二の人生が始まると、ますます“女”であろうとするんだよ」と教えられ、ここから先が楽しみになりました。
そこまで気持ちを転換することができたのは、瞑想やヨガによる気づきが大きかったですね。マッサージや整体は疲れきった体には有効ですが、「人にやってもらいっぱなし」では、ますます自分のことがわからなくなる。
足の指を骨折したときは、ヨガの先生に「指に意識がいってない」と指摘され、ハッとしました。
まず足の指で地面をつかむように立ち、膝裏をぴしっと伸ばす。お尻はギューッと締めて、腟からおへそまでファスナーを上げる意識で丹田に力を入れる。肩はすとんと落とす。この姿勢を朝1分くらいキープするよう、毎日心がけています。自粛生活で忘れがちな、「足の指で大地を踏みしめる感覚」を思い出すには、とてもおすすめですよ。
寺島しのぶさん Shinobu Terajima
1972年生まれ。舞台・映画を中心に女優として活躍。10年『キャタピラー』ではベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。映画公開待機作に『アーヤと魔女』『Arc』『キネマの神様』がある。07年にフランス人のクリエイティブディレクター、ローラン・グナシアさんと結婚。12年長男の眞秀くんを出産
※インタビューは、後半に続きます
撮影/玉置順子(t.cube) ヘア&メイク/平元敬一(ノーブル) スタイリスト/中井綾子(crepe) 取材・原文/井尾淳子