風吹ジュンさんインタビューの最終回となる今回は、毎日を楽しむことがアンチエイジングに通じることと、50代から始めた趣味や挑戦に迫ります。
心の筋肉、体の筋肉を鍛えて、毎日を楽しむ
50代、風吹さんがすっかりハマったのが、中国茶。中国茶専門店の店主の女性と知り合い、中国へ買いつけの旅に同行、産地まで足を延ばしたとか。
「サプリメントのおかげで無理がきくようになったので、ガンガン高地を歩き回りました。それだけじゃなく、飛行機に乗り遅れたりホテルの予約が取れていなかったり、めちゃくちゃ無茶な旅で(笑)。
でもそういうときもパニックにならないで、自力で解決していくの。エネルギーを使うことだけど、それってアンチエイジングに通じることだと思うんです。危機感とか緊張感とかフル回転で、そこを楽しむ。どうにかして乗り越えられるから、楽しいわけです」
予定調和ではなく、蓄えてきた体力と精神力を試すような、ハードな旅。
「心も脳も鍛えられるというか(笑)。知らない場所に出かけて、刺激を受けて、多少の飢餓感も味わって。そういう旅の喜びって、あるんです」
さらに、登山に挑戦したのは60代になってから。同窓会で再会した友人に誘われ、試しに登ってみたところ――。
「面白かったんです、それが。小さい頃は私、坂道なんて大嫌いで、世の中の坂道全部、埋めて平らにすればいいのに、なんて思っていたんだけど(笑)。でも父親も昔、登山が好きだったと知って、あまり縁のなかった父のことを理解したいと思ったのがきっかけかな。
で、実際に登ってみたら、体がうれしかった。2日続けて登ると、3日目はもっと登れそうな気がしてくるの。体ってやっぱり、使うようにできているんだなって感じました」
それからは徐々にファスティングして体型を絞り、足腰を鍛え、いくつかの山に挑戦して、とうとう一昨年、あの剱岳(つるぎだけ)まで制覇したのです。
心も体も刺激して、自分のシワに誇りを持つの
さらに3年前にはジャイロトニックを始め、自分の体と向き合う毎日。
「体のバランスがよくなります。可動域が広がるし、動くときに、自分が自分の体を調節できるようになるの」
食べるものにも、風吹さんは研究心旺盛です。具だくさんの味噌汁とか五穀米とか、次から次へと研究&実践中。そして今、凝っているのが、豆。
「鞍掛(くらかけ)豆とか前川金時とか、いろんな豆を試しています。乾物の豆を手に入れて、まず8時間水に浸す。というのが面倒なときは熱湯につけて早くもどしたりするんだけど(笑)。
30分くらいコトコト煮るだけで、味つけしなくても素材のまんまで本当においしいんです。ポトフに入れたり、じゃがいもみたいに何にでも合うのが豆なのね。タンパク質豊富だし」
身も心も鍛えて、楽しんで、慈しんで。本当に毎日、楽しそう。
「年齢を重ねるのが怖い、という人がいるとしたら、その人は、こうなりたくないな、と思う実例を見てしまったのでしょうね。だったらあなた自身が、こうありたい、と人に思わせるような存在になればいい。
毎日自分を鏡で見て、それを受け入れて、清潔にしてきれいにして。それでも、何をしてもちゃんと年はとるから(笑)。自分のシワに誇りを持って生きていれば、いいんじゃないかしら」
『Arc アーク』
ケン・リュウの「円弧(アーク)」(『もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2』所収)を原作に、石川慶監督が映画化。出演は芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫ほか。近未来を舞台に、不老不死の施術を受けて生き続ける女性リナ。彼女が最後に下す決断は…。6月25日より公開中
風吹ジュンさん Jun Fubuki
1952年生まれ。’75年、テレビドラマ「寺内貫太郞一家2」で女優デビュー。映画『無能の人』(’91年)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞、『コキーユ〜貝殻』(’99年)で報知映画賞主演女優賞を受賞。幅広い演技力で映画、ドラマに活躍中。近年の出演作に映画『マチネの終わりに』『浅田家!』、テレビドラマ「やすらぎの刻~道」。2020年、毎日映画コンクール田中絹代賞を受賞
【特集】前回までの風吹ジュンさんインタビュー
撮影/萩庭桂太 ヘア&メイク/石邑麻由 スタイリスト/岡本純子(Afelia) 取材・原文/岡本麻佑