お二人の出会いから、新刊エッセイの苦労話をした前回に引き続き、一条ゆかりさん×桜沢エリカさんのスペシャル対談後編になります。
デジタルなのに手描き感があって、一条ゆかりイズムが流れているのが衝撃
桜沢 『有閑倶楽部』のメンバー、久しぶりに描いてどうでしたか?
一条 そもそも6人のその後を、たった6ページで描くというのがむちゃくちゃ大変で、しかも読者が納得してくれる結末にするにはどうしたらいいのか、すごく悩んだのよ~。
それと最初は50代くらいを描くつもりだったんだけど、見た目が変わりすぎるとわかりづらいから、あまり老けさせないで30代くらいの感じにしたのよね。父ちゃん(悠理の父)だけは、だいぶ禿げちらかしてるけど(笑)。
桜沢 ちなみにこれは手描きですか?
一条 パソコンです。
桜沢 ほんと? デジタルなのに手描き感があって、一条ゆかりイズムが流れていることに衝撃を受けました。
一条 私ね、いかにも「パソコンでやりましたー」って描き方がとても嫌いで、手描きっぽくないと嫌なの。
桜沢 わかる~。でも、大概の先生は、デジタルになると変わるのに、どうしてこんなふうに描けるのか。さすがです!
より安いものを探して、夫は店をはしごしてます
一条 エリカちゃんの新刊コミックエッセイ『家事しない主婦と三世代の食卓』も読んだけど、子どもたちがもう大きくなっていてびっくり。
桜沢 そうですね。長男が社会人で、長女が大学生です。
一条 青ちゃん(桜沢さんの夫・青木さん)は、最近は仕事を始めたそうだけど、相変わらず主夫を頑張ってて偉いわ。
桜沢 料理とか日常の家事は全部丸投げしているので、本当に助かっています。夫は買い物とか徹底してるんですよ。以前、専業主夫だったときは、店を1日に5軒ぐらい回ってました。「こっちのほうが安い」とか言って。
一条 嫌だわ、私に似てるわ(笑)。1週間に1日レンタルしたい男よね。
桜沢 何日でもどうぞ。
一条 いや、2日以上いたらウザい。
桜沢 あはは! そうですね。だけど先生こそ、悠々自適で、本当に羨ましい。
一条 何もしないでいると退屈だし、脳も衰えるから家庭菜園をやったりしてるけど、結局、人間って仙人のように一人では生きていけないのよ。共同体の中で生きていく生き物だから、「誰かが必要としてくれる」というのが一番の生きるモチベーションになると思うの。だからなんでもいいから、人の役に立つ人間になるっていうのが、今の私の目標です。
桜沢 素敵ですね。私の目下の課題はね、髪色をどうするかです(笑)。頭皮が弱いから、自分でヘナで染めているんですけど、真っ赤になっちゃって。60代もこのまま、赤い髪でいくのか…。先生の髪は自然な感じでいいですね。
一条 これね、YouTubeでインドの秘薬を見つけてやってみたら、髪がどんどん増えてきたの。すごいっすよ。
桜沢 えっ、秘薬⁉
一条 ターメリック、クローブ、しょうがとかをつぶして、魔女のように煮出したものを髪に塗ったら、髪の毛が立ち上がってきたのよね。成分がほぼカレーの材料ばっかりだから、安心は安心よ(笑)。
桜沢 カレーを頭に塗ればいいってことですかね(笑)。
一条 いやいや、ちゃんとレシピを送るから作ってみてよ。あと、カラーリング剤もいいのを知っているから教えます。
桜沢 うれしいっ、さすが一条先生! 一生ついて行きます‼
一条ゆかりさん
Yukari Ichijo
1949年生まれ。漫画家。’68年『りぼん』で雑誌デビュー。’86年に学園コメディ『有閑倶楽部』で第10回講談社漫画賞を受賞。ほか、『デザイナー』『砂の城』『正しい恋愛のススメ』などヒット作多数
『不倫、それは峠の茶屋に似ている たるんだ心に一喝‼ 一条ゆかりの金言集』
Webマガジン「OurAge」で大好評連載中の「一条ゆかりの今週を乗り切る一言」が一冊の本に。心に刺さる名言のほか、『有閑倶楽部』のその後を描いた描き下ろしショート漫画も収録。(一条ゆかり 著/集英社 1,760円)
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桜沢エリカさん
Erika Sakurazawa
1963年生まれ。漫画家。’82年デビュー。『メイキン・ハッピィ』『エデン』『こまどりの詩』などストーリー漫画を描く一方、『シッポがともだち』『今日もお天気』などエッセイ漫画も人気
『家事しない主婦と三世代の食卓』
夫に家事を任せ、漫画家に専念して20年超の著者が描く桜沢家の献立満載コミックエッセイ。バーバのメニューも加えた30レシピを紹介。(桜沢エリカ 著/集英社 1,540円)
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撮影/山田英博 取材・原文/佐藤裕美