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北欧関連のおすすめ本『マリメッコの救世主 キルスティ・パーッカネンの物語』

新谷麻佐子

新谷麻佐子

あらたに・あさこ●イラストレーター&編集者。2014年にムーミンの作者トーベ・ヤンソンが暮らした島「クルーヴハル」に、友人でライターの内山さつきと1週間滞在したのをきっかけに、kukkameri(クッカメリ=フィンランド語で「花の海」の意) を結成。以後、フィンランドの小さな町や四季、暮らしと文化をテーマに取材を続けている。著書に『とっておきのフィンランド』『フィンランドでかなえる100の夢』(ともにダイヤモンド社)がある。http://kukkameri.com

フィンランドの歴史や文化も味わえる本

 

3月に入り、日差しが強くなってきて、太陽のエネルギーを感じるようになりましたね。春が待ち遠しいです! 寒さが厳しかった1〜2月は、本で好きなものの世界(主に北欧関係)に浸っておりました。今回は、その中から北欧好きの方におすすめの一冊を紹介したいと思います。

 

昨年11月に発売されたばかりの新刊『マリメッコの救世主 キルスティ・パーッカネンの物語』(ウッラーマイヤ・パーヴィライネン/著 セルボ貴子/訳 祥伝社)です。

 

読書タイムに入る前に、北欧気分を高めるべく、フィンランド式パンケーキ(オーブンで焼くもちもちパンケーキ!)を用意しましたよ。と言っても1回で読み切れるページ数ではないので、何回かに分けて読んだうちの1日ですが。

 

マリメッコの救世主 キルスティ・パーッカネンの物語

 

 

こちらの本は、タイトルにある通り、1990年代、不況に苦しむマリメッコを窮地から救った女性、キルスティ・パーッカネン(1929-)の幼少期から現在に至るまでを、フィンランド人ジャーナリストが丁寧に取材をして綴ったバイオグラフィー。

 

フィンランドは、今でこそ「世界幸福度ランキング」が4年連続で1位となり、30代の女性が首相を務め、子育て世代に優しい国として知られていますが、キルスティが40歳になる直前に、女性だけの広告代理店を立ち上げた頃は、女性一人ではレストランにも入れないような世の中でした。

 

美しいものに目がなく、人前に出るときは、お気に入りのハイブランドのブラックコーデでバッチリきめるキルスティは、オーラ全開。そんな彼女を前にすると、誰もが緊張したといいます。

 

美的センスにあふれるキルスティは、さぞかし恵まれた家庭環境だったのかと思いきや、フィンランド中央部、サーリヤルヴィの貧しい農家の出身。そこからどのようにして、時代を象徴する広告代理店の経営者へとのぼりつめたのか。さらには、経営難に陥っていたマリメッコを復活へと導いたのでしょう。

 

貧しくて中学にも通えなかったキルスティは、16歳で一人ヘルシンキへ。上京後は、夜間学校に通いながら、レストランの厨房、バラの売り子などパートタイムの仕事をする日々。そこから結婚を経て、ストックマン・デパート、広告代理店へとキャリアアップしていきます。そして1969年、女性だけの広告代理店「ウォメナ」を立ち上げました。

 

彼女の成功の裏には、自らの境遇に負けず、夢の実現へと突き進む強い意志と、どうすれば一番いい仕事ができるのか、鋭い分析と考察、そしてセンスを磨くための努力の積み重ねがあったのです。

 

ウォメナ社時代に、彼女が手がけたプロダクトデザインの中でも、青いボトルのシャンプー「とってもしなやか」は、私の思い出のアイテム。フィンランド北部、ラップランド地方でサウナ巡りをした際、出会ったのが、まさにこちらのシャンプーでした。

フィンランドのヘアケア製品

 

ラベルにある赤い三角屋根の家は、ヘルシンキから少し郊外へと足を延ばすと、どこでも見かけるおなじみの木造建築です。シャンプー自体は、今でもスーパーで売っていますが、雑然とした場所ではなく、私が訪れたおしゃれサウナのように、素敵な空間に並べると存在感が増すアイテムなんだなというのを実感。(過去の記事でもこのシャンプーを紹介しています。まだ読まれていない方は、サウナの旅と合わせてぜひどうぞ!)

 

その後、キルスティも歳を重ね、大好きな会社から退かなければならない時がきます。リタイア後はフランスのニースへ移住し、優雅に暮らしていました。その彼女がなぜ60歳を過ぎて、フィンランドへと舞い戻り、マリメッコのトップとなったのか。彼女がいかにしてマリメッコを再生させていったのか。興味深く書かれています。

 

その一方、プライベートでは、夫を愛するがゆえに自ら別離を選び、また仕事でも、絶対的なカリスマでありながら、癇癪を起こすこともあって必ずしもみんなに好かれていたわけではなかったことなど、彼女の不器用なところ、人間味あふれるキャラクターにも魅力を感じます。

 

また、フィンランド好きとしては、話の本筋とは別のところ、さらりと書かれた描写にもわくわく。例えば、キルスティの幼少期のエピソードでは、三角形の紙に包まれたキャラメルのことが書かれているのですが、それを見つけた瞬間、「これって私がフィンランドで見かけたものと同じものかしら?」と想像するのが楽しいです。

 

実際に、私が見つけた三角形の紙に包まれたキャラメルはこちら。

フィンランドのキャラメル

 

外国人の私が見てもなんだかノスタルジック。素朴なお菓子好きな私は、目が釘付けでした。

 

他に、キルスティが来客にもてなしたという焼き菓子「ババ」は、日本のどのガイドブックにも必ず載っている、有名な老舗のベーカリー「エクベリ」のものなど。

 

こちらの写真2点は、ババは写っていないですが、数年前にエクベリを訪れた時のもの。エクベリには喫茶室とベーカリーがあって、お昼時は地元の人でにぎわっています。

ベーカラー「エクベリエ」

エクベリエ ベーカリーこんな感じで、この本の面白いところを挙げだしたら枚挙にいとまがなく、おかげで本は付箋だらけですが(笑)、同じ女性として刺激を受けたい方やキルスティと同じように部下をたくさん抱える方、そしてもちろんマリメッコやフィンランドが好きな方、ぜひ手にとってみてください。

 

次回も、北欧関連のおすすめ本を紹介したいと思います。お楽しみに!

 

 

 

 

新谷麻佐子さんの北欧旅連載

『今人気の田園ツーリズム。フィンランド、ラトビア、エストニアに行ってきました!』

 

 

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