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「介護保険サービスのイロハ」と「情報ゲット」テクを知っておこう!

介護や福祉のプロを対象にした研修講師、コンサルタントとして活躍する高室しげゆきさんに、「理想の介護」についてお聞きしています。今回は具体的な「介護保険サービスの利用法」と「賢い情報の取り方」について教えてもらいました。

「介護保険サービスを利用するには、どうしたらいいの?」「ケアマネジャー(以下、ケアマネ)はどの段階でつくの?」「どんなサービスが受けられるの?」など、介護の初心者はわからないことがいっぱい。まずは介護保険サービスを利用するための流れや、自宅で受けられるサポートについて、高室さんにレクチャーしていただきました。

 

要支援・要介護の認定を受けることが第一歩

 

「親の介護を経験した方たちはご存じと思いますが、以下のような流れで手続きを行います。まずは要介護認定の申請をして、どの程度の生活介助が必要か、チェックを受けます。その際、聞き取り調査をするのは、市区町村または地域包括支援センターの職員です。ケアマネがつくのは、『要介護』と認定されたあとです」

 

その後、ケアマネ(介護支援専門員)が作成した『ケアプラン』(居宅介護サービス計画書)に沿って、「デイサービス」や「訪問介護」などのサービス提供を行う各事業所と契約を結び、いよいよ介護保険サービスの利用がスタートします。

 

※自立生活ができると判定された「非該当」の人は市区町村が実施する介護予防教室などを利用。また、「要支援」の段階ではケアマネはつきませんが、地域包括支援センターが『介護予防ケアプラン』を作成します。

 

■介護保険サービス利用までの流れ

市区町村の窓口、または地域包括支援センターに相談
 ↓
要介護認定の申請書を記入
 ↓
市区町村の窓口、または地域包括支援センターに提出
 ↓
訪問調査員から聞き取り調査を受ける
(市区町村・地域包括支援センターのスタッフが担当)
 ↓
コンピュータによる一次判定  主治医の意見書提出
 ↓         ↓
介護認定審査会による二次判定
 ↓
申請から約1か月後、8段階のいずれかの要介護状態区分の認定を受ける
   ↓        ↓       ↓
・非該当(自立) / 要支援1・2 / 要介護1~5の人がケアマネを依頼できる

要支援と要介護はどう違う?ケアマネがつくまでの段取りは?

 

「要介護度」は下記の一覧のように7段階に分類され、これを「要介護状態区分」といいます。「要支援」とは日常生活の一部に支援が必要で、将来的に「要介護」となる可能性が高い状態。「要介護」とは食事、排泄、入浴などの日常生活の一部または全部について、常時介護が必要と判断される状態をいいます。

 

「自宅で介護を受けるのを希望する人は、地域包括支援センターを通じて、居宅介護支援事業所(ケアマネを配置する事業所)をいくつか紹介してもらい、担当のケアマネを決めることができます。また、特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保健施設)などの施設に入所する場合は、各施設のケアマネが担当することになります」

 

いったん判定された「要支援」「要介護」の認定期間は最長で36カ月。ただし、有効期間内に心身の衰えが進んだ場合は、要介護度の区分変更を申請できるしくみです。一般的には、「要支援1・2」「要介護1」からスタートとするケースが多いでしょう。

 

■要介護度の目安

要支援1
食事や排せつなどの介助は必要ないが、家事や買い物など、生活の一部に支援が必要。(支給限度額 50,320円/月)

 

要支援2
生活の一部に支援が必要だが、介護予防サービスを予防すれば、維持・改善が見込まれる。(支給限度額 105,310円/月)

 

要介護1
立ち上がる、歩くなどの動作に不安定さがある。排泄や入浴などの一部に介助が必要。(支給限度額 167,650円/月)

 

要介護2
立ち上がる、歩くなどの動作が自力では難しい。排泄や入浴などの一部または多くに介助が必要。(支給限度額 197,050円/月)

 

要介護3
立ち上がる、歩くなどの動作ができない。排泄や入浴、衣服の着脱などで多くの介助が必要。(支給限度額 270,480円/月)

 

要介護4
介護なしで日常生活を送ることができない。排泄や入浴、衣服の着脱などで全面的な介助が必要。(支給限度額 309,380円/月)

 

要介護5
日常生活のほぼ全般に介護が必要。意志の伝達も困難な状態。(支給限度額 362,170円/月)

 

※介護保険サービスの1カ月あたりの支給限度額は要介護度ごとに異なります。利用者の自己負担額は1割ですが、一定以上の年間所得がある人は2~3割となります。

 

自宅で過ごす〈居宅介護〉の場合、どんなサービスを利用できるの?

 

「自分らしい介護生活を送るために、どういうサービスがマッチしているか? ケアプラン(居宅サービス計画)を作成する際は、ケアマネと十分に話し合うことが大切です。前回お話した『私の好きなことリスト』を見てもらって、あなたという人を知ってもらいましょう」

 

ちなみに自宅で利用できる「居宅サービス」には、訪問系(訪問介護、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリなど)、通い系(デイサービス、デイケア)、お泊り系(ショートステイ)のほか、福祉用具のレンタル、住宅改修があります。主なサービス内容は下記のとおりです。

 

・訪問介護サービス
ホームヘルパーが自宅を訪問して、食事・排泄、入浴、着替えなどの「身体介助」、掃除、洗濯、料理、買い物などの「生活援助」、通院など外出時の介護タクシーの乗り降りの介助、通院先での受診の手続きなどを行います。同居する家族がいる場合は対象外となることも

 

・デイサービス(通所介護)
施設で半日から1日を過ごすことができる送迎付きサービス。食事の提供、入浴の介助、体操教室などのレクレーションのほか、看護師による体調チェックなど、日常生活の支援を受けることができます。多くの人と触れ合うことができるので、気分転換にも。

 

・デイケア(通所リハビリテーション)
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門職と医師が配置され、リハビリの機能が充実した施設。食事の提供、入浴介助、レクレーションなどのプログラムもありますが、デイサービスにくらべて、医療的なケアやリハビリに重点を置いています。

 

・訪問入浴介護
寝たきりで自宅の浴槽に入れない人、通所施設に通うのが困難な人、感染症のために通所施設のお風呂を使えない人のためのサービス。簡易浴槽を自宅に持ち込んで、入浴の介助をしてもらえます。

 

・訪問看護
自宅で医療的なケアが受けられますが、サービスを受けるには主治医の訪問看護指示書が必要。看護師や准看護師、保健師などが自宅を訪問し、症状の経過観察、栄養管理、衛生面のケア、診察の補助(たんの吸引など)などを行います。

 

・短期入所(ショートステイ)
特養で生活面の介助を受ける「短期入所生活介護」と、老健や病院で医療的なケアを受ける「短期入所療養介護」の2タイプがあります。期間は“数日から30日”が基本。日ごろ介護を担当する家族が病気や仕事などで介護できない場合や、家族の体と心の負担を軽減する(レスパイト・ケア)ために利用されるサービスです。

 

また、介護保険外サービスになりますが、市区町村や民間の事業所が行う「配食サービス」「家事支援サービス」「訪問理美容サービス」などもあります。これらを予算内で上手に組み合わせるとよいでしょう。

 

情報は自分で取りに行くもの!友人たちと“介護カフェ”を開催しよう

 

自分や家族にマッチした介護計画をデザインするには、親の介護の経験を生かすのが一番ですが、介護を経験していない人もいますよね。介護保険サービスは変わっていきます。最新の情報は自分でとりにいく!という意識が必要です。まずは介護の本を読んで、知識を得ることから始めましょう。

 

「わからないことは自治体の窓口、地域包括支援センターなどに直接問い合わるといいと思いますよ。周囲に介護職の知り合いがいたら、ケアマネを紹介してもらって、1日勉強会をお願いするのもおすすめの方法です。友人たちに声がけして、お茶会の感覚で“介護カフェ”を開催し、『今から、どういう準備をするといいですか?』と聞いてみましょう」と高室さん。

介護士さんと勉強会をする人たちイラスト

 

また、介護の先輩の友人たちのリアルなOB体験談を聞くのも「なるほど」と納得できたり、たくさんのヒントが得られます。

 

行政や地域包括支援センターの窓口、介護施設の相談員、知り合いのケアマネ、友人たちなど、いろんな人たちにリサーチするうちに、まるでパズルのピースが増えるように『介護の情報』が増えていきます。ときには空振りすることもありますが、空振りを恐れずに情報を取りに行くガッツを持っている人が勝ち!です。

 

「シングルの人はきょうだいや友人たち、SNSを通じて知り合った人たちとの縁を大切に、人とつながるセーフティーネットづくりをすると、孤独対策にもなりますよね。『介護』というワードをマイナスにとらえないで、未来の自分が自分らしく、快適に暮らすためにも、情報を選ぶ力を身につけていきましょう」

 

【教えていただいた方】

高室しげゆき
高室しげゆきさん
ケアタウン総合研究所代表
公式サイトを見る

地域福祉を支える「地域包括ケアシステム」づくりと、「新しい福祉の人材育成」を掲げ、行っている。ケアマネジャーや地域包括支援センター、社会福祉協議会、介護福祉施設のスタッフを対象に、研修や講演活動を行い、受講者数は延べ23万人以上になる。著書に『子どもに頼らないしあわせ介護計画』(WAVE出版)など多数

 

イラスト/内藤しなこ 取材・文/大石久恵

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