私事で恐縮ですが、人生で初めて、郊外に引っ越しをしました。
場所は、昨年3月に開業して話題になったムーミンバレーパークのある飯能の辺りなのですが、西武鉄道は池袋から30分も走れば田園風景があり、近くて程よい自然が広がっています。
こちらに住んで半年が経ちましたが、その間、様々な出来事や素敵な気づきがありました。
埼玉県には温泉も多く、私は週1ペースで数々の温泉を巡り、近所にスイミングプールも見つけ、水泳教室にも通い始めました。50歳を過ぎて、今までの遊びとは違う、何か新しいことにチャレンジしようと決めたからです。
そんな中、二つほど面白いエピソードがありました。
初めて水泳教室を訪れた時、体慣らしで泳いでいると、「初めて!? あなたは、水が好きなのね!」と、可愛らしいおばあさんが声をかけてきてくれました。
「はい。最近引っ越してきました。かなりブランクがありますが、子供の頃から水が好きで、変な話ですが、以前私、前世が河童だと言われたことがあるんです」
冗談ぽく言うと、私のことを気に入ってくれて、
「ところで私、幾つだと思う?」
私が凝視していると、「81歳よ! ひ孫たちもいて『ばぁば、プールなんて行くの?』って言うけど、
全然気にしてないの」
耳元で可愛らしく囁いてくれました。
顔や腕には程よく皺がありますが、無駄な贅肉はなく、足腰も丈夫で姿勢も良く、しっかりとした足取りでサウナ室から出て行かれたのには驚きました。
2回目にお会いした時も、手を振って呼んでくださり、私を皆に紹介してくれて、「河童さん! 辞めないで、続けてね!」と励ましてくれました。
リーダーシップがある、人生のベテラン・ムードメーカーの彼女に仲間に入れてもらい、助けられた気がしました。
ふと見ると更衣室の壁に、『更衣室でも、マナーと思いやりのある会話を』という言葉が貼られていました。なるほど、そういうことだったのかと、良い意味で考えさせられる言葉だと思いました。
もう一つは、休日に出かけた秩父の温泉でのこと。
更衣室で、
「思いやりを持って拭いてね」
何やら不思議な言葉が聞こえてきたのでそちらを見ると、声の主は母親で、側で小さな男の子が、バスタオルで体を拭いていました。どうやらお風呂上がりにバスタオルが1枚しか無かったらしく、それを二人で使う羽目になったようなのです。
男の子は手を止め、
「思いやりで拭くってなに?」
顔を上げて母親に聞きました。すると母親は、
「タオルが1枚しかないんだから、難しいけど上手に半分ずつ使って、お互い濡れたところが残らないようにできたらいいね」と。
「後から使う人のことを思いやれば、きっとできるわよ」
これには私も感動しました。
『思いやりを持って工夫すれば、なんでもできる』
これは全てに応用できる考え方です。
子供の頃、大橋巨泉のクイズ番組の間に入る、製薬会社のCMで、山小屋を出る石坂浩二が「後から来る人のために」と、薬の残りを山小屋に置いていったのを思い出しました。
誰もがこのように思いやりを持って行動すれば、世の中はもっと幸せモードになると感じました。
いつか
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