今すぐそろえられる、災害時を救う「PPGS」
防災用品は何をどのくらい用意したらいいか、まさに人それぞれ。
「必要と思われるものをすべて用意しようとしたら、お金もスペースもどれだけあっても足りません。そこで必要になってくるのが、今あるものをどれだけ使い回すか、という知恵。
ひとつのものを多用途に使うアイデアやテクニックを持っていれば、いざというときとても役に立ち、むやみに物を増やす必要もなくなります。
私がおすすめしている多用途に使えるアイテムは4つ。
ペットシーツ、ペットボトル、ゴミ袋、新聞紙で、頭文字をとって『PPGS』と呼んでいます。
P(ペットシーツ)…高分子ポリマーを使用しているため吸水性抜群。災害用トイレで大活躍するほか、水分を含ませれば氷嚢(ひょうのう)や冷感枕などにも代用できるので、災害時に発熱したり、暑いときに役立ちます。
(※災害用トイレとしての使い方やおすすめのサイズなど、詳しくは第2回参照)
P(ペットボトル)…水を入れたペットボトルを下からライトで照らすと、光が拡散して広い範囲を明るく照らせるので、懐中電灯やスマホのライトの上に置くなどしてランタン代わりに使います。またフタにキリなどで穴をひとつ開けておくと、シャワーとして使えます。キャップを開けて使うより、水を少しずつ出すように調整できるので節水できます。空のペットボトルを、サイズ違いで数本とっておくようにしましょう。
G(ゴミ袋)…45Lの大きいサイズ。災害用トイレに使えるほか、二重にしてリュックなどにセットすれば水を汲んで運ぶことが可能。新聞紙をくしゃくしゃにして中に入れ、そこに足先を入れると、寒いときに防寒具としても使えます。
S(新聞紙)…災害用トイレに使えるほか、空気を含ませるようにくしゃくしゃにしてゴミ袋に入れれば足を温めることが可能。三重にして足首から先を包み足の保護具(新聞足袋)として使えば、家の中でガラスの破片などが散らばった場所を歩く際などにもけがを予防できます。最低10部ほどは用意しておきましょう。
電気関連はソーラー充電できるタイプに
今や平時でもスマホがなければ何もできない時代。もはや個人のインフラであり、被災時のスマホの電源確保は必須。
避難所でも、充電のために長時間電源の順番待ちをしたり、一人当たりの充電時間が決められて十分にチャージできないなどの声も聞かれました。
「モバイルバッテリーは外出時の充電用に持ち歩いている人も多いかもしれませんが、被災時の停電を考えるとソーラー充電できるタイプがおすすめです。これなら電源が使えなくてもバッテリーにチャージでき、スマホ充電ができます。
私は100円ショップで1500円くらいのソーラー充電できるものを購入しました。USB充電もできるタイプなので、どちらも使えるのが普段使いに便利です」
また、自宅避難する際にあると便利なのが蓄電池。
「蓄電池があると、スマホ充電や電気ケトル、IH調理器なども使えるので、かなり普段に近い生活ができるはず。使い方にもよりますが、だいたい5kWhの蓄電池で1~3日分の電気が確保できます。
これもスマホ充電器と同様に、ソーラー充電できるタイプがおすすめ。
これがあれば調理もできるので、以前はカセットコンロ用のガスボンベを40本用意していましたが、今は20本に減らしました。
ただ、私が持っている中型のものでも8~10万円程度はします。
かなり高額ですが、例えば家で電気を使用する医療器具を使っている人などは、電源の確保は生死にかかわる問題。なので、例えばポイント還元率の高いときなどに「えいっ!」と腹をくくって買ってしまうのもありだと思います。
自治体によっては蓄電池を買う際に補助金が出るところもあるようなので、都道府県や市町村のHPで調べてみるといいですね」
情報収集はラジオで! お気に入りのパーソナリティを見つけよう
東日本大震災のとき、しばらくスマホがつながらなかったという経験をした人も多いのでは? 「災害時の情報収集にはラジオがマスト」と辻さん。
「スマホにもラジオアプリなどがありますが、スマホで聞いているとバッテリーをたくさん消費しますし、そもそもつながりにくい場合もあります。
災害時にはラジオはひとつ、絶対にあるといいですね。そして手に入れたら聞くことを習慣づけましょう。
テレビは広域で多くの人に向けた情報を発信していますが、ラジオは聞いているエリアの人にとって身近な情報も多い。例えば救援物資をいつどこで配布するか、役所でどんな手続きが始まったかといった情報も、ラジオのほうがピックアップしやすいと思います。
災害の情報はNHKラジオが最も正確ですが、地域の細かな情報は住んでいる地域をカバーしている放送局の番組が役に立ちます。
それとともに、好きな番組やパーソナリティをぜひ見つけてほしいと思います。
ラジオのパーソナリティはリスナーに直接語りかけてくれるような身近さがあるので、『この声を聞くと安心する、元気が出る』という人がいると、非常時の心の安定につながりますよ」
【教えていただいた方】
一般社団法人育母塾代表理事。1991年、看護師免許取得。1993年「国境なき医師団」の活動で上海に赴任。帰国後、阪神・淡路大震災で実家が全壊したのを機に災害医療に目覚める。以降、国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)において国内外の被災地で活動。現在はフリーランスのナースとして講演、防災教育、被災地支援活動を行う。『レスキューナースが教えるプチプラ防災』(扶桑社)ほか、防災関連の著書多数。
イラスト/ミヤウチミホ 取材・文/遊佐信子