自宅の地震被害を最小限にするには?
こんにちは。管理栄養士、防災食アドバイザー、防災士の今泉マユ子です。
災害が起きたとき、どう行動すればよいか。今回は「自宅で地震が起きたら…」についてお話しします。
自宅で地震が起きたとき、命を守るためにまず重要なことは①ケガをしないこと。そしてもうひとつ、②出入り口をふさがないようにすること。このふたつです。
というのも、ケガをしたり、出入り口がふさがれてしまうと、津波や火災が起きた際に逃げられなくなってしまう危険性があるからです。
ですから、地震を感知したら、まず、
・本棚やタンス、キャスター付きワゴンなどから離れる。
・テーブルや机の下にもぐる
・入り口を開けて避難路を確保する
といった行動をとるようにしてください。
そして、こうした行動をとっさに、適切にとれるようにするには、地震が起きる前の平時に「いかに安全な家・部屋づくりをするか」にかかっています。
災害が起きてからできることは限られていますが、今できることはたくさんあります。
家屋は無事でも、家の中が危険な場所に!
自宅での被害を最小限に食い止めるためには、家屋が倒壊しないことが第一条件になりますので、耐震化が重要になります。安全確保のために今住んでいる家の耐震診断を考えてみてください。自治体によっては、耐震診断や耐震改修などに要する費用の一部を助成する制度を設けている場合があります。補助金制度については、各自治体などに確認してみてください。
ただ、家屋は無事だったとしても、家の中の家具が転倒して下敷きになったり、割れた窓ガラスや食器類の破片が床に散乱してケガをしたり、逃げ道を失ったり。危険な状態になることが多くあります。
「命を守るためには、まず家の安全を確保すること」そして、家を安全にするためには、家具や電化製品の転倒・落下・移動防止対策をしっかり行い、地震に備えることが重要です。
家具の転倒対策は、複数組み合わせることがポイント
そこで、「命を守る行動」として、家具の転倒防止は今すぐにやっていただきたいと思います。
ただ、転倒防止策としてするべきことはいろいろありますが、最初からすべてをやろうとすると、「大変そう」「ちょっと面倒」「そのうち、やろう」という感じで、挫折してしまうかもしれませんので、まずは以下の3点に絞って家の中を点検し、必要な対策をしてみてください。
記事が続きます■対策(1)家具の配置を見直し、固定する
まずは寝ている場所。家具が倒れたとき下敷きにならないか。寝ているときは、地震が起きてもすぐに家具のそばを離れることができません。普段寝ている場所の周囲の家具をチェックし、もし家具が倒れたとしても、寝ている人の上に倒れない位置・向きになるよう部屋のレイアウトを変えてみてください。
次に、チェックしたいのは部屋の出入り口付近。倒れた家具が逃げ道をふさいでしまわないかということ。倒れたときドアをふさいでしまったら、避難しようとしても逃げられません。またトイレの扉付近も要確認。トイレに入っている際に地震が起きて、トイレの扉の前に家具が倒れ、トイレから出られなくなってしまったというケースもありました。
このように、「もし、この家具が倒れたら…」ということを想像しながら、家の全体を見渡してみましょう。
さらに、こうした配置を考慮したうえで、家具はできるだけ固定してください。
家具転倒防止の突っ張り棒を家具と天井の間に設置したり、転倒防止シートを家具下に敷くなどの対策が有効です。ただし、これらはひとつの方法だけでは不十分なこともあります。例えば、突っ張り棒は設置角度がずれると外れてしまうことがあり、シートも重量や床材によっては効果が薄れることも。複数の方法を組み合わせることで、より確実な対策になります。併用して安全性を高めましょう。
接着によって固定するので、対象物(家具や冷蔵庫)や壁面への穴あけ工事が不要というものも多くあります。
また、上下が分かれている家具があれば、上と下をしっかり連結するのも忘れずに。
■対策(2)重いものは下に、軽いものは上に
本棚、食器棚、冷蔵庫などに物を入れる際には、重いものを下の段に、割れにくい軽いものを上の段に入れるようにします。こうするだけでも、家具の重心が下がり、倒れにくくなります。
我が家では、本棚の左下の段には重い缶詰をたくさん入れ、右下の段には備蓄用のペットボトル入りの水を並べて入れています。備蓄をしながら重しにもなるので、おすすめです。
■対策(3)物が飛び出してこないようにする
家具などの大きいものが倒れると同時に、中に入っている小さなものが飛び出してくる危険性があります。小さなビンでも勢いよく飛び出してくればそれ自体が凶器になります。また、落下して割れれば床にガラスの破片が飛び散って避難の妨げになります。
例えば、地震の際は重い冷蔵庫も倒れたり、扉が開いて中に入っているものが飛び出したりすることがあります。冷蔵庫も家具同様に固定具で固定し、冷蔵庫に入っている瓶詰食品や香辛料などのこまごましたものはタッパーやかごなどにまとめて入れておきましょう。
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また、包丁が出しっぱなしになっていると、地震の揺れで飛んだり落ちたりして、とても危険です。足元に落ちてきてケガをしたり、小さなお子さんが触ってしまうおそれもあります。
調理中であっても、使わないときはきちんと扉の閉まる引き出しや包丁差しに収納しましょう。特に小さなお子さんがいる方や動物を飼っている方は、チャイルドロックなども活用して注意してください。
食器棚から飛び出した食器も粉々に割れて大変危険です。食器棚をはじめ、ひらき戸タイプの家具には「扉ひらき防止ストッパー」を取りつけます。ガラス扉には飛散防止フィルムを貼り、食器類の下には滑り止めシートを敷きます。
テレビや電子レンジが大きな揺れによって飛んできたという事例もありました。こうした電化製品は成人の腰の高さ(約85〜95cm)、または床から1m未満に置くようにし、耐震ベルト(バンド)、耐震マットなどを敷きましょう。
すべりやすい素材の家具や家電は耐震マット+耐震ベルトとの併用が◎。設置後も定期的に粘着力や劣化をチェックすることが大事です。
なお、こうした家具転倒防止策についても、支援を行っている自治体があります。家具転倒防止器具等を無償で支給したり、自力で器具を取りつけることが困難な世帯については、無償で取りつけ支援を行ったりしています。条件などがあるので、お住まいの自治体について調べてみてください。
日頃忙しい生活の中で、ついつい後回しにしてしまいがちな防災対策ですが、災害はいつやってくるかわかりません。まずはできることから、ひとつひとつ、準備してみてください。
【教えていただいた方】

管理栄養士としてレシピ開発、食育、SDGsクッキングの指導を行うとともに、防災食アドバイザーとしても活躍。災害時でもポリ袋と湯煎で簡単にできる調理法「お湯ポチャレシピⓇ」の指導や備蓄アドバイスなどを行う。さらに、2017年には防災士の資格を取得。食の範囲にとどまらない幅広い防災活動に従事する。これまでに、全国で行ってきた講演は400以上。日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)リーダー。東京消防庁から拝受した感謝状は11枚になる。著書に『SDGsクッキング(全3巻)』『親子で学ぶ防災教室』シリーズ(理論社)『かんたん時短、「即食」レシピ もしもごはん』(清流出版)など22冊。テレビ出演200以上、ラジオ出演300以上。新聞、雑誌、WEBサイトなどでも活躍中。
取材・文/瀬戸由美子