暗闇の中の避難で頼りになるのは備えの灯り
こんにちは。管理栄養士、防災食アドバイザー、防災士の今泉マユ子です。
今回のテーマは、「夜、自宅で寝ているときに災害が起きたら…」です。
災害はいつ起きてもさまざまな被害をもたらすものですが、「夜、寝ているとき」というのは、昼間よりも危険度がより高くなります。というのも、日中であれば、正確に状況を判断し、素早く避難行動をとることができるような状況でも、災害によって停電し、真っ暗闇になってしまうと、それが格段に難しくなってしまうからです。
私たちは普段、部屋の灯りや街灯があることが当たり前の環境で暮らしています。そのため、「真っ暗闇」の状態を想像するのは意外と難しいものです。試しに、夜にカーテンを閉めて部屋の灯りをすべて消してみてください。
毎日、暮らしている家の中でさえも、安全に移動することができなくなってしまうことがわかると思います。
停電した瞬間に点灯するライトがありがたい!
停電時の対策として、今すぐやっていただきたいのが「停電時に自動で点灯するライト」の設置です。家の何か所かにつけておきましょう。
停電時に自動で点灯するライトには、電球タイプやスマート家電と連動するタイプなど、いろいろありますが、我が家では簡単に取り付けられて、普段の生活にも便利な「コンセントに常時接続しておくタイプ」を、寝室、2階の廊下、浴室の脱衣所(洗面所)、玄関に取り付けています。
こうした、コンセントに常時接続しておくタイプは、普段、電源に差しておくことで充電されるので充電切れの心配もないというのも安心です。また、コンセントから取り外して懐中電灯のように、持ち歩いて使えるものもあります。
こちらは廊下に付けているライト。地震の際は、揺れを検知してから10分間光り続けます。また、地震以外で停電した際も、停電してから10分間光り続け、電気が復旧すればライトも自動で消灯します。

地震の際には揺れを検知してから10分間点灯。停電時にも自動で点灯します

消灯後、周囲が暗くなったのを感知して、約30秒間ライトが点灯

コンセントから外して使用することもできます、外してから、約6時間使用可能(満充電時)
私は実際、入浴中に停電したという経験があるのですが、電気がバチンと切れた瞬間「えっ」と緊張が走りましたが、次の瞬間に洗面所(脱衣所)に設置していたこの「停電時自動点灯ライト」がパッとついて、心の底からホッとしました。
そして、この灯りを頼りに急いで浴室から出て、明かりの中で落ち着いて身支度を整えることができました。このときは本当に灯りのありがたみが身に沁みました。もし、この灯りがなかったら…と思うと、今でも怖いなと思います。

浴室の脱衣所(洗面所)に設置した停電時自動点灯ライト
また、人感センサー付きのタイプもあります。人が通るとパっとつくので、普段の生活では、夜中トイレに行く人やお子さんのいるご家庭にとてもよいと思います。充電器にさしておき、ライト部分だけ外すことができます。私はこれを玄関付近につけています。例えば、夕方に犬のお散歩に行くとき、ライトをはずして出かけ、戻ったら充電器にさすだけです。充電し忘れるということがなく、普段から役立ち、停電したら勝手についてくれるので、とてもおススメです。

人感センサー付き。ライト部分を取り外し、懐中電灯代わりにも
スマホが懐中電灯代わりになるから不要でしょ? と思われる方もいるかもしれませんが、災害時にスマホのバッテリーの残量はとても貴重。残量はできるだけ確保しておいたほうがよいので、室内を照らす灯りは別に備えておくことをおすすめします。
出入口や懐中電灯に貼った蓄光テープが目印に
停電時の対策として、今すぐできることをもうひとつご紹介します。それは蓄光テープを懐中電灯や部屋の扉のノブ付近に貼っておくことです。

しっかりと、長く光る「高輝度タイプ」がおすすめ
蓄光テープというのは、日常の光を蓄えておき、暗闇の中で自ら光を発するというもの。
懐中電灯に貼っておけば、暗闇の中でも、置いてある場所がすぐにわかります。ちょっと値段は高くなりますが、「高輝度タイプ」を選ぶと明るく長く光るので安心です。」

蓄光テープを貼っておけば、停電時に懐中電灯の場所がすぐにわかります
枕元に懐中電灯を置いてあっても、強い揺れで懐中電灯が吹き飛ばされる場合もあります。いつもの置き場所になくても、この光があればすぐに見つけることができます。
また、部屋の扉のノブに貼っておけば、暗闇の中でも真っ暗な部屋の中でも、扉の位置がすぐにわかるので、出口の確保に役立ちます。

停電時の暗闇の中で、扉の場所を教えてくれます
屋外のソーラーライトも停電時にはありがたい灯りに。太陽光で充電することができ、配線不要。明暗センサーが内蔵されているので明るさを感知して自動で点灯・消灯します。地中に埋め込むタイプであれば、家に取り付ける工事も不要です。

また普段の防犯灯にも、お庭の装飾にもなります。
「もしも」のときに即、必要になるものは枕元にも
寝ているときに災害が起きた場合に備えて、停電時の灯りの備えをしたうえで、もうひとつおすすめしたいのが、「枕元セット」の用意です。
枕元セットとは、災害時にすぐに必要になると思うものをバッグにまとめたもの。私はこれを枕元においています。このバッグが揺れでどこかに飛んでしまわないよう、ベッドの端にひっかけています。

揺れでどこかに飛んでしまわないよう、ベッドの端にひっかけてあります

枕元セット(軍手、靴、ホイッスル、懐中電灯、手ぬぐいのほか、スペアの眼鏡など、自分に必要なもの)
軍手は、避難路確保のために倒れた家具を起こしたり、ドアをこじ開けたり、床に散らばったものなどを片付ける際に必須。素手ではケガをする危険があります。
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また、枕元にはすぐに履けて脱げにくい靴を用意しておきましょう。上履き(バレエシューズタイプなど)もよいですが、スリッパは脱げやすく、避けたほうが安全です。地震などで床に割れたガラスの破片が散乱することもあるため、靴底がしっかりしたものがおすすめです。理想は踏み抜き防止機能のある安全靴ですが、価格が高めのため、普段使いの靴にインソールや中敷きを入れて補強するのもよいでしょう。
懐中電灯は、手持ちタイプのほか、ヘッドライトやペンダントタイプなどもあると、避難時に両手が使用できるようになります。
ホイッスルは助けを呼ぶときに使用するので、枕元セットだけでなく、外出時のカバンにも入れて、常に携帯するようにしています。
なお、私にとって眼鏡はなくてはならないもの。万一、どこかにいってしまったときのために予備を入れています。こうした「自分にとってはなくてはならないもの」は人それぞれ。自分に必要なものを入れるようにしましょう。
非常用持ち出し袋と内容はほぼ同じでも、枕元セットは“すぐに使える”ことが目的です。玄関など離れた場所に置いてある非常用持ち出し袋は、揺れの最中や直後には取りに行けないこともあります。就寝中の災害に備えるためにも、枕元にも同様のセットを置いておくようにしましょう。
さらに注意したいのが、窓ガラスの破損です。昼間ならすぐに離れることができますが、就寝中は気づくのが遅れ、被害に遭うリスクが高くなります。寝ている場所の近くに窓ガラスがある場合は特に、ガラス飛散防止シートを貼ることをおすすめします。
どんなに備えていても不安がゼロになることはありません。でも、「あのとき準備していてよかった」と思えるように、できることから始めてみませんか?
取材・文/瀬戸由美子

管理栄養士としてレシピ開発、食育、SDGsクッキングの指導を行うとともに、防災食アドバイザーとしても活躍。災害時でもポリ袋と湯煎で簡単にできる調理法「お湯ポチャレシピⓇ」の指導や備蓄アドバイスなどを行う。さらに、2017年には防災士の資格を取得。食の範囲にとどまらない幅広い防災活動に従事する。これまでに、全国で行ってきた講演は400以上。日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)リーダー。東京消防庁から拝受した感謝状は11枚になる。著書に『SDGsクッキング(全3巻)』『親子で学ぶ防災教室』シリーズ(理論社)『かんたん時短、「即食」レシピ もしもごはん』(清流出版)など22冊。テレビ出演200以上、ラジオ出演300以上。新聞、雑誌、WEBサイトなどでも活躍中。