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平時も災害時も「電気火災」に注意! 命を守るカギは日頃の心構えと備え

電気に起因する火災を「電気火災」と呼びます。私たちの暮らしに欠かせない電気ですが、使い方を間違ったり、メンテナンスを怠ったりすると火災の原因になります。また、近年の大規模地震で発生した火災の多くは、電気火災によるものでした。電気を火災の原因にしないために、平時も災害時も、私たちができる備えや行動とは?

湿気が多い場所で、プラグを差し込んだままの家電製品が危険!

こんにちは。管理栄養士、防災食アドバイザー、防災士の今泉マユ子です。

 

今回のテーマは「電気火災を防いで命を守るには…」です。電気火災が起きる危険性は平時にも、災害時にもあります。

 

まずは平時に起きる電気火災について考えてみましょう。電気火災を予防するために、日頃から気をつけておきたいこととして、以下のような点が挙げられます。

 

1)電気ストーブの近くに燃えやすいものを置かない

電気ストーブの近くに洗濯物やカーテンなど、燃えやすいものを置いておくと、誤って接触し、引火する恐れがあります。

 

2)コンセントの周りにほこりをためない

電気火災の中でも、コンセントが火元になるものを「コンセント火災」と呼ぶことがありますが、コンセント火災は洗濯機や冷蔵庫など、湿気の多い場所(キッチンや洗面所付近)で使用していて、長い間プラグを差し込んだままの家電製品で多く発生します。

 

そして、出火の原因は、コンセントとプラグの間にたまったほこり。そこに湿気が加わることで放電が繰り返され、発火します。

 

定期的にプラグを抜き、付着したほこりを取り除くよう掃除をしましょう。また、電源プラグを抜くときは断線しないよう、コード部分を引っ張らず、必ずプラグ本体を持って抜くようにしてください。

 

3)タコ足配線をしない

1カ所のコンセントの許容量を超える電気器具をつないで使用すると、コンセントが過熱して火災につながる危険性があります。

 

4)古い、傷んだ電源コードは使用しない

劣化した、あるいは傷のある電源コードを使用したり、コードが長いからと束ねた状態で使用したりしているとその部分に負荷がかかり、火災につながる恐れがあります。電源コードの上に家具など重いものを置くのも危険です。

 

実は、我が家でもコンセントから出火し、危うくコンセント火災になりかけたことがあります。

 

それは、10年以上前になりますが、娘と一緒に娘の部屋にいたとき、足元のコンセントから急に火が出ました。古い延長コードをタコ足配線で使用していたのが原因でした。

 

「空気を遮断しなくては!」と、燃焼を止めるために無我夢中で近くにあった洋服か何かをかぶせて消火しましたが、フローリングが真っ黒に焼けてしまいました。たまたま私がいたのですぐに消火できましたが、部屋にいたのが娘だけだったら燃え広がっていたと思います。

 

リビングでは意識して新しい延長コードを使うようにしていたのに、うっかりしていて、子ども部屋は古い延長コードのままになっていました。何かあったときに対処できない子どもの部屋だからこそ、きちんとしないといけないなと反省しました。

 

記事が続きます

近年の大規模地震後に発生した火災の約半数は電気火災

次に、地震の後の二次災害として起きる電気火災についてです。

 

地震の後は倒壊した家屋の瓦礫が道をふさいでしまって通れないことがあるなど、普段の火災よりも消火活動が難しく、瞬く間に燃え広がって被害が大きくなる恐れがあります。

 

そして、阪神淡路大震災や東日本大震災など、近年の大規模地震の後に発生した火災のうち、出火原因が判明した火災のおよそ半数が電気によるものでした。

 

2024年に発生した能登半島地震でも、石川県輪島市で大火災が発生しましたが、総務省消防庁消防大学校消防研究センターが被害のあった家屋の焼け跡を調べたところ、電気配線に溶けた跡があったことから、地震の揺れで電気系統がショートするなどして出火した可能性があると報告されています。

 

地震の後、電気によって火災が発生する原因としては、家具の転倒や物の落下によって電気製品や電源コードが破損・断線。ショートした際に火花が飛び散り、周囲のほこりに引火することが考えられます。

 

また、白熱灯や電気ヒーターなど、熱を発する電気製品が倒れ、接触したカーペットやカーテン、近くの衣類などから出火することがあります

 

こうした火災は、普段から熱源の近くに燃えやすいものを置かない、コンセントの周囲にほこりをためない、古い電源コードを使用しないなどに気をつけることで、その危険度を下げることができます。

 

通電火災には感震ブレーカーで備える

こうした電気による火災は地震直後ではなく、地震発生後、数時間たってからや翌日に発生することもあります。それが「通電火災」と呼ばれるものです。

 

能登半島地震の際に起きた輪島の火災も、通電火災が原因だといわれています。

 

通電火災とは、地震によって起きた停電が復旧する際に起きる火災のこと。地震発生時に転倒した照明器具や電気ストーブ、ドライヤーなどが、電源がONになったまま放置されており、電気が復旧して電気が流れた際に作動を始め、接触していたカーペットやカーテンに引火します。あるいは水がかかった状態だとショートして火花が散って近くの燃えやすいものから出火します。

 

そして、こうした通電火災が怖いのは、避難して無人になった家で発生することが多い点です。誰もいないため、発見・消火が遅れ、さらには散乱した家財にどんどん燃え移り、あっという間に火が広がってしまいます。

 

そこで、通電火災を防ぐには避難する際、忘れずにブレーカーを下げることが必須です。また、電気が再開したらブレーカーを上げる前に、電化製品やコードに異常がないかを必ず確かめましょう。

 

なお、通電火災を防ぐための備えとして感震ブレーカーの設置も有効です。

 

感震ブレーカーとは、設定値以上の揺れを感知すると自動的に電気の供給を遮断し、地震の二次災害である火災を防ぐことが目的の製品です。

 

工事が必要な「分電盤タイプ」は、震度を感知すると、警報を鳴らした後、主幹ブレーカーを落として家の中のすべての電気を遮断します。

 

「コンセントタイプ」には、既存のコンセントを外して取りつける埋め込み型と、差し込むだけのタップ型の2種類があります。埋め込み型は電気工事が必要ですが、タップ型は誰でも簡単に設置することが可能です。

 

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なお、自分で取りつけできる感震ブレーカーとしてはもうひとつ、おもりを使用するタイプがあります。揺れを感知するとバネやおもりの力で物理的にブレーカーを落としてくれます。簡単に取りつけることができるというのが魅力です。

 

両面テープで取りつけるので簡単。震度5以上(6や7にも設定可能)で作動。本体は蓄光材使用で暗闇で数分間光り続けます

 

おもりを使用した「感震ブレーカー」。ブレーカーに取りつけておくと、揺れによっておもりが落下し、自動でブレーカーを下げてくれます地震の揺れを感知するとすぐに電気が止まるので、とても安心です。

 

ただし、医療用機器で電気を使用している方の場合は、急に電気が止まってストップしてしまうのは、命にもかかわるリスクになりますから注意が必要です。

 

また、夜であれば真っ暗になることに不安がある、オートロックの玄関が作動しなくなるといったことに不便を感じる方は分電盤タイプがおすすめです。分電盤タイプの中には、揺れを感知した後3分間は警報音を鳴らし、その後、電気を遮断するというタイプもあります。この3分の間に避難を始めたり、避難の準備や心構えをしたりする時間をとることができます。

 

ご家庭の状況に合わせて選ぶのがよいと思います。なお、こうした感震ブレーカーに関して、補助金制度がある自治体もありますので、設置を検討している方は一度調べてみるとよいでしょう。

被害を最小限にするには初期消火が重要!

火事を出さないための注意点をお伝えしてきましたが、万一、出火してしまった場合に大切なのは初期消火です(ただし、消火活動をしても火が消えない、炎が大きくなっていると感じる場合は、無理に消そうとせず、早めに安全な場所に避難するようにしてください)。

 

初期消火のために家に備えておきたいものといえば消火器。皆さんのお宅やその近くに、消火器はあるでしょうか? そして「いざ」というときに、すぐに正しく使う自信はありますか?

 

家に消火器があっても、使い方を知らなければ「置いてあるだけ」になってしまいます。「使い方を知っている」を「使うことが出来る!」にするには訓練がとても大事です。職場や地域、お住まいのマンションの防災訓練や、各地の防災館の消火体験などで、実際に消火器を使用できる機会があれば、ぜひ積極的に参加してみてください。

 

消火訓練

東京消防庁の「本所防災館」の消火訓練に参加しました

 

消火訓練

消火器を使った消火訓練。いちばん右が私

 

私は2023年に東京消防庁の「本所防災館」で消火訓練に参加し、実際に消火器を使う体験をしました。消火器の使い方を学び、「マル」をもらえたときはとても安心できました。消火器の操作を体で覚えることで、いざというときの行動がまったく違ってくると感じました。

 

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また、自宅に消火器がないという方は購入を検討してみてはいかがでしょうか。

消火器

私は用心のため、消火器を2本自宅に置いています

 

左のオレンジ色の消火器は東京ガスの取り扱い店で購入しました。ホームセンターで買うより値段は少し高めになるかもしれませんが、有効期限が近くなるとハガキで交換時期を知らせてくれたり、実際にその消火器を使った訓練をさせてくれたりと、アフターサービスがとても充実していて安心です。ただし、残念ながら今は、オレンジ色は製造されていないようです。

 

白いほうは、消火器・消火設備の老舗メーカーの、住宅用消火器です。デザインがおしゃれで気に入って購入したもの。これを購入してからは、リビングなど目に入りやすい場所にあえて置くようにしています。いざというときにもすぐ使える安心感があります。

 

知人の新築祝いや開店祝いに、この消火器をプレゼントすることもあります。白と黒の2種類あり、店をオープンした知人に黒のスタイリッシュな消火器をお祝いとして贈ったことがあります。そのときは「お店を黒字にしたい」という願掛けから「黒」をリクエストされたからでした。意外に「自分で消火器を買う」という方は少ないので、喜ばれることが多いようです。また、こうしたプレゼントを通して防災意識を高めるきっかけにもなります。

 

なお、消火器には「有効期限」があります。見える場所に置くだけで安心せず、いざというときに確実に使える状態になっているか、時々確認することが大切です。

 

また、火災警報器も定期的にチェックしましょう。

 

現在、住宅用火災警報器の設置は法律で義務化されています。しかし、取りつけたら終わりではありません。定期的に作動確認を行い、電池切れがないか確認し、10年を目安に交換してください。

 

平時も災害時も、「火災を起こさない」ことがとても重要です。日頃の火災対策をしておくことは、災害時の火災を防ぐことにもつながります。

 

ぜひこの機会に、自宅の火災への備えをチェックし、火災時にとるべき行動について家族で確認をしておきましょう。

 

 

【教えていただいた方】

今泉マユ子
今泉マユ子さん
管理栄養士、防災食アドバイザー、防災士、日本災害食学会災害食専門員
公式サイトを見る
Instagram

管理栄養士としてレシピ開発、食育、SDGsクッキングの指導を行うとともに、防災食アドバイザーとしても活躍。災害時でもポリ袋と湯煎で簡単にできる調理法「お湯ポチャレシピⓇ」の指導や備蓄アドバイスなどを行う。さらに、2017年には防災士の資格を取得。食の範囲にとどまらない幅広い防災活動に従事する。これまでに、全国で行ってきた講演は400以上。日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)リーダー。東京消防庁から拝受した感謝状は11枚になる。著書に『SDGsクッキング(全3巻)』『親子で学ぶ防災教室』シリーズ(理論社)『かんたん時短、「即食」レシピ もしもごはん』(清流出版)など22冊。テレビ出演200以上、ラジオ出演300以上。新聞、雑誌、WEBサイトなどでも活躍中。

 

取材・文/瀬戸由美子

 


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