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なぜ50代は寝ても疲れが取れないのか

「疲れたら寝る」は休養の基本です。でも、体の機能が低下してくる50歳になったら、それだけでは不十分。疲れのもととなるストレスが体に及ぼす影響、そして「寝ること」が疲労回復にベストの選択ではない理由について、休養に詳しい片野秀樹先生に教えていただきました。

疲労を生み出す5つの「ストレス」

疲労とは精神的、肉体的な活動が低下した状態であり、それが続くことで中枢神経に炎症を起こす病気になるリスクが高まります。
では、 そうした疲労の状態を生み出すもの、つまり疲労の「もと」とは何でしょうか?

 

「ひと言で言うと、ストレスです。
私たちはよく『ストレスがたまった』『ストレス解消』という言い方をしますが、この場合で使われるような精神的なストレスだけがストレスではありません。
ストレスはもっと幅広く、精神的、肉体的な疲労の原因になる外的な刺激は“すべて”ストレスと言えます」(片野秀樹先生)

 

ストレスを与えるものを「ストレッサー」と呼びますが、ストレッサーには大きく分けて5種類あります。

 

5つのストレッサー

・物理的ストレッサー…暑さ、寒さ、音、光など
・化学的ストレッサー…薬物、化学物質、アルコール、食品添加物など
・心理的ストレッサー…不安、怒り、緊張、悲しみなどのネガティブ感情
・生物学的ストレッサー…細菌、ウイルス、ダニ、花粉など
・社会的ストレッサー…家族、職場、友人など人間関係、社会的な立場など

 

「私たちが『ストレスのもと』と考えるときには、心理的ストレッサーや社会的ストレッサーの場合が多いと思います。

ですが、実際には私たちを取り巻くもの・ことがすべてストレスの引き金となるのです。こんなに多いなんて、と驚かれたのではないでしょうか。
多種多様なストレスがあるのですから、当然すべてをゼロにする=ストレスフリーなんてできっこありません。大事なのは『過剰にならないこと』です」

 

異常値が出ない不調は自分でケアするしかない

ストレスが過剰にかかると私たちの体には、どんな変化が起きるのでしょうか?

 

「私たちの体を機能させている重要なシステムに、免疫系、内分泌系、神経系の3つがあります。

疲労によって免疫系、内分泌系、神経系の3つそれぞれの働きが低下していき、それらが絡み合って病気につながります。
3つのうちのどれかの働きが低下したり乱れていると、それぞれが助け合い一定の状態を保ちそれ以上の悪化を防ぎます。

 

この3つの中で、働きの低下や乱れをまず自覚しやすいのは神経系、とりわけ自律神経でしょう。

実際、疲労を専門とする医師が最も注目するのも自律神経です。

 

ということは、疲労の回復には自律神経を整えることがカギになるということ。

でも実際は、自律神経のバランスが乱れて『なんだか調子が悪い』と病院に行っても、血液検査や血糖値などには異常が出ない、という段階の人も多いですよね。
そうなると『うーん、もうちょっと様子を見ましょうか』となる。日本の医療制度では異常値が出て初めて診断がつき、医療介入ができますが、異常値が出ないうちは医療介入ができません。

ストレスが過剰になる前に本来はケアすべきなのに、病院では治してもらえないのが現状。ならば自分でケアするしかないのです」

記事が続きます

「ゆっくり寝る」しか休み方を知らない

休養難民

 

自分でケアと聞くと、まず思い浮かべるのが「ゆっくり寝る」ではないでしょうか。

 

「それはもちろん間違いではありませんが、50代にとっては正解でもありません。
『寝たら元気になった』という記憶って、子どもの頃とか若い時分の記憶ではないでしょうか?

体の機能のピークは10代後半から20代。子どもは疲れてもひと晩寝たら翌朝には元気になっているし、若いときは夜通し遊んでも翌日にたくさん寝ればすぐに回復しました。

 

でも、50代になると誰でも免疫も代謝も含め、体の機能全般が落ちてきます。
体は劣化しているのに若い頃と同じ対策で間に合うわけはないのです。

 

人によってはプラスアルファとして、寝具をいいものに変える、オーダー枕にするなどの対策をとる人もいるでしょう。
睡眠時間が短い人ほど、こうしたアイテムに頼りたくなる気持ちもわかります。
でも結局、なかなか疲れが取れず『休養難民』化してしまう人も多いのです

 

本当に「24時間」なのは昭和ではなく令和の社会人

さらに、今の50代は、疲れの回復を遅らせるような働き方をしているといいます。

 

「バブル経済の時代、栄養ドリンクのCMに『24時間戦えますか』という有名なフレーズがありました。
でもあの当時、本当にジャパニーズビジネスマンは24時間働いていたのでしょうか? 私はそうじゃなかったと思います。

 

当時はスマホもパソコンもありませんでしたから、例えば『外回り』とボードに書いてオフィスを出れば、移動の合間に喫茶店で休んだり、ぽっかり時間が空いたら映画を観たりパチンコをしたり、といったこともできたでしょう。
24時間戦っているつもりでも、そこには“余白”があって上手にバランスをとれていたのではないかと思います。

 

でも今は全社一斉に予定がわかってしまい、空いた時間にオンラインミーティングを組まれたり、スマホでチャットもできて、いつでもどこでもつながれてしまう。

家に帰ってもメールを見られるし、本当に逃げ場がない。
50代ともなれば責任のあるポジションにいる人も多く、そういう人はなおさらです。

 

そんな働き方、暮らし方でいいのか? いったん自分に問いかけることをしてみてほしいと思います」

 

【教えていただいた方】

片野秀樹
片野秀樹さん
博士(医学)
公式サイトを見る

一般社団法人日本リカバリー協会代表理事、ベネクス執行役員。東海大学大学院医学研究科、国立理化学研究所客員研究員等を経て現在は老人病研究、未病研究等に携わる。休養に対する社会の不理解を解消すべく、多方面で活躍。著書に『「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出した あなたを疲れから救う 休養学』(東洋経済新報社)がある。

 

イラスト/二階堂ちはる 取材・文/遊佐信子

 


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