スキンシップで幸せホルモン分泌がUP!
休み方と聞くと、体を休める「生理的休養」をまず考えがちですが、休むことを科学的に考える「休養学」においては、心を休ませること=心理的休養も重視します。
「心理的休養には『親交タイプ』『娯楽タイプ』『造形・想像タイプ』の3つがあります。それぞれ説明していきましょう。
『親交タイプ』は文字通り、人と交流することで活力を得る休養の仕方です。
友達や家族、パートナーと会話をしたりスキンシップをすることで、元気が出るという経験は誰しもあることでしょう。
普段仕事で人とかかわっていると、休日くらいは静かに過ごしたいと考える人もいるかもしれません。
そういう人は、積極的に友達と会ったりしなくても、例えばマンションの廊下でご近所さんに会ったら挨拶をする、買い物に行った先で店員さんに話しかけてみる、といったその場限りの交流でもOK。
人と言葉を交わすことは気分転換になり、社会とのつながりを感じて活力を得られる行為です」
誰かと一緒にいるほうが疲れるという方は、ペットがいいですね。
「動物との触れ合い(ペットセラピー)が心にもたらす効果はよく知られており、病院や介護施設などでも取り入れられています。
ペットならなでたりハグしたりといったスキンシップが自然にできるでしょう。
そんなとき、何ともいえない安らかで幸せな気持ちになるものです」
実はこれにはホルモンの働きが大きくかかわっています。
「私たちは、安心できたり好きな相手とハグしたり触れ合っていると、オキシトシンというホルモンが脳から分泌されます。
オキシトシンは別名『幸せホルモン』と呼ばれ、副交感神経を優位にする働きがあります。
オキシトシンがすばらしいのは、なでられるだけでなくなでる行為でも分泌されるという点。
だからペットをなでると、なでている自分も癒されるのです。
さらに、なでるスピードにもポイントがあります。
1秒間に5~10cmくらいのゆったりしたスピードでなでると、よりオキシトシンの分泌が盛んになることがわかっています。
触れ合う際にはぜひ、その速度を意識してみてください」(片野秀樹先生)
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大切なペットと自然の中に行けば

森や草原など自然の中に行くのは、なんともいえず清々しく、気持ちいいものです。
緑には心を落ち着かせる効果があります。
「最近は『森林医学』という、森林浴の効果を科学的に実証する学問が盛んです。
樹木は『フィトンチッド』という揮発性の化学物質を放出しており、それを私たちが鼻から吸い込むことで、体にいい影響があることがわかってきました。
森や山ではなく、海に行くと癒されるという人も多いですね。
波が打ち寄せるリズムと、人の1分間の呼吸回数の平均は同じなので、そのシンクロ具合が人にとっては心地よく感じられるようです。
心地よさを感じると、私たちの脳からはセロトニンというリラックスのホルモンが分泌されます。これが自律神経を整え、心身を休ませることにつながります」
娯楽タイプは「自分のペースで」
ふたつめの「娯楽タイプ」の心理的休養は、趣味や嗜好に時間を使う休み方です。
映画や音楽、近年ブームの推し活もこれに当たります。
「50代ともなれば趣味に使える時間もお金もある方が多く、いろいろやっている方も多いことでしょう。
それが息抜きになり活力を高められていればOKですが、注意しなければならないのは、のめり込みすぎてしまうこと。
夜通しドラマを観てしまうなど、休むつもりがかえって体に負担をかけたりリズムをくずす結果になってしまっては逆効果です。
また、家で一人で好きなドラマを観るというのならいいですが、例えば推し活仲間と一緒にライブに行く、といった場合は、どうしても相手のペースも考慮する必要があります。
休養として娯楽を選ぶときに大事なのは、ストレスを感じないこと。
相手に合わせることがストレスになったり、思い通りにいかなくて疲れてしまうような場合は、休養になりません。
娯楽タイプの休養は『自分のペースでできること』を念頭において選んでください」
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3つめの「造形・想像タイプ」は、DIYや手芸、料理などの創作活動や、瞑想や空想などを指します。
「ひとつのもの・ことに集中しているときは、仕事や人間関係など、ストレッサーから距離を置くことができます。
このように離れることを『デタッチメント』と言いますが、これが大事。
有形無形どちらでもいいので、没頭できることを選ぶといいですね」
ここで大事なのは「頑張りすぎないこと」だと片野先生。
「オフを充実させて活力を上げよう、と聞くと『なにかしなくちゃ!』とばかりに予定を詰め込む人もいます。
でも一歩家の外に出れば、社会の流れがありそれぞれの人の都合があり、自分の思うように進まないことも多いでしょう。
それでかえって疲れてしまう、とならないようにしたいですね」
【教えていただいた方】

一般社団法人日本リカバリー協会代表理事、ベネクス執行役員。東海大学大学院医学研究科、国立理化学研究所客員研究員等を経て現在は老人病研究、未病研究等に携わる。休養に対する社会の不理解を解消すべく、多方面で活躍。著書に『「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出した あなたを疲れから救う 休養学』(東洋経済新報社)がある。
イラスト/二階堂ちはる 取材・文/遊佐信子
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