京美人が好む滋養豊富な鰻
地元に愛される鰻店「うなぎのおぜき」
ビタミンやミネラル豊富な鰻は、昔から滋養あふれる食材として、京都の人々に愛されてきました。かつて京都には、町々に鰻を扱う魚屋や専門店があり、出前で丼やお重を注文したり、かなりの頻度で食べていたそう。また琵琶湖が近い京都では、東京ではほとんど見ることがない、淡水魚だけを扱う川魚店もあり、鰻はそこでも扱われ、京都人にとって、とても身近な魚であることがわかります。
「鰻は、井戸水に放ち、新鮮なまま調理できるから、美味しいんや~。それに元気にもなるやろ?」と京都の年輩の友人。80歳近くになっても、ツヤツヤ肌で、祇園で店を夜遅くまで仕切るパワーあふれる女性です。今も、時に触れ、鰻を食べに出掛けるそう。「鰻好きなんや~」と微笑みます。
でも近年、鰻価格の高騰や店主の高齢化による魚屋の廃業などに伴い、鰻を扱う店の数は目立って減っています。それでもまだ、歩いていると懐かしさ漂う店に出会うことがあります。今日は、そんな1軒をご紹介します。
西陣にほどちかい千本通沿いの商店街に一軒の趣ある店があります。前を通ると、香ばしいタレの香りが漂って、立ち止まらずにはいられません。ここは「うなぎのおぜき」。店主の尾関亘さんが40年営んでいる鰻店です。
店の奥の水場では、生簀に入った愛知県産の鰻を、ご主人が手際よくさばき、次々串を刺してゆきます。
関東の鰻は、背開きで、頭などを取った後、串刺しにして、一度蒸し、それから焼きに入りますが、関西は、腹開きで、頭はそのまま、身を切ることなく串を刺して、すぐに焼きを行います。フワフワとした食感の関東の蒲焼と異なり、生のまま直接焼く関西の鰻は、歯ごたえを感じる食感と香ばしさが魅力。鰻本来の美味しさが味わえると関西の人はいいます。
パチパチと燃える炭の上においた鰻は、なんとまだ口をパクパク。「う~すごい生命力~」と思わず…。余分な油が落ちて、旨味がいっそう凝縮されるそう。
「最近、鰻高くて、なかなか食べれなくなりました~」というと、「そうですね~ホンマに以前より仕入れ値が上がって、お客様には申し訳ない気持ちです~」とご主人。
そこで、店先には、「鰻弁当」1500円や、ちょこっと本物の味が楽しめる「うなむすび」250円が用意され、気軽に鰻の美味しさが味わえます。ご飯にのった鰻は小さくても、国産鰻の炭火焼きですから、味は本物。それなりの満足感も十分に…。いずれも人気の品で、売り切れのときもたびたび。
でも、もっとたくさん鰻が食べたいという人には、ランチタイムに店の奥のお座敷で、鰻丼3000円(鰻半身)と4600円(1匹)が、おすすめ。店の横の暖簾をくぐり、奥に進むと、そこには坪庭に面したりっぱなお座敷が…。「え~奥にこんなお座敷にあるとは知りませんでした~」と思わず声がこぼれます。
「ここは、大正期の建物なんですよ~」と店主。店の外からは想像できない造りは、まさに京都。尚、注文を受けてから焼き始めるため、時間の余裕が必要ですが、焼き立ての鰻丼の美味しさはさぞや…と思われます。
店の営業は、夜19時ごろまでですが、座敷で鰻丼が食べられるのは、原則昼だけ。でも、どうしても…と問い合わせ、予約すれば、夕食時間での用意してくださることもあるそう。「夕方には炭を落としてしまうので、その前に連絡してもらわないと無理ですが…」とのこと。
座敷は、全8席と、席数が少ないので、昼でも電話をしてから訪れるのをおすすめします。
今回は、小腹を満たすために「うなむすび」を買って帰りましたが、次回はぜひ友人と鰻丼を思い切り頂きたいもの…。
京都でもしだいに姿を消す鰻専門店。「まぁ、私が動く限りは続けるつもりですけど~」と店主の尾関さん。こういうお店は、ぜひずっと残ってほしいもの。
昔から、京美人のパワーの源のひとつになっている鰻。旅の疲れ解消にいかがでしょ。
うなぎのおぜき
京都市上京区千本通上立売下ル作庵町538
☎075-461-2655 営業時間11:00~19:00くらい 昼の鰻丼は11:30~14:30くらい
不定休 年末年始は、元旦から1月6日までお休みの予定だそう
訪れる前に連絡をおすすめします
交通/千本今出川交差点から北へ徒歩5分
小原誉子ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」