イチョウの焼き印が施された小判型の焼き菓子の「ふのやき」。
なんとも奥ゆかしい風情が漂います。
生麩を焼いて味噌などを付けた素朴な風情の菓子は、もともと千利休が茶会で用いたと言われるもの。以来、京都では、麩焼き煎餅として、茶の湯で親しまれる干菓子のひとつになっています。
なんとも風情ある姿に心惹かれます。
この菓子に出会ったのは、表千家、裏千家の茶道の御家元がおいでになる小川通寺之内を歩いていた時のこと。ここを訪れるたびに「ここは流れる気が違う…」と思うほど、凛とした空気が漂うエリアなのです。
茶道に携わる方々が行き交う石畳道は、常に清らかに掃き清められています。
その道の東側に位置する「兜門」は、裏千家の「今日庵」へ誘うもの。
その気品漂う佇まいに、さらに身が引き締まる思いが…。
さて、門を過ぎた一帯は、「裏千家学園茶道専門学校」があり、小川通を挟んだ向かい側に「ミリエーム」という会社のショップがあるのです。茶の湯の文化を広めるために設立された会社で、茶道教室など向けの教材や道具をはじめ、茶室の設計・施工なども手掛けるそう。その会社の食のブランド「式亭」。
様々な種類の和菓子のひとつが、今回ご紹介する「ふのやき」です。
この菓子は、茶道の裏千家の先代15代の御家元 千宗室(現・千玄室大宗匠)さんの奥様 千登三子さんが考案し、京菓子司「末富」により作られ、以来、裏千家を代表する干菓子になっているのです。
この日「ミリエーム」の部長さんが対応してくださり、さらにお話を伺うことに…。
「今、秋なので、この焼き印がイチョウなんですか?」と質問。
「いいえ、このイチョウは、千利休の孫の宗旦手植えの「宗旦銀杏」を表していて、裏千家のお印です」と。
「あ、そうなんですか~」と茶道に通じていない無知が露見した私です。
「宗旦銀杏」は、「今日庵」の敷地の中に聳える大銀杏で、噂ではさまざまな災害や火災から裏千家を守って来たという、まさに裏千家の守り神。それをお印にいただく「ふのやき」は、特別な菓子のひとつと言えるかもしれません。
実は、この「ふのやき」が直接購入できるのは、「ミリエーム」のショップだけ。そのため、京都にいらした裏千家の茶道を習っている方々にとっては、憧れの品で、わざわざこのお菓子を求め訪れ、お土産にされる方が多いそう。
でも、今は「式亭」のオンラインショップがあり、全国から注文が可能に。
直接購入できるのはここだけと知り、ひと箱求めます。
家で抹茶を煎れ、さっそくいただくことに…。パリッとしたサクサクの歯ごたえの後、香ばしい味噌の香りとほんのりとした甘さ、口に広がり、続いていただく抹茶の味をいっそう際立たせます。
裏千家のお茶を長年学ぶ友人にお裾分けしたところ、「これ有名なお菓子なのよ~」と、感激しきり。
上品な趣を漂わすとともに、常温で30日間と賞味期間があるため、年末年始の贈答品にもふさわしい品ではないでしょうか。茶道をしない方でも、上品なその味わいに、きっと喜ばれるはず…。
秋が深まり、「兜門」の紅葉も色づき、その趣はいっそう。
秋深まる京都に思いを馳せながら、抹茶と共に味わうひととき…。
心鎮まる時間が過ごせることでしょう。
「株式会社ミリエーム」
京都市上京区小川通寺之内上ル
☎075-451-5111
ショップ営業時間 9:00~17:00(土日祝日および年末年始休み)
京都の文化・観光を伝えるブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」