本場結城紬の街で、国宝級のお着物を着た!
結城紬、と言えば、着物好きじゃなくても聞いたことはあるはず。私は着物を愛する母と叔母の姉妹から「本場結城紬だけは別格」「人生で1着作れたら幸せ」と聞いていました。
ちょっと調べてみると、まず日本三大紬のひとつだそう。
三大紬とは結城紬、大島紬、牛首紬なのですね、知らなかった。中でも、本場結城紬は、真綿から手でつむいだ、撚(よ)らない“手つむぎ糸”で織るのが特徴。
しかも日本に数ある紬の中でも、たて糸・よこ糸の両方に手つむぎ糸を使うのは本場結城紬だけ。これは世界の布の中でも珍しいいらしい。
その糸を、絣(かすり)の柄を出すための緻密な製図に基づいてひとつずつ手で結ぶ、気が遠くなるような作業「絣くくり」を経て、織る。
「糸つむぎ」「絣くくり」「地機織り」の三工程にそれぞれ達人がいて、決して一人ではできない紬なのもまた本場結城ならではなのですって。
この三工程は、日本の重要無形文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
えっと、つまり国宝級の紬ではないですか。
この結城紬を生み出した結城が茨城県!だと、私はずっと知りませんでした。
そして、結城に行くとこれを着せてもらえるらしい。
行ってみたいじゃないかーと、降り立ったのはその名も結城駅。東京から東北新幹線で小山(栃木県)へ、そこから水戸線に乗り換えて、1時間半ほど、車内でビールをあける間もなく着いちゃいました。
余談ながら、私は女友達との旅なら3人っていいなと思っている。割り切れないほうがなんかバランスがいい。
ということで、今回の女子3人は酸いも甘いも噛み分けた40代&50代です。
ジェーン・スーさんに指摘されるまでもなく、いつまで女子とか言ってるんだ!と突っ込みたくなりますが。
結城紬、知ってるつもり!?
さあ、結城紬を着ようじゃないか、と鼻息荒く、手ぶらでOKと言われたのに、私はMY足袋を持ち、着物用下着をつけてやってきました。
まずはその前に、せっかくなのでそもそも結城紬とは?を学ぶべく、明治40年(1907年)創業の製造問屋「奥順」さんへ。
奥順さんは、結城紬をみんなに知ってほしい、着てほしいとの思いから、結城紬の博物館「手緒里」も運営されています。この博物館にあった高峰秀子さんの結城愛を綴ったお手紙が印象的だったなあ(行って見てみて~)。
博物館で見て学んだら、次に敷地内の「つむぎの館」で、織機で結城紬を織る体験をしてみることに。
人生初、織り機に座りました。教えてもらいながら縦糸に横糸を1段1段、通して織っていきます。手だけでなく足踏みも必須。これは頭ではなく体で覚えるんだな、と意識したら徐々にスムーズに。
10センチ四方くらいのかわいいコースターができました。いいじゃないかー、自分で織ったってだけで5割増しの愛おしさです。
ここでちょっとした発見がありました。
ゆるく織るとやわらかくふわっふわでニットのようになり、きつく織ると光沢がでるみたい。
本場結城紬の手つむぎ糸は、空気をたくさん含むためにやわらかく温かく、肌に優しいのだそう。
「一度着ると忘れられないと思います」とつむぎの館の新 陽子さん。
うーん、着せてもらうのが楽しみすぎるー!
本場結城紬300万円を着て、街を歩く。
「こちらで、帯も合わせて300万円くらいでしょうかねえ」
私が着せてもらった柄の入った濃茶の上品な本場結城のお着物のこと。急に“お”着物とか言いたくなります。
これ着て街歩きしていいの????
「いいんですよ、とても着やすい着物なので、気にせずにいつも通り過ごしてください。それにどんなに高価でも、結城紬は普段着ですから」と。
そうなのです、300万円だろうがなんだろうが、あくまでも普段着、街着。なんというぜいたくさ。
江戸時代には、男物が主流で、成功した商人や武士が好んで着ていたそうです。贅沢はご法度の中で、見た目はシックで地味な紬はぴったり。
でも実はめっちゃ高いんですよ、ぬふふ・・・と思ったかどうかは知らんけど、普段着に最上の着心地を!というのが、粋人の極みということなのでしょう。
確かにとても軽い。やわらかものの染めの訪問着や小紋より断然軽い。
借り物なのに、身体になじみむしっとりとした風合いが心地よく、とにかく温かい。
今回申し込みしておいた結城市による「結城着楽会」では、3000円で数種類の本場結城紬と帯の組み合わせの中から、好きなものを選んで着せてもらえます。
着物の⾝丈が⽰してあるので、⼥性なら⾃分の⾝⻑±5センチくらいのものを選べばOK。
地元の人がぞくぞくやってくる絶品パンを。
まずは、うわさを聞いていて、かねてから行ってみたいとGoogleマップに保存していた古民家パン屋「ぱんや ムムス」さんへ。
東京のパン激戦区、世田谷三宿の名店で修業した北村史絵さんが故郷に帰ってきてはじめたお店。
「実家で所有している見世蔵を活用しないか?と家族からの提案があったのがきっかけです」と。
蔵のよさを生かし上手にリノベされた店内は、高い天井に奥行きのある広々とした空間が心地よく、澄んだ気の流れを感じました。東京だったらこの広さはかなり難しいものねー、いいなあ、と思いながら。
お店には次々と地元の方がやってきます。
おススメを教えてもらって、スタンダードなクリームパン、キャロットケーキ、りんごのパン、そしてカレーパンなどなどを。
明日の朝ごはんと言っていたのに、このうちいくつかはすぐにぺろり。うんまっ。カレーパン、甘味もあってすごくツボでした。
コーヒーからの、味噌蔵、酒蔵へ。
パンのあとはやっぱりコーヒーを、と立ち寄ったのが、「Coworking & Café yuinowa」さん。
こちらも古い一軒家を上手にリノベしてあります。
茨城や結城にまつわる本、結城のお店のパンフレットが並び、なるほどー、ここに来れば結城のおもしろいところが全部わかる。観光ステーションでもあるのかな。
そしてここで、味噌蔵と酒蔵が見学できると知り、行ってみることに。ええ、300万円の結城紬でw
まずは歩いて1分ほどの「秋葉糀味噌醸造」さんへ。
天然醸造にこだわった糀と糀味噌を醸造されています。
味噌蔵をみせていただいてびっくり。立派な三十石の年季の入った木桶がたくさん並んでいました。
これだけでも一見の価値あり(写真の最大サイズは現在は仕込みには使われていないとのこと)。
秋葉菌ともいうべき、こちらの味を支える菌が、きっとこの蔵に何年も生きているんだなー。
3年熟成のスペシャルな「つむぎ味噌」を3人そろってお土産に購入。これが、帰宅して、みそ汁にしたらとってもおいしかった。みりんとあわせて大根としょうがを漬けてみたらこれも絶品。
続いて歩いてすぐの酒蔵「武勇 」さんへ。
酒蔵ってなんていい匂いがするんだろうとクンクン。
搾りたての新酒や、吟醸酒・和やか、そして丁寧に仕込まれた甘酒も試飲させていただきました。この甘酒が絶品、常備したい。
古民家宿で庭の月を愛で夜が更ける。
さて、そろそろ結城紬とお別れです。いやー、お名残り惜しい。着やすさ別格でした。
まったく着疲れすることなく、やっぱり着物いいな~と着物熱がむくむくあがってきました。
そして日が暮れる前に今夜の宿へ。古民家をフルリノベした一棟貸しの古民家宿「古民家宿TEN」さん。広っ。
築90年以上の町屋をリノベーションしたという建物。
7,8人で宴会ができそうなダイニングといろいろそろったキッチンつき、籠れる小さな個室や、きもちのいい縁側もあります。これは合宿とかにもよさそう。
さっきコーヒーをいただいた「Coworking & Café yuinowa」さんでチェックインするシステム。そこから1分ほど、散歩したエリアからすぐです。
今夜は3人で貸し切り。寝室になる2階の部屋には、庭を見下ろせる板張りが気持ちのいい廊下が。
うん、いい、結城に暮らしている気分。
さて、明日は陶芸の街、笠間へ。かき氷職人にすすめられた氷やさんにも行くよー!
【DATA】
★奥順
事前に申し込みをしておくと、結城駅北口ロータリー前の「ゆうき紬着付け処着楽」で着付けを行い、そのまま街歩きすることも。土日祝は当日に予約なしで着付け体験が可能。7,8月は未実施。
・織り体験
[コースター]約9cm×9cm
料金:2,200円
所要時間:約30分〜 ※人数により異なる
★武勇
★古民家宿TEN
1泊一棟丸っと借りて、3人なら42,000円ほど
※季節により異なります