健康はもとより、美容に欠かせない良質の睡眠。
それがなかなか得られないという人も多いはず…。
そこで今回ご紹介するのは、日本の風土・季節を考慮し、長年の技術の蓄積から生み出された良質の睡眠へと誘う寝具です。
京都の町中、三条通から堺町通を少し北に進んだところにモダンな建物があります。
ここは創業天保元年(1830)の寝具の老舗「イワタ」の本店兼ショールーム。
店頭に出された「日本の木材で作ったすのこベッド」の看板に引かれ店内へ。
1階と2階のショールームに、ベッド、掛布団、マット、枕などさまざまな睡眠グッズが並びます。
今回、寝具だけでなく、睡眠の専門家としても知られる岩田社長にお話を伺いました。
かつて京都の町には、各町内に1軒は布団屋があり、婚礼や子供の誕生などの祝い事、また日常的な綿の打ち直し、布団の仕立て直しなど、暮らしに欠かせない店のひとつでした。
しかし、時代が流れ、ライフスタイルの変化は、そんな町の布団屋さんに少なからず影響をもたらし、現在、その数は激減しています。
「その変化には、寝具の材質が、綿(わた)から化学繊維や羽毛などに代り、手入れをして使う人がいなくなったことが、理由のひとつです」と岩田社長。
確かに、家にある敷布団や掛布団を見ても、綿(わた)が使用されているものの数は極めて少なく、あっても来客用で、毎晩使うのは、軽い羽毛布団や化学繊維綿の敷布団かも…。
明治時代の初期まで綿花の栽培は、全国で盛んに行われていましたが、今は、一部の実験的な栽培以外は行われていません。また寝具関連製品は、アジアを中心に海外からの輸入品が多くを占めています。
「でも、日本製の生地は、とても良質なものが多いので、我が社では、独自の企画で寝具のカバー、シーツや枕カバー、寝具関連製品を製作しています」と。
ところで、良質の睡眠には何が一番大切なのでしょうか?
友人の中には、枕が合わず、次々試し、家に数個の枕をもっている人も…。
「多くの方が、枕を、まず問題にしますが、睡眠に大切なのは、どういうものに寝るか、つまり体の下に用いる敷布団やマットやそれを置く環境を整えることも大切です」と社長。
人は、ひと晩の睡眠中におよそコップ1杯の水分を放出。それを一番吸収するのが。敷き寝具だそう。
また高温多湿の日本の気候…寝苦しさの原因に、寝具の吸放湿性の悪さがあげられると。
「そこで、我が社では、ラクダ毛など天然毛を使った敷パッドやマットレスを提案しています」と。
ショールームの天井から下がる透明ケースに積み重ねられたさまざま天然素材、それらを圧縮してマットレスにするのだそう。
「え~こんな厚みが圧縮されるんですか?」と信じられない私。
「はい、そうです。天然素材ですから、通気性や湿度の調整も快適で、ほどよい硬さが、良質の睡眠へと導きます」と、微笑む岩田社長。
人間の睡眠には欠かせない寝返りもスムーズにできるマットレスです。
なんでも、イオンを発生させることで、不純物を徹底除去。同時に、発生したオゾンで、殺菌、漂白、脱臭も行い、素材そのものが備えた能力を最大限に発揮させているのだそう。
しかもかつての綿(わた)の布団のように仕立て直しやパーツの交換も可能。つまり、ずっと自分に合った状態で使い続けられるのです。
さて、さらに良質の睡眠のためには、ベッドの構造にも留意したいもの。
「以前、使っていたマットの表面に黒いカビが発生したんです。きっと内部はもっとカビがいると思い、慌てて買い換えました」と私の苦い経験をお話しました。
「それはベッドとマットの接地面に通気性がないと、湿度が籠り、よく起こる事です」と。
密閉性の高くなった現代の住まいは、湿気が高くなりがちで、体内から放出された湿気が、寝具にこもりやすい状態に…。
いくら通気性の高いマットレスを使用しても、ベッドの床面が空気の通らない状態だったり、フローリングの床への直置きだったりでは、通気性が十分確保されず、寝具に湿度が溜まり、それが寝苦しさにつながるそう。
「それを解決するのが、すのこ構造のベッドシリーズです。そもそも正倉院には、ヒノキの板張りの『御床(ごしょう・おんとこ)』と呼ばれる日本最古のベッドが所蔵されています。これは究極の眠りを求め、日本の四季を考慮したすのこ構造は、まさに先人の知恵。その技を再考し、北海道産の樺材や岐阜産のヒノキ材、岡山産の孟宗竹、長野産のカラマツなど天然素材で、通気性に優れたすのこ構造のベッドを作りました」と岩田社長。
そのフォルムは、実に端正。無垢材を贅沢に使用し良質感が漂います。その質感とデザイン性の高さは、モダンなベッドルームにマッチする姿です。
さらに、岩田社長のおすすめは、羽毛布団のアップグレードサービス。ここでは、家で使っている羽毛布団を、家庭で水洗いできるものに、作り替えてもらえます。長年使用し、薄くなったり、羽毛が外に出るようになったものなど、使いこんだ羽毛布団が、フワフワの本来の姿に蘇ると共に、以後、家で水洗いできるものに、アップグレードするもの。
古くなった寝具を蘇らせる…これは、昔の日本の寝具を大切にした思いに通じると共に、持続可能な社会の実現に向けた取り組みです。
四季の変化が激しい日本の風土…良質な睡眠のためには、その風土に沿った寝具が大切だと、改めて感じます。
「イワタ」の寝具は、京都本店のほかに、東京、大阪でも、実際に試すことが可能。
ぜひ、健康と美容のために、良質な睡眠を手に入れたいものです。
「株式会社イワタ 寝具御誂専門店IWATA 京都本店」
京都市中京区堺町通三条上ル
℡075-241-2332
営業時間 11:00~19:00
水曜、夏期・年末年始休み
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