「女の嫉妬はすごい」って、よく言うじゃない? 私もその昔は、女の嫉妬がいちばん怖いと思っておりました。でも、いろいろ見聞きするうちに、「いやいや、男の嫉妬ほど、根深いものはない」と思うようになりました。
特に男の場合、恐ろしいのは、仕事にまつわる嫉妬よね。「同期が自分より先に昇進した」とか、「同僚が仕事で手柄を立てた」という場合。
「いや、あいつは、仕事ができるように見えるけど、上司への取り入り方がすごいんだ」とか、「本当は他の人の手柄だったのに、あいつが横取りした」とか、飲み会なんかでディスりまくって、評判を落とすことに必死になってるの。
しみじみ思うに、酒の力ってすごいと言うか怖いと言うか…何かが麻痺して、ついね、願望と事実がごっちゃになってさも真実のようにペラペラと喋っちゃうのよね。しかも「そんな大事なこと、ここで話しても大丈夫?」ってことまでしゃべって、なんとか自分がマウントを取ろうとするのよね。人生かかってるのはわかるけど、それでもあの執念深さはすごい!横で聞いていて、女の嫉妬なんて、かわいいものだと思いましたよ。
それだけ男にとって、仕事は大事ってことよね。太古の昔は、競争に負けることは死を意味しただろうから、それがいまだにDNAに刻まれてるんじゃないかしら。
で、そのときに思ったのは、「嫉妬」という感情は、人間なら誰もが持っているマイナスの感情だけれど!それを上品な使うか下品に使うかは、自分で選ぶことができて、それによって人生は大きく変わるなってことでした。
上品に使うというのは、要するに相手を蹴落とすのではなくて、自分が伸びるためにうまく使うということ。諦めそうになった時、「もう一押し、頑張ろう」と思えるのは、競っている相手に負けたくないからで、自分の努力や成長に嫉妬を使うのは、上手な使い方だと思うのよね。
前も書いたけど、デビュー当時の私は萩尾望都さんの才能にちょっと嫉妬していました。悔し〜じゃなくって、いいなあ…羨ましいなあ、だったけどね。ちょっとノスタルジックな、あの文学的な香りのするゆったりと時が流れるような素敵な作風を、自分もぜひともマスターしたかった!!
したかったのよ!だけどね、残念ながら、私のストーリー展開の仕方って結構ポンポン早くって、文学的というよりは現代的という感じなのよね。
人は自分に無いものに憧れると言うとおり、はい認めます、自分には文学的な素養がございません。ほとんど無いものに対して無理やり頑張っても、ものすごくコスパが悪いじゃない?
コスパが悪いと考えるこの時点で、どう考えても私の感性は萩尾さんとは土俵が違うわと悟り、さっさと諦めて、ただの読者として彼女の作品を楽しむことにしました。
人が持っているものを欲しがらないで、自分が持っているものを育てようと、萩尾さんが絶対描けないものを描こうと頑張る中で、自然と嫉妬はチャラになったのよね。
嫉妬という感情エネルギーが大きいからこそ、それに振り回されず、自分でコントロールすることで、人生は大きく変わるはずですよ。
それにしてもまさか今頃、「一条はその昔、萩尾望都さんに嫉妬しておりました」なんて告白をするとは(^_^;)ねェ。
こんな話を彼女が聞いたらどう思うんだろ?なんて考えながら、春になる前にベランダと屋上の土を天地返して、肥料をすき込まねばと焦ってる一条でした。
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取材・文/佐藤裕美
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