フィンランドに惚れ込み、ユニット活動のkukkameri(クッカメリ)として2018年にトラベルガイドブックまで出版してしまった私、新谷麻佐子の田園ツーリズム紀行。今回は、「第4回 エストニアでの湿原でハイキング!」。 美しい自然に囲まれながら、おいしいケータリングもいただきました。
取材・文/新谷麻佐子
Profile
あらたに・あさこ●イラストレーター&編集者。2009年以降、毎年のようにフィンランドに通い、2014年にムーミンの作者トーベ・ヤンソンが暮らした島「クルーヴハル」に、友人でライターの内山さつきと1週間滞在したのをきっかけに、kukkameri(クッカメリ=フィンランド語で「花の海」の意) を結成。以後、フィンランドの小さな町や四季、暮らしと文化をテーマに取材を続けている。著書に『とっておきのフィンランド』(ダイヤモンド社)がある。http://kukkameri.com
フィンランドから足を延ばして
森と海の国・エストニアへ
前回ご紹介したウアヅィエナ領主館から、北へ車で2時間半。
ラトビアとエストニアの国境に到着です。
同じEU内なので、パスポートコントロールもなく、違う国に来たという実感が全くわいてきませんが、サービスエリアの売店で売られているお菓子や飲み物が、ガイドブックでよく目にするエストニアのものに変わっているのを見ると、なるほど、エストニアに来たんだなあと思うのでした。
そんなわけで、今回、私はラトビアからエストニアに入りましたが、日本から行く場合は、フィンランドから船で入国するのがおすすめ。ヘルシンキからフェリーで2時間で来られるのですから!
私も帰りはフェリーに乗ったのですが、それはもう楽ちんでした。
デッキに出て海風を感じながらのんびりすることもできますし、ショップでは免税品のお買い物もできます。レストランやファストフード店もあります。子連れ旅なら、子どものプレイルームもあるので、パパやママもストレスフリー!
フィンランドから足を延ばして訪れたい国として人気なのも納得です。
エストニアの国土の50%は森林で、国境の半分以上が海に面しているそう。
自然がすぐそばにあるため、エストニアの人たちはストレスがたまると海辺や森を散歩するといいます。
私も今回の田園ツーリズムの目玉のひとつとして、「エストニアのボグ・ハイキング」は、とても楽しみにしていました! ちなみに「ボグ(Bog)」とは、英語で「湿原」のこと。湿原の中を歩くなんて、どんな気分なんでしょう?
これまでフィンランド南部では、何度も森を歩いてきましたが、まだ湿原を見たことはありません。期待に胸を膨らませながら、初めてのボグ・ハイキングが始まりました。
松の木に覆われた森の中には
きれいな苔の絨毯が広がっていました
先ほどの国境から車を走らせること約30分。トルクセ(Tolkuse)湿原の入口に到着です。
ここは広大なルイテマー(Luitemaa)自然保護区内にあり、松の木に覆われた森と湿原を歩く、2.2kmほどのハイキングコースがあります。
こちらは、森に入ってすぐのところ。全体的に整備されていて、とてもきれいです。私のような森歩きに不慣れな外国人が来ても大丈夫そうな安心感があります。
今回、森と湿原を案内してくれたのは、ネイチャーガイドのマリカさん!
エストニアの最初の沼地は、約1万年前に形成されたそう。その後、集中的に形成されたのは、8500〜8000年前のことでした。
夏と秋は、バードウォッチングやベリー摘み、キノコ狩りが楽しめます。私が訪れた6月下旬は、ブルーベリーの実がつき始めていました。
ハイキングコースの途中に、18mの高さの展望台があり、森や湿原一帯を、さらには沿岸の牧草地や夏のリゾート地として有名なパルヌ湾を見下ろすことができます。
こんな風に!
空はこんなに青いのですが、実はこの日かなり強風で、展望台に上る間、高所恐怖症の私は、ずっと足が震えておりました。ですが「せっかく来たのだから損はしたくない!」という負けず嫌いなのか、貧乏性なのかよくわからない精神を持ちあわせているので(笑)、なんとか展望台に到着しました。
その甲斐あって、眺めは本当に素晴らしかったです! 手すりに寄りかかって覗き込む勇気はありませんでしたが、それでも360度どこを見ても自然が広がる景色は、それはもう見事でした。
展望台を下り、ハイキングコースに戻ります。森の奥へと進むと、こんな風に苔むした場所が現れてきました。
普通の森と少し様子が変わってきたと感じたのはこの辺りから。苔の隙間に見える水がキラキラしています。
ちなみに湿原は決して踏んではいけません! スポンジのような沼地にはめずらしい植物が多く、その貴重な生態系を壊さないようにするため。森林を管理するRMK(州森林管理センター)によって保護されています。
その背景には、ソ連の占領下時代に森林が大切にされてこなかったことがあり、独立後、保護の意識が高まったそうです。
森を抜けると、ついに湿原が現れます!
先へ先へとつながる木の板の道。この先に何が待っているのでしょう?
美食の国・エストニアのケータリングは
おしゃれで体にいいものばかり!
現れたのは、真っ青な空と、青い空を映した美しい水辺!
ここにたどり着いた瞬間に、声を漏らさずにはいられません。
「わあ〜すごい!!」「きゃーーーきれい!!」こういう時って、簡単な言葉しか出てきませんね(笑)。
ひとり旅だったら、ずっとここに座って、持ってきたサンドイッチを頬張って、水筒に入れてきたコーヒーを飲んで、寝転がって。それだけで幸せな時間を過ごせると思います。
でも今回は、旅の仲間たちがいまして、出迎えてくれたのは、こちらの美しい景色だけではありませんでした。
じゃーん!
それはこーんなにも美しいフィンガーフードが並んだケータリング! ハイキングというよりも、もはやおしゃれなパーティーです。エストニアでは、近頃このようなケータリングがはやっているのだそう。
クリスピーなパンにきのこのサラダをのせたオープンサンド、新じゃがにバルト海のニシンとうずらの卵をのせたもの、ヘラジカのコロッケ、魚のタルタルをのせた黒パンのオープンサンドなどなど。どれもとってもおいしかったです!
並べるだけで絵になるベリー。手前のオレンジ色のベリーは、クラウドベリーです。
ビタミンCとEが豊富に含まれているスーパーフード!
エストニア名物「カマ」のデザートもありました! カマは、炒ったライ麦・大麦・小麦・乾燥エンドウなどを混ぜた粉状のもの。食物繊維が豊富でとってもヘルシーです。ヨーグルトなど乳製品を加えて、ベリーのソースをかけていただきます。さらに、カマを使ったケーキやチョコレート、飴まであるそうです。
上記のケータリングからもわかるように、エストニアは美食の国。
今回、私は時間の都合で寄ることができませんでしたが、首都タリンには13~16世紀の街並みが残り、世界遺産にも認定されている旧市街と、モダンな建築物が並ぶエリアがあり、郷土料理はもちろん、新鮮な魚介類に、オーガニック野菜など、おしゃれで雰囲気のいいレストランがそろっているそう。
しかも、とても洗練されていておいしいのに、他のヨーロッパの大都市やお隣のヘルシンキと比べると、びっくりするほどお財布に優しいお値段なのですって! 次回はゆっくりタリンも訪れなくては!
タリンで美味しいものを食べ、田園エリアに足を延ばし、国立公園で心身ともにリラックス。日頃、頑張っている女性にぴったりな旅のプランです。
(次回はフィンランド、ラトビア、エストニアで見つけたかわいいものをご紹介します)
取材協力:CAITOプロジェクト(田園ツーリズムプロジェクト)https://balticsea.countryholidays.info/