多忙な仕事や、人間関係、お金のことなど、私たちは誰もがつねに何かしらのストレスを抱えています。最近、そんなストレスが複数重なると、命に危険を及ぼす"キラーストレス"になる可能性があることが判明!
そこで覚えておきたいのが、ストレスから上手に距離を置けるようになるメソッド。近年研究が進み、ストレスへの効果が科学的に実証されたメソッドも。こんなストレス解消法を賢く取り入れて、キラーストレスに負けない体をつくりましょう!
現代人の多忙な生活が
キラーストレスの元に!
仕事に忙殺されたり、スマホやパソコンを深夜まで見続けて睡眠不足に陥ったりと、ストレスになりうる要因でいっぱいの現代。2015年12月には、労働安全衛生法に基づき、職場でのストレスチェック制度も義務化されたりと、今やストレスは深刻な問題になっています。そんな中、今特に問題視されているのが、命にも危険を及ぼす「キラーストレス」。そこで順天堂大学医学部の小林弘幸先生に、ストレスが体を蝕む仕組みを伺いました。
小林弘幸 さん
Hiroyuki Kobayashi
1960年生まれ。順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。腸のスペシャリスト、自律神経研究の第一人者として人気。『聞くだけで自律神経が整うCDブック』(アスコム)など、著書は軒並みベストセラーに
ストレスがかかると
脳の扁桃体が反応して
ストレスホルモンが分泌
「体や心にストレスがかかると、まず脳の扁桃体という部分が反応します。すると扁桃体から副腎という部分に指令が送られ、コルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。このコルチゾールには、心拍数を増やしたり、血液を固まりやすくしたり、血糖値を上げたり、免疫機能を下げたりといった作用があります。また、扁桃体の指令は自律神経にも送られて交感神経を優位にし、それによってアドレナリンが分泌されます。すると血管が収縮して、血圧が上昇し、血流が悪くなります。これがストレス反応です」
この反応は、ちょっとしたストレスがかかったときなら、すぐに収まりますが、危険なのは複数のストレスがかかったときだそう。
「同時に複数のストレスがかかり、一定の許容量を超えると、ストレス反応が暴走し、コルチゾールが分泌され続けて、交感神経は優位になりっぱなしになります。そして血流障害によって血管が詰まると心筋梗塞や脳梗塞に、血糖値が上がり続けると糖尿病に、というように命にかかわる病気を引き起こすのです。さらに、ストレスで交感神経が優位になると、免疫細胞の代表であるNK細胞の働きが弱まるうえ、体内の活性酸素も増え、がんにもなりやすくなります。このようにストレスは放っておくと非常に危ないのです」
ストレスの自覚がない人ほど要注意? くわしくは次のページで。
ストレスがかかっている
自覚がない人ほど要注意!
"自分はそれほどストレスはないわ"と思っている人も多いかもしれませんが、実はそれが最も危険だとか。
「身内の死や離婚、病気などといった大きな出来事によるストレスは自覚があると思いますが、例えばちょっとした習慣の変化や長期休暇など、悪くないことでもストレスになり得て、この場合、自覚がないことも。実際には複数のストレスがかかっているのに自覚がないとある日突然、重篤な病気になることもあるから怖いのです」
そこで次回に紹介するチェックテストで、自分のストレス度をチェックしてみましょう。たくさん当てはまった人ほどキラーストレスの危険が。大切なのは、キラーストレスにならないよう、ストレスを感じたときに心身をリセットできる方法を用意しておくことです。
「ストレスがかかったとき、深呼吸をするだけでも交感神経の活性化を抑えられます。また、自律神経は腸と深くかかわっているので、腸内環境を整えるだけでも自律神経が整い、ストレスの暴走を抑えられます。自分に合った方法でストレスに対処しましょう」
次回以降に紹介する最新のキラーストレス対策術もお試しあれ!
次回はストレス度を調べるチェックテストをご紹介します。
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/木下 優(ロッセット) スタイリスト/井川翔子
モデル/栗本奈央 イラスト/内藤しなこ 取材・原文/和田美穂