霧島連山に囲まれた盆地の都城市。寒暖の差があり、石灰岩を多く含む地層で農作物が美味しく育ちます。牛・豚・鶏を飼育し、きれいな水があることで焼酎の蔵元があり、お茶の栽培も江戸時代から行われている、まさに自給自足の美食の地なのです。
朝羽田空港を出発し、宮崎ブーゲンビリア空港から直行したのは、都城市山之口町。お目当ては築120年の旧家のお屋敷で、明治・大正時代の食器を使い地産地消にこだわった創作和食料理がいただける「お食事処 まえだ」です。
2,000坪にもわたる敷地内には畑、田んぼもあり、お肉以外は全て敷地内で収穫された食材でまかなっているそうです。
40畳ほどのお座敷でお昼のコースがスタートです。
明治時代の職人の手による輪島塗の漆器で供されるお膳には、朝どれ卵、菜の花のおひたしや里芋のグラタン、蕪の赤酢漬けなど、都城の春をつげる食材ばかり。
100年前の手描きのお皿に盛られた宮崎牛のステーキ。
こちらは通年のメニューです。
程よくのった脂はほのかな甘みがあり、自然の中でのびのびと育ったことがわかります。
おめでたい席に欠かせないちらし寿司や、採れたて野菜のサラダや天ぷら、昆布・花鰹の上品な出汁のお吸い物、都城名産の金柑を使ったゼリー。
コーヒーカップは大正時代に長崎で生産され、多くはアメリカに輸出されたそうです。
都城の地の恵みと歴史を満喫できるお食事にあわせたのは、同じく都城にある四軒の蔵元の焼酎。
絶品の焼酎は次のページ!
左から大浦酒造「優咲」、霧島酒造「霧島」、都城酒造「麦全麹仕込み」、柳田酒造「駒」と、個性豊かなラインナップです。
自家農園からお料理まで全て切り盛りされているのは、前田家16代当主の奥様美穂子さん。はつらつとした雰囲気で、お出かけ女史組世代の先輩だとうかがい、びっくり。風光明媚な土地で自然と共存する生活を送っていると、いつまでも美しく元気でいられるのだと実感しました。
次に向かったのは、南鷹尾町の「日向時間」 。カフェを併設した日本茶専門店です。正面の扉を開けると、香炉でたいた茶葉の癒される香りがお出迎え。
ショップでは、茶葉以外にもお茶に関連する道具類、茶葉をつかったスウィーツなどが揃っています。
東京へのお土産は、オーナーがご両親をイメージしてつくった深蒸し茶「よかおごじょ」と煎茶「よかにせ」を。
日本茶の美味しさをきちんと味わえるよう、カフェでの最初の一杯はオーナーの坂元寛之さんがテーブルでお茶を淹れてくれます。ポットからお湯をお茶碗、片口へと移し適温にして、急須に注ぎます。お茶を抽出している時に急須を揺らすと苦味がでてしまうなど留意したいポイントの解説付きです。
お茶にあわせて京生菓子の「春のプレート」を。京都で修行して地元に戻った菓子職人にイメージを伝えてつくってもらったのだそうです。左から時計回りに、よもぎ団子、桜もよう、春うらら、うぐいす餅、お花見ようかん。パステル調の美しい色彩が春の柔らかい陽射しに映えます。
日本茶をいただけるカフェが増えてきましたが、お茶を淹れるプロセスまで楽しめるお店は初体験。専門家が淹れたお茶のおかげでお菓子もより一層美味しくいただけます。
「お茶を楽しむ教室」、「みんなの都城茶をつくる会」などお茶に関するさまざまな地域活動にも意欲的に取り組んでいる坂元さん。お茶問屋で育ったオーナーが、日本茶の美味しさと可能性を広めていきたいという意気込みが、強く感じられました。
都城の地産地消の美食は他にもたくさん。次回は「日本一の肉」と蔵元について紹介します。