京都駅の北側、油小路通沿いに歴史を感じさせる商家があります。天保6年(1835)創業の油屋「西川油店」です。創業当時は、製造から小売まで幅広く手掛け、大正8年に卸と小売に専念。現在、京都の町にある数少ない油専門店なのです。
まるで明治時代にタイムスリップしたような店構え。そして店内は、かつて活躍した油づくりの用具をはじめ、商いに使用された品々が展示され、まるで民具博物館のよう。
そして店の中央の棚には、レトロなデザインのラベルが貼られたゴマ油やなたね油などが並びます。
現在7代目となる店主の奥様、西川富久子さん。穏やかな笑顔と京言葉でお店や油のことをお話してくださいました。
そもそも昔は、なたね油は大変貴重で高価なもので、食用油より照明に使われる灯明油としての需要が中心だったそう。
当時の人達は、灯明やあんどん、ランプなどの油を、量り売りで購入し、陶器の瓶などに入れて持ち帰ったのです。灯明の油は、個人だけでなく、本願寺をはじめとする大きな寺院にも納められました。今も京都各所の寺院とのお付き合いが続きます。
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かつては、手作業で絞った なたね油は、今や機械化が進み安価で大量に作れるようになりました。しかし、ここで扱う油は手間を掛けて作られているものだそう。特にごま油は、風味豊かで「純正胡麻油 350g 600円」「うす口純正胡麻油 140g 400円」「太白純正胡麻油 140g 400円」など種類も揃い、それぞれ料理の味わいを引き出すものとして根強いファンを持っています。
「今は昔の道具で製造はしていませんが、使っていた道具などはうちでは大切にし、店に展示することにしたんです」と西川さん。美術工芸品などは次の世代に受け継がれますが、民具は使われなくなると廃棄される場合がほとんど。油づくりの歴史を物語る品々は、今や貴重な歴史的資料となっています。
「このラベル素敵ですね~」というと「これ、昔とはちょっとデザインちごうてます。横書きの文字が、昔は右からやったんですよ(笑)」。でも雰囲気は昔のまま、なんとも素敵なラベルです。
今やお中元やお歳暮にもあまり使われなくなった油ですが、ここの箱詰めの贈答品は、とても洒落たものになりそう。京都駅から徒歩10分ほどの距離。京都を離れる前に買いに来るお馴染みさんも…。ぜひ、立ち寄りたい、京都ならではのお店です。
西川油店
京都市下京区油小路七条下ル油小路町294
075‐343‐0733
営業時間 9:00~18:00 無休
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」