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ウィーン一人旅 :後編 郊外観光と音楽鑑賞のコツ

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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ウィーン一人旅

後編 郊外観光と音楽鑑賞のコツ

 

寺社部長の吉田さらさです。

前編に引き続き、ウィーンを1人で旅するための情報をお届けします。

後編は、ウィーン中心部から少し離れたところにあるお勧めスポットと、オペラやコンサートの鑑賞する場合の基礎知識です。

 

郊外のお勧めスポット

その1 シェーンブルン宮殿

郊外と言っても、地下鉄で15分もあれば行けます。

こちらの定番の見どころは、宮殿内の豪華なお部屋、宮殿の前に広がる巨大な庭園、そのはるか向こうに聳えるグロリエッテ(軍事的な記念碑。パリで言う凱旋門みたいなもの)です。あまりにも敷地が広いため、すべて見て歩こうと思えばかなりな体力と時間が必要です。

宮殿内は以前に来た時も見たので、短時間でざっと済ませ、今回は敷地内にある動物園をメインにいたしました。なぜウィーンまで来て動物園なのかというと、その真ん中にあるカイザーパヴィリオンというカフェレストランに行ってみたかったから。こちらは、かのマリア・テレジアとその夫、フランツ1世が、動物を眺めながら朝食を召し上がったという由緒あるお店なのです。

なるほど、店内の雰囲気はなかなかのものですが、お食事メニューは、まあ普通かな。こちらは、チキンのキノコクリームソース、パスタ添えでございます。

動物園そのものも、動物の見せ方にいろいろ工夫があってなかなか面白いです。

こちらはグロリエッテ。宮殿から庭園を突っ切り、急な坂道を2~30分登ったところにあります。

ここまで來るのにはかなり体力を消耗しますが、宮殿と街の眺めが素晴らしいです。

建物内にはカフェもあり、ウィーンらしい甘ーいケーキがいただけます。こちらは、シシィタルト。

 

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その2 ドナウ運河クルーズ

ドナウ川のクルーズと言えば、バッハウ渓谷沿いにある古城や修道院を巡るコースが有名ですが、そちらは丸一日かかります。もっとお手軽に楽しめるのが、ウィーン中心部の北側を流れるドナウ運河のクルーズです。

ビル街や岸壁に描かれた落書きアートを眺めながら、のんびり水上散歩。途中下船もできますが、全行程は3時間半ほど。「美しき青きドナウ」のメロディもどこかから聞こえてきますが、ここは都会の中の運河。

やがて船はドナウ運河からドナウ川本流に入ります。運河と本流は水位が違うので、この水門で調節して船を通します。

このあたりまで来ると、このような「青きドナウ」のイメージに近い風景も見られます。やがて船は、再び水門を通り、ドナウ運河に戻ります。

しばらく行くと、不思議な煙突のある建物が見えてまいります。これは、「ウィーン一人旅」の前編でもご紹介した芸術家、フンダートヴァッサーの設計によるゴミ焼却場です。他に類を見ないユニークな建物ですね。フンダートヴァッサー氏は、俳句にも造詣が深い親日家で、大阪にも、このような形のゴミ焼却場を建てました。

 

 

その3 ヨーロッパ最大の地底湖と悲劇の舞台マイヤーリンク

こちらはウィーン中心部から少し離れており、公共の交通機関で行くのは少し難しいため、現地発のツアーに参加しました。こうしたツアーは、事前にネットで申し込むこともできます。英語によるガイドで世界中の人が対象のものと、日本語による日本人対象のものがあり、前者の方が値段が安いけれど、トラブルが起きた時の対処が面倒なので要注意。わたしは今回は、後者の日本語ガイドのツアーを選びました。

ヨーロッパ最大の地底湖「ゼーグロッテ」は、車で入り口まで行き、少し歩いて地底に降ります。そこでボートに乗り、地底湖の神秘的な眺めを楽しみます。自然の湖ではなく、石灰の鉱山跡に水が流れ込んでできたものだとか。

ハイリゲンクロイツ修道院にも立ち寄ります。こちらは厳格な修行規律で知られるシトー派の修道院です。

マイヤーリンクは、フランツヨーゼフ1世と皇后エリザベート(通称シシィ)の息子であるルドルフ皇太子が男爵令嬢のマリーと心中したところです。この事件はあまりにもセンセーショナルでミステリアスだったため、いろいろな部分が謎のまま残されているようです。周囲に広がる緑豊かな風景も魅力的。ウィーンの人々にとって、このあたりは憧れの別荘地なんだとか。

 

次ページに続きます。

さて、昼間はいろいろなところにお出かけし、夜はオペラかコンサート。

しかしながら、オペラは、「気が向いたらふらりと出かける」というわけにはいきません。ウィーン国立歌劇場の公演は、近年では早々と完売になる日が多いようなので、やはり、日本にいるうちにチケットを入手しておく方がいいです。方法は2つ。業者に依頼するか、ネットで自分で予約するか。前者の場合は、言葉の心配もなく入手できますが、手数料が必要。ネット予約は慣れればそう難しくないので、はじめての方も、ぜひチャレンジしてみてください。

まずは、ウィーン国立歌劇場の公式サイトを開いて、公演カレンダーを調べます。自分が行く予定の日にどんな演目の公演があるのか、出演する歌手、指揮者の名前などをチェック。わたしは今回、「サムソンとデリラ」、「椿姫」、「リゴレット」の三つの演目のチケットを入手。いずれも大スターが出演するためか、当日行ってみると、立ち見を含めてすべて満席でした。

 

チケットは、二か月前から発売になりますが、発売前から予約(リクエスト)も入れられます。歌劇場の公式サイトからチケットを購入する場合も、最終的にはCulturallという別のサイトから購入することになりますが、ここでは手数料は必要ありません。日本語の説明もありますが、かなりわかりにくいので、英語の説明も併せて読むことをお勧めします。

行く日が決まったら予約を入れ、クレジットカード情報を打ち込みます。何日かすると、「チケットが確保できたので、カードで決済をしました」というメールが届きます。それに引き換え用の書類が添付されているので、プリントアウトしておきます。ウイーンで歌劇場近くのボックスオフィスに持っていき、チケットと引き換えます。公演の三週間前なら、チケットそのものをプリントアウトすることも可能です。なお、リクエストしても、人気が高い公演だとチケットが確保できない場合もあります。ちなみに、世界中で大人気のテノール、ヨナス・カウフマン出演の日は、発売日よりはるか以前に予約で満席になっていました。

 

予約の際に、希望する座席の値段とエリアを指定しておくことも大切です。あくまで好みと予算次第ですが、わたしは平土間よりも上のボックス席の方が見やすいと感じました。ただし、ボックス席の場合、お勧めできるのは1列目だけです。2列目、3列目になってしまうと、舞台がよく見えません。

Culturallでは、国立歌劇場だけでなく、オペレッタ劇場のフォルクス・オーパ、ミュージカル、各種演劇など、さまざまなチケットを予約できます。人気の高い王宮礼拝堂のミサ(ウィーン少年合唱団が歌う)のチケットも買えます。ミサは毎週日曜日の午前中に行われます。コンサートではなく宗教的な儀式なので、座席数は多くありません。また、合唱団は祭壇に向かって後方の最上階にいますので、上階前方のボックス席最前列でないと、歌っている姿は見えません。しかし、最後に祭壇前のステージのようなところに降りてきて歌ってくれるので、その時だけは多くの席から見ることができます。

 

ウィーン国立歌劇場と並ぶクラシック音楽好きの聖地は、楽友協会の黄金のホール。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートでおなじみですね。そちらのチケットはたいへん高額でなかなか入手できませんが、通常のコンサートのチケットなら、楽友協会の公式サイトで簡単に買えます。こちらはカレンダーで公演をチェックし、席を選んでクレジット決済し、チケットをプリントアウトして持って行くだけです。わたしは今回の旅では、超絶技巧とセクシードレスで有名なピアニスト、ユジャ・ワンのリサイタルに行きました。熱気に満ちた演奏で、ブラボーの嵐でした。

そこまでクラシック音楽には詳しくないが、ちょっとだけ聴いてみたいという場合には、観光客向けの気軽なコンサートがお勧めです。演奏のレベルは、正直なところ、それほど高いとは言えませんが、モーツアルトなどのよく知っている曲を聴かせてくれるし、教会や王宮、お城などの歴史的な場所で行われるので、雰囲気もよいです。チケットの販売所はあちこちにありますし、観光地でよく見かけるモーツアルト風の扮装をしたお兄さんから購入することもできます。歌劇場近辺を歩いていると、今日のオペラのチケットがあるけどどうですか?と言われることも。これは本物ではあってもあまりよい座席ではないことが多いと思うので、見せてもらって、日にちや値段をよく確認の上、購入するかどうかを決めてください。

 

以上、わたしなりのウィーンの楽しみ方情報を、2回に渡ってお届けしました。ウィーンは女性の一人旅に優しい街なので、それぞれのお好みにしたがって、街歩きと芸術鑑賞をお楽しみください。

 

 

吉田さらさ

公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

個人Facebook

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