西陣の織屋さんの町家が連なる「千両ヶ辻」は、かつて1日の商いが千両にも及んだという西陣の中心地。今も、大宮通沿いは、当時の面影を留める商家が軒を連ねる情緒あるエリアです。その通りの散策の途中、ぜひ訪れたいのが、パンケーキ専門店の「カフェ・ラインベック」。白い暖簾が下がる風情ある町家です。
このお店をプロデュースなさるのは、中京区の高倉通御池と東京、代官山に「松之助」というアメリカンスタイルのアップルパイやスーツ、パンケーキなどの人気カフェをなさっているアメリカンスイーツの料理家、平野顕子さん。
そもそも平野さんは、京都、西陣育ち。ご実家は、能装束の織元をなさっていたそう。そしてアメリカ留学をなさり、その時、料理研究家のシャロル・ジーンさんと知り合い、17世紀から伝わるアメリカ北東部ニューイングランド地方の伝統的なお菓子の、素朴で素材を大切にする美味しさにすっかり魅了され、その作り方を学ぶことに。帰国後、そのやさしい温もりあふれるお菓子を、数々の料理本の出版やお菓子教室、そしてお店のオープンなどを通じ、日本に紹介なさっています。まさに日本におけるパンケーキブームの先駆け的存在といえます。
ご実家の屋号に因む、京都の御池通の「松之助」を本店に、子供の頃から馴染んだ西陣に築100年という町家を改装した「カフェ・ラインベック」を開業されたのは、8年前のこと。以来、落ち着いた雰囲気の中で、本格的なパンケーキが味わえる店として高い人気を誇ります。
注文してから、店の厨房で1枚ずつ丁寧に焼き上げるパンケーキ。伝統的なアメリカンパンケーキにふさわしく、アンティーク調の落ち着いた雰囲気の店内には、焼き立ての香ばしさが漂い、なんとも寛いだ気分に…。まるでコロンとして円盤のような姿も可愛らしく、フワフワの口どけに、思わず笑みがこぼれます。
その美味しさは、なんと朝8時から味わえます。実は京都は、朝食の美味しい店が多いのも観光客には嬉しいところで、ここでもモーニングパンケーキが味わえるのです。
メイプルシロップを添えたシンプルなパンケーキから、ソーセージや目玉焼きを添えたモーニングパンケーキ。また、特に人気なのが「リコッタパンケーキ」(1000円)で、生地がチーズを包み込むように焼かれ、ストレートにチーズの風味や美味しさが伝わってきます。甘いパンケーキが苦手という男性にも評判で、モーニングを楽しみに訪れるご夫婦の姿も目立ちます。
どのパンケーキにも添えられているメイプルシロップは、もちろん自家製。風味豊かなシロップで、ひと口ずつ付けて食べるのがおすすめだそう。なるほど、甘さの調節ができ、パンケーキ自体の美味しさがいっそう感じられる食べ方です。
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昼間は、旅の途中のカフェとして賑わう「カフェ・ラインベック」。バナナとチョコレートソースのパンケーキは、人気の定番のひとつです。朝も注文できます。
そして秋の楽しみは、たっぷりリンゴが入った伝統的アメリカンスタイルのアップルパイ。この時期は、紅玉のリンゴを使ったものが登場。甘酸っぱい紅玉らしい美味しさは、根強い人気を誇ります。
店のある西陣の大宮通は、歴史を誇る織元が軒を連ねるエリア。一般に販売をしている店もあり、そぞろ歩きしながら、お気に入りの品などに出会えることも。また、春や秋には、「千両ヶ辻伝統文化祭」を、町を挙げて開催。町家を公開し、春はその家に伝わる立派な雛人形などを拝見できる雛祭りが評判になっています。
古き趣を残す西陣の中心地。そこで味わう本場のアメリカンパンケーキの美味しさは、素敵な旅の思い出に…。この秋、京都の旅に、ぜひ立ち寄りたい大人好みのカフェです。
カフェ・ラインベック
京都市上京区大宮通中立売上ル石薬師町692
075‐451-1208 火曜休み 営業時間:8:00~17:30LO
http://www.matsunosukepie.com/shops/shops.html
小原誉子ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」
http://blog.goo.ne.jp/mimoron/