京都屈指の観光名所、嵯峨嵐山。古来、風雅を好む都人が時を過ごした文化薫る場所としても知られます。紅葉の時期ともなれば、大堰川沿いの山々は、錦秋に彩られ、その美しさは、今も多くの人を魅了してやみません。
この秋、そんな嵯峨嵐山を訪れる、新たな楽しみができました。2019年10月1日、渡月橋に程近い大堰川沿いに私設ミュージアム「福田美術館」の開館です。
この美術館のオーナーは、金融会社「アイフル」の福田吉孝社長。京都で生まれ育った福田社長は、以前から、地元、京都への恩返しを…という思いを抱かれていたそう。そこで江戸から近代まで、京都ゆかりの日本画家の作品を中心に収集され、約1500点を収蔵。それらを、今後、美術館を通じ、一般に公開してゆくことになりました。
開館記念として開催される「福美コレクション展」は、2020年1月13日まで、会期を2回に分け、ほぼ完全入れ替えで、珠玉の約80点の作品が公開されます。
尾形光琳、円山応挙、伊藤若冲、上村松園、横山大観をはじめ、日本画の名だたる画家の今まで見たことがない作品にも出会える展示は、感激もひとしお。「2回とも行かないと…」と思わずにはいられない展示です。
作品が見やすい、ゆったりとした展示スペース。
スマホで聞ける無料の音声ガイドを耳に、次々に作品を巡ります。世界最先端の照明システムと、ドイツのグラスバウハーン社に特注した高透過ガラスを採用した展示室は、画家たちの巧みな筆運びなども、間近に感じることができます。
次々に現れる大作にただただ感動。
初公開の橋本関雪作「後醍醐帝」の大作
伊藤若冲作「群鶏図押絵貼屏風」
横山大観作「富士図」
葛飾北斎作「端午の節句図」
葛飾北斎85歳の作品「端午の節句図」では、その細かい筆運びに「本当に85歳?こんな緻密な絵を老眼鏡なしで描けるってすごい!」と変なことに驚いたり…。ひとつひとつの作品に、思わず見入ってしまいます。
この美術館の設計は、東京工業大学教授で建築家の安田幸一さんが担当。
周囲の景色と調和する「和」の趣を湛えるモダンな建物で、展示室を結ぶ空間は一面ガラスがはめ込まれ、やさしい陽光と共に、川と山の景色が望める開放的な雰囲気。紅葉の眺めの美しさも期待できます。
美術館の一角にあるミュージアムショップには、オリジナルの品々もいろいろ。日本画を使ったパッケージデザインのチョコレートなど、おみやげにふさわしい品も人気が出そう。
そして美術館の建物で、最も景色がいい場所が、カフェスペース。渡月橋の姿も見える大堰川、木々が茂る山の景色が、パノラマのように目の前に広がり、訪れる人々からは「こんな素晴らしい景色が見えるとは…」と思わず声が漏れるほど。「おそらく嵐山で最も眺めがいいカフェかも…」と、隣りのグループが話していました。ケーキセットや京の食材を使った軽食を味わいつつ過ごす時間は、嵐山の美しさを再認識させるもの。紅葉の時期にも、ぜひ訪れたいと思ってしまいます。
ところで、この美術館の館長を務める川畑光佐さんは、オーナーの福田社長のお嬢様。ご結婚され、ママとなった時に、この美術館建設の構想が具体化します。京都への思いは、お父様同様強く、この美術館の仕事に関わりたいと、学芸員の資格を取得。初代館長を務めることに。
「館内の作品は、一部を除き、写真撮影可能です。どうぞSNSで、日本の美を拡散して、多くの外国の方にも見て頂けたら嬉しいです」と。すでに海外の美術館や博物館では当たり前のSNSのための撮影も、日本では撮影不可のところが多いのが現状。新しい美術館が積極的にSNSを使い、その魅力を世界中に伝えるのは、とても大切なことのように思えます。特に外国人観光客にとって、SNSの情報は魅力的。「開かれた美術館」の姿は、京都の美術館や博物館にも刺激を与えることが期待されます。
初公開や幻のコレクションが楽しめる「福田美術館」。この秋、ぜひ訪れてはいかがでしょう。
尚、紅葉時期の嵐山へのアクセスは、電車がおすすめ。JR山陰本線、阪急嵐山線、京福嵐電があり、運行時間も正確なので安心です。市バスは、道路自体が渋滞し、かなり時間がかかると共に、車内は満員状態になるため、京都に暮らす私は、利用を避けています。ご参考までに…
福田美術館
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
☎075‐863‐0606
開館時間10:00~17:00 (入館は16:30までに)
休館日:火曜(祝日の場合は翌日休館)。展示替え期間、年末年始
入館料 大人1,300円 高校700円 小・中学生400円 無料音声ガイド有。
小原誉子ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」