おうちで楽しむ、京の味と物
「京都旅はまだしばらくお預け」と、慎重派のみなさんに、おうちにいながら京都気分に浸れる、『おうちで楽しむ 京の味と物』をご紹介中。インターネットや電話などで、全国どこからでも注文できる品々です。
第20回
歴史ある店で選ぶ京の美
口元をさりげなく覆うおしゃれな京扇子 「宮脇賣扇庵」
今回ご紹介するのは、六角通と富小路通の角にある文政6年(1823)創業の京扇子の老舗「宮脇賣扇庵」。まるでタイプトリップしたような京都の歴史ある店構えが、訪れる人を魅了します。
奥に進むと、そこには広々としたスペースのテーブルには、たくさんの扇子が並んでいます。あまりの種類の多さに迷う私は、お店の広報ご担当の中川さんに、希望を伝え、いくつか選んでいただくことに…。
まず洋服に似合うものとして、無地の扇子を見せてくださいました。
柿渋で表面加工された扇子は、艶やかな表情の中に落ち着いた趣を漂わすもの。
また、白地に小さな模様を扇面に散りばめたデザインの扇子も、軽やかな雰囲気で洋服にもマッチするそう。
和装小物として日本の暮らしに定着した扇子には、男物(八寸=24㎝)と女物(六寸五分=20㎝)がありますが、最近は、持つ人の好みで選ばれるそう。私も選ぶなら大きなサイズがいいかと…。
和紙と真竹で作られる伝統的な京扇子ですが、洋装向けに薄い絹麻布やレース生地を扇面に貼ったものもあり、涼しげな透け感が女性に人気です。
さて、コロナ禍の今、マスク着用は必須ですが、久しぶりに友人と会い喫茶店に入る時、ケーキも食べるし、お茶も飲むし、もちろんおしゃべりも…ずっとマスクを着用しているわけにはいきません。おしゃべりをするときも、マスクを着用するのが理想でしょうが…。そんな時、友人は、扇子を出して、さりげなく口元を覆いおしゃべりを続行…。「まるでヨーロッパの貴婦人みたいね~」というと、「そうでしょ!」とニッコリ。ウィルス対策にはならないでしょうが、飛沫の拡散には、多少なりとも効果がありそう。扇子をずらすだけで、お茶も飲めるし…これはなかなか使えそう。さっそくマネすることに…。おしゃべりを楽しむ時の心遣いを感じさせる扇子です。
店に並ぶ扇子は、オンラインショップでも購入可能。お気に入りの扇子をぜひ見つけてはいかがでしょう。
ところで、秋、京都への旅を楽しむ予定がある人は、ぜひ「宮脇賣扇堂」2階へもぜひ足を運んでください。そこには、四季折々の風情を描いた飾り扇や雅な舞扇などが並んでいる雅なフロアなのです。
美しい扇を鑑賞しつつ見逃せないのが、店内の装飾…明治時代、京都画壇で活躍した富岡鉄斎、竹内栖鳳ら48人の画伯の描いた天井画、そして川合玉堂など東都画壇による季節絵扇面画を壁面に見ることができ、まるで美術館のよう。
さらに扇をモチーフにした照明や衝立など、店内各所に散りばめられた装飾を見て回るのも楽しみに…。
そこで見つけたのが愛らしい絵が描かれた金色に輝く飾り扇です。
「末広がりを象徴する扇は、昔から家に福を呼び込む吉祥の品として飾られてきました」と中川さん。京都では、慶事の折に記念品としても使われる扇。お正月向けの飾り扇もいろいろあるそう。
来年がいい年になるように、心和む吉祥の飾り扇を家に置きたくなります。
宮脇賣扇庵
京都市中京区六角通富小路大黒町80-3
☎075-221-0181
10:00~18:00 無休
小原誉子のブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」