こんにちは。寺社部長の?田さらさです。
芸術の秋を迎え、ますます美術館、博物館巡りに力を入れています。今回ご紹介するのは、東京国立博物館内の表慶館で開催中の特別展「工藝2020-自然と美のかたち-」<~2020年11月15日(日)>です。
本展は、政府が日本文化を発信する祭典「日本博」と、日本の美を未来へ伝え、世界へ発信していく事業「紡ぐプロジェクト」の一環として企画された展覧会です。
わが国では古くから工芸が盛んですが、古い時代のものを見ることは多くても、現代の作品をまとめて見ることがあまりなかったため、貴重な機会となりました。
東京国立博物館での特別展は平成館で行われることが多く、表慶館は、特別展やイベントがあるとき以外は休館しているので、今回は、この素敵な建物に入るチャンスでもあります。大正天皇のご成婚を記念して計画され、明治42年(1909)に開館した、日本ではじめての本格的な美術館です。明治末期の洋風建築を代表する建物として昭和53年(1978)、重要文化財に指定されました。
中央と左右に美しいドーム屋根があり、見上げると、一番上の外壁面に製図用具、工具、楽器などをモチーフにしたレリーフがあります。
この展覧会は、日本博の総合テーマである「日本人の自然観」に基づき、重要無形文化財保持者(人間国宝)や日本藝術院会員から中堅、若手まで、82人の工芸作家の作品が集められています。
会場構成を手掛けたのは、世界的な建築家の伊東豊雄さん。西洋風の建築様式の会場で、日本の工芸作品をどう展示するか?日本の建築では、床の間などの上に漆の台などを置き、その上に工芸品を置くことが多いので、それに近づけるため、床が盛り上がるような展示台にされたのだそうです。漆の台に作品が映りこむ様子をイメージし、展示台の表面にはアクリル板が置かれています。確かに、作品が映り込んでおり、また、作品の裏側に反射があるように見えます。これは、そのアクリル板に、藍色のような日本固有の色の特殊な印刷が施されているためだそうです。
工芸品の展覧会というと、陶磁、染織、漆工など、素材や技法ごとに展示されるのが一般的でしょうが、今回の展示は、それとはまったく違い、作品が持つ色のイメージによって章が分かれています。こちらは、金と銀の作品を中心とした第1章「金は永遠に光り輝き、銀は高貴さに輝く」の展示風景です。さまざまな技法の作品が並んでいますが、質感だけを見ていると、金工も漆工も同じような光を放っており、材質の区別がつきません。すごい技術です。
こちらは、第2章「黒はすべての色を吸収し、白はすべての光を發する」の展示風景です。美しい絣の着物が目を引きます。この着物の黒は、確かにすべての色を内包しているように思います。
第3章「生命の赤、自然の気」の展示。日本の伝統的赤色は、絵の具の赤ではなく、ベンガラの赤に似ています。より自然に近い色なんですね。
こちらは第4章「水の青は時空を超え、樹々と山々の緑は生命を息吹く」。透明感のある青磁の器とガラスの器が美しい。
工芸品はもともと、何らかの用途があるものだったのでしょうが、現代の工藝は、もはや用途を超えたアート作品です。技法や素材も伝統的なものだけにこだわらず、さまざまな分野を縦断しています。ひとつひとつの作品に、唯一無二の個性がある。そんな展覧会でした。
特別展「工藝2020-自然と美のかたち-」の公式サイトはこちらです。
他の展覧会と同じように、こちらも、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、日時指定の予約が必要です。マスクの着用、入館時の手指の消毒、検温などの対策を万全にして鑑賞を楽しみましょう。
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