芸術の秋です。
コロナの影響で色々な面で今までの価値観が変わってきました。
1年前までは使い捨てが当たり前だったマスクを手作りしたり、洗ってまた使ったりと、物を大切に思う、本来の日本人らしさが蘇ってきたように感じます。
今回は、そんな日本人らしい、とても素敵な活動をされている
「古伊万里再生プロジェクト」
をご紹介したいと思います。
お話を伺ったのは、裏千家茶道家でもある代表の保科眞智子さん。
このプロジェクトは、保科さんがオーストリア大使公邸で催された茶会で、ロースドルフ城の城主に出会ったことから始まります。
ヨーロッパ各地のお城では東洋の珍しい品々を飾り、来客をもてなしていて、ピアッティ家は18世紀頃から古陶磁のコレクションを始めていたそうです
ところが、第二次世界大戦が始まり、城主は大切な古伊万里のコレクションを地下倉庫に隠していたそうですがロシア軍に見つかり、沢山のコレクションは粉々に破壊されてしまいました。
その後、当時のロースドルフ城の城主はその粉々になってしまった陶磁器の破片を捨てることなく、集めて展示。その理由は、二度と戦争が繰り返されないようにとの願いを込めて。
「陶片の間」
と名付けて誰でも見学できるようにしていたそうです。
その事実を知った保科さんや有志で集まった女性達で2015年プロジェクトを発足。歴史的な芸術作品をこのままの状態にしておいてはいけない。
この貴重な陶片を「平和の象徴」と捉え、日本から手を差し伸べることで「再生」させようと活動を始めました。約1万点にのぼる破片の学術調査を行ったり、修復のため一部を日本に持ち帰りました。
長い間、ほとんど人の目に触れることの無かった古伊万里の破片は埃まみれで汚かったそうです。
それを写真のように綺麗にして、ひとつひとつジグソーパズルのように繋ぎ合わせる作業…気が遠くなりそうです。
今回、修復した作品の一部を見せていただきました。
どこが継ぎ目なのか全く分からない、日本の修復技術の高さに改めて驚きました。
保科さんを初めとするプロジェクトのメンバーは全員素人女性。しかも全員OurAge世代です。
ノウハウも分からない中「遠く離れた土地で、大切に保管されていた古伊万里たちを蘇らせたい」という強い想いでオーストリアまで足を運び、専門家や協力者を探し大変な苦労があったかと思います。
本来であれば、修復された古伊万里たちを持ち帰りロースドルフ城でお茶会を開催する予定だったそうですが、コロナの影響で延期となりました。
※こちらは展覧会には出展されていません
私は個人的に、完全修復されていない作品に心を引かれました。継ぎ目がわかるからこそ、その丁寧な仕事や、繊細さがより伝わってくるようでした。
そして、この修復された古伊万里をはじめ、ロースドルフ城のコレクションが海外初公開されます。
保科さんは「日本の高い修復技術はもちろんのこと、ロースドルフ城と古伊万里のストーリーをぜひ知って欲しい。」と話されます。
開催期間中、ホテルオークラ東京ではタイアップイベントとしてオーストリア料理やデザートメニューが楽しめるそう。
芸術の秋とと食欲の秋が一度に楽しめそうです。
コレクション展の様子とウィーンの美味しいお料理も体験し、ご紹介したいと思います。
大倉集古館
『海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~』展
2020年11月3日(火・祝)〜2021年1月24日(日)
古伊万里再生プロジェクト