おうちで楽しむ、京の味と物
新型コロナの状況は少し落ち着いてきてはいますが、まだ遠くへの旅行はむずかしいですね。おうちにいながら京都気分に浸れる、『おうちで楽しむ 京の味と物』をご紹介しています。インターネットや電話などで、全国どこからでも注文できます。
第27回
水滴がしたたるような、みずみずしい姿の器
「うつわhaku」
なんて不思議な器でしょう。薄手の白地の器の表面に、細かな雫が滴っています。
まるで冷たいものを入れた時に、ガラスのコップにできる水の雫のよう…。
器には、まるで側面から下へと転がったように、雫はコロンとした丸い水玉に姿を変え、キラキラと真珠のような光を帯び、なんとも不思議な世界がそこに広がっています。
このみずみずしい姿の器の作者は、陶芸家のひろすえたかこさん。
京都の美術大学で陶芸を専攻し、卒業後は、美術制作会社で働いていたそうですが、陶芸を仕事にしたいと会社を辞めて、器の表面のガラス被膜部分である釉薬を専門的に勉強できる研究所で釉薬の研究を重ね、現在陶芸家として活動なさっています。
白生地をベースに、透明感のある本物の水滴を思わせる釉薬を施した器は、自然現象で現れる造形の美しさを器に表現。その姿は、見る人の心を魅了してやみません。
この器が誕生までには、かなりの試行錯誤があったことを、店に置かれた約1万6千枚におよぶ釉薬の小さなテストピースが静かに語ります。
化学実験のように、微妙に調整を繰り返す釉薬の研究…その地道な努力こそが、この作品を生み出した礎なのです。
「料理を盛った時、その美味しさが際立つような器でありたい…」とおっしゃるひろすえさん。その思いは、店名「うつわhaku」に込められています。hakuは余白のハク。日本の美意識とも言われる「余白の美」がそこに…。
「お刺身なんか盛ったら、新鮮さが際立ちますね~」と、水滴から単純に連想する私。「はい、そうですね~でも他のお料理でも、お使いいただけると思いますよ…」と。
器表面の水滴のような小さな銀色の粒は、1200℃以上の窯で焼くと現れるもので、表面がガラス化して取れないそうで、日常使いの器として愛用できるもの嬉しいこと。
「こういう器に盛ったら、なんでも美味しそうですね~」と、手抜き料理が続くおうちご飯にとって、気分を上げる効果も期待できそうです。またティータイムに使えば、いっそう心和むひとときになるのでは…。
器一面に広がった雫は、指で触れても、その姿は消えることはありません。
「京都御苑」の北、「相国寺」の東側にあるショップは、白を基調にした内装と大きな窓から注ぐ陽光が心地よい空間を作っています。
ショップを始めて13年。この場所には、3年ほど前に移転。交通量の多い今出川通から少し入ったこのエリアは、かつて「相国寺」の七重塔や西郷隆盛の私邸などがあった歴史的な場所だそう。窓から見える近隣の土壁の塀が、京都情緒をもたらしています。
「週末と火曜日だけ営業していますが、それ以外は、ご注文頂いた器や定番の品々の制作をしています」。ショップの奥は、ひろすえさんの工房。そこでは、定期的にろくろや手びねりの成形や釉薬掛けまでできる陶芸体験や、レギュラーで制作できるコースなども行われるそう。
テレビ番組などで俳優への陶芸技術指導もされるひろすえさん。京都市内だけでなく、通われている方は他府県にもいらっしゃり、ここに来ることを目的に京都旅を楽しんでいるとか。
さて、京都には、なかなか行けないけれど、おうち時間を素敵にするものが欲しい!という方には、ぜひ「うつわhaku」のオンラインをご利用になってはいかがでしょう。
実際に手にしたい…そんな思いが募るはずです。
うつわhaku
京都市上京区上塔之段町465
☎075-211-0892
営業時間 12:00~17:00 火・土・日曜営業
アクセス 京阪「出町柳駅」徒歩13分
小原誉子のブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」