2年前の2012年10月、帝国劇場に夢のようなファンタスティックな舞台が誕生して話題になりました。
私たちの世代にユーミンは特別な存在です。
中央フリーウェイ、ひこうき雲、ルージュの伝言、卒業写真…だれもが口ずさめる歌がたくさん、今でも古さを感じさせず映画でも使われて息子達の世代も知っています。
帝国劇場も開場から101年を迎え、新世紀を迎えるにあたって節目を飾ってほしいと松任谷正隆さんとユーミンに依頼したそうです。「芝居ではなく、ミュージカルでもなく、コンサートでもない、新しい舞台をつくりたい」「演劇と音楽の力を合わせ、観客に純愛という名の催眠術をかけたい。」
2年前の舞台「純愛物語 meets YUMING「8月31日〜夏休み最後の日」を観て感動しました。
物語が展開していくのですが、現実と脳内の(空間を越える)物語でした。物語の中でユーミンがANNIVERSARYを歌った時があまりにもそのシーンにぴったりで涙が止まらなくなりました。ユーミンは「人のイマジネーションに優るものはなくそれぞれの思い出とリンクさせて大きくなって行くのです。引き出しをたくさん持っていてこんな物が入っていたのだと確認してその時に合わせてスイッチを押せる」とインタビューで話をしていました。やはりユーミンは天才のスーパースターなのだと改めて思いました。
前回がとてもよかったので今回はどうなのかしら?と思っていましたがバージョンアップされていてさらに進化して素晴らしかったです。
「あなたがいたから私がいた」
どんな意味?と思いますよね。
恋愛だけのことではないのを年齢を重ねるほどわかって来ます。8年前に母を亡くして実感しました。人は孤独では生きていけません。今の私があるのもたくさんの人との出会いがあり、家族、友人皆に助けていただいたからです。無駄な経験は一つもなく毎日の積み重ね、一期一会の繰り返しです。
今回の物語は教会のお葬式から始まります。「園子さんは・・・」牧師さんがエピソードを話します。そこでユーミンが出て来て歌います。ユーミンは若々しく素敵な姿で魅力的な歌声も昔と変わりません。
舞台は、戦争中の若い男女、園子(比嘉愛未)春子(福田沙紀)栄一(渡部豪太)三人の物語です。現代と二つの時代を行き来する<時を超える>設定になっています。
戦争という大変な時代の話を前に母の友人に聞いた時に「戦争中、戦後は大変だったけれどその中でも女学生としてそれなりに楽しく過ごしていたのよ。」と話をしてくれたのを思い出しました。戦争はとても悲しいことですがその中でも明るく前向きに生きて行く若者の姿を見てより悲しさが伝わります。
戦争に行くことの決まった栄一は園子に告白します。そこで園子は・・・春子は・・・。三人の関係が変わって来ます。
幼なじみ三人の人生、友情、恋愛、そして別れ・・・
そんな時間の流れをユーミンの曲とともにたどって行きます。
年を重ねた記憶の障害を持つ園子を演じる藤まりこさんの熱演には感動しました。普通年齢を重ねると若い役を演じたいという女優さんが多いそうですが、美しい女優さんのイメージを一新して老女の役を見事に演じていました。青春時代の明るく可憐な比嘉愛未さん演ずる園子とのギャップがより悲しみを感じさせます。
大好きな歌「守ってあげたい」のユーミンの歌は心に響きました。従妹の結婚式で従姉妹皆で歌った思い出の曲です。春子と園子も従姉妹同志なのでより感動し涙が溢れました。これは男女間だけに限らず、親子、友人などいろいろな人間関係に通じる歌詞なのですね。ユーミン自身も最初の意味よりも深くなったそうです。舞台はファンタジーの世界。四季折々の風景、樹、色鮮やかな花火を音と映像や照明を使って美しく表現されます。
最後の方で息子の信二を演じる石黒賢さんの台詞には涙が止まりませんでした。ユーミンと夫の松任谷正隆さんのプロデュースのこの舞台への思い、俳優さんの役作りに対する熱意がかかれているパンフレットは読み応えがあります。
まだ上演中ですので総てを書けませんが是非会場でご覧になってくださいね。(10月31日まで)
この舞台を紹介してくださったのは知人で若手女優の「折井理子」さんです。老人ホームで園子さんの世話をする優しい看護士さんを演じていらっしゃいます。終演後楽屋に友人皆(9名)で伺いました。
桐朋音大声楽家出身で帝国劇場「レ・ミゼラブル」のコゼット役を好演して活躍中です。小柄で可愛い方ですがとても美しく通る美声です。これからの活躍が楽しみです。
新しいユーミンのエンターテイメント、また次回の舞台を楽しみにしています。日本のスーパースターの存在を世界に知って欲しいと思っています。
■あなたがいたから私がいた
http://www.tohostage.com/yuming/