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おうちで楽しむ、京の味と物(52)京の冬の風物をテーマにした手ぬぐい展「細辻伊兵衛美術館」

小原誉子

小原誉子

「京都観光おもてなし大使」&旅ライター
アナウンサー、テレビ番組プロデューサーなどを経て、集英社「エクラ」などのライターに。
2011年より京都に在住。
京都など、日本の文化・観光情報を伝える
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第52回

「細辻伊兵衛美術館」

 

京都の町中にある「細辻伊兵衛美術館」は、江戸時代から続く綿布商「永楽屋」の十四代当主細辻伊兵衛さんが、2022年の春に開館した手ぬぐいをテーマにした美術館。そこには、「永楽屋」が、時代を超えて作り続けた数多くの手ぬぐいや歴史的資料を展示。京都の町衆の文化に興味がある人にとっては、見逃せない美術館です。

 

 

そもそも幅36センチ、長さ約91センチの小巾の木綿を染めた手ぬぐいは、江戸時代から多岐にわたる用途に使われる生活の必需品。広く庶民に普及した日本を代表する生活用品のひとつです。

水分を吸収したり、ものを覆ったり、包んだり、縛ったり…などの機能性の高さもさることながら、そこに染められたデザインの豊かさこそ、「永楽屋」の手ぬぐいの最大の魅力と言えましょう。

 

木綿の小巾という限られたスペースに、日本画家や友禅の絵師などが、その才能を発揮したアート…掛け軸や屏風の絵とは異なり、そこには、遊び心が感じられ、きっと絵師自体が楽しんで描いたのではないかと想像します。

 

手ぬぐいの図柄は数知れず、京都の名所や四季折々の景色をはじめ、歴史的人物、舞妓さんのスキー姿や愛らしいネコなど、それぞれの時代の人々を魅了する意匠が、描かれています。

 

 

さて、「ウィンターエキシビション」と題された企画展に登場するのは、京都の冬の風物約30点。

寒さ厳しい京都の冬に人々が愛する品々をテーマにしたものや節分の鬼を題材にしたもの、また赤穂義士の討ち入りを描いたものなど、江戸末期から昭和に至る手ぬぐいが展示されています。

「どうしてこんな発想が生まれるんだろう?」と思ってしまうほど、大胆で自由奔放なデザインが、手ぬぐいの幅を超えるスケールで展開され、そのひとつひとつに心惹かれると共に、優れたグラフィック的な構図に驚くばかりです。

 

 

近年、手ぬぐいの魅力に嵌る外国人観光客が増加。まさに日本らしいデザインの素敵なお土産。かさばらず、持ち運びにも便利な手ぬぐいは、京都を代表する土産として、すでに江戸時代には、諸国から訪れる人たちの人気の品でもあったそう。尚、外国人観光客は、手ぬぐいを室内装飾のタペストリーとして使うケースが多いとか。

 

四季折々の風物を描いた手ぬぐいは、室内に季節感をもたらす品として、もっと活用してはいかがでしょうか?

 

 

さて、2階の展示スペースには、江戸の創業以来、白い綿布を幅広く商う「永楽屋」が所蔵する貴重な歴史的資料を見ることができます。

 

今回、女性の入館者が特に足を止めるのは、昭和初期のこの家の婚礼支度。

婚礼支度を乗せたトラックの列に、京都の老舗豪商の様子が伺えます。

(企画展により、展示内容は変わります)

 

 

さまざまな時代の波の中で、それぞれの店主が、商いの才を発揮し、時代に果敢に挑む綿布商の「永楽屋」。

そして今、この美術館を開館したのには、「伝統の手ぬぐいの優れた染めの技術や時代を敏感に反映した意匠を次世代に継承すると共に、現代のさまざまな若手アーティストとのコラボなどで、新な作品を生み出してゆきたい」という十四代細辻伊兵衛さんの強い思いがあったからこそ。

京都でも、鋭い感性と優れた審美眼をもつ人物として知られる十四代細辻伊兵衛さん。

多くの若手アーティストの才能の発掘にも積極的に取り組まれています。

 

 

美術館の一角には、細辻さんが自ら製作した、大胆な手法で染められた「スマッシュアート」の作品が登場。

まるで銀河を思わせる不思議な魅力を湛えた作品です。

これがどうやって製作されるかは、ぜひ会場にてお知り下さい。

きっと「え~」と驚くはず…。

 

 

美術館には、手ぬぐいが種類豊富に揃うショップと共に、新たに帆布を用いたオリジナルデザインの鞄のショップも…。

 

京都旅でぜひ訪れたい場所です。

 

 

「細辻伊兵衛美術館」

京都市中京区室町通三条上ル役行者町368

☎075-256-0077

開館時間 10:00~19:00(入館~18:30)無休

入館料 1000円(オリジナル手ぬぐいによるチケット付き)

 

*冬の企画展「ウィンターエキシビション」は、12月3日~2月28日開催

ホームページ

 

 

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