今出川通から寺町通を北に上り、「阿弥陀寺」の前から路地に…。売切れになると評判の「鎌餅」のお店があります。明治30年創業の「大黒屋鎌餅本舗」です。古い構えの店は、いかにも実直に商いを続けてきたことを物語るよう。現在、三代目となる山田充哉さんが、創業当時からの味を守り続けています。
観光シーズンには、午前中に売り切れになるといわれる名物「鎌餅」は、その名が示すように、細長く、鎌の刃のような形。柔らかな餅は、白い羽二重のように、餡を包み、うっすらと表に中の餡の色を透かせます。ひとつひとつ経木(きょうぎ)で大切に守られた「鎌餅」を口に含むと、上品な甘さが広がり、長らく京の人たちに愛されてきたことが頷ける飾り気のない美味しさ。お茶席などにも登場する洗練された庶民の味なのです。
そもそも「鎌餅」は、江戸時代に京都の入り口のひとつ鞍馬口の近くの茶店で作られていたそう。後に姿を消した茶店の味を、明治になり、こちらの創業者が復活させたのだとか。
「鎌の形は、豊作を意味しているんです。また、豊かさを収穫するとか、旅の厄を祓うという意味もあるんです」と、ご店主。日持ちはしないので、その日のうちにいただきます。
さて、ここ「大黒屋鎌餅本舗」には、京の味みやげにふさわしい、日持ちのする品も。それが「懐中しるこ」です。
めでたい烏帽子を象った形で、表面の焼き色は、炭火で丁寧につけられたもの。お椀に割りいれて、熱いお湯を注ぎます。ほどよい甘さと香ばしい皮が味わえ、冬の冷えた体を温めます。
また、薄目の形状の「でっち羊羹」も名物のひとつ。
竹皮に包まれた蒸羊羹で、竹皮の香りがほんのり羊羹に移り、さらに美味しさを誘います。こちらは、京都のお店に奉公に来ていた丁稚さんが、里帰りのお土産にした品で、値段も控えめ、薄いので故郷にもって帰るのにも便利だったとか。しっかりした甘さの練羊羹が苦手という人でも、ほんのりとした甘さなので、食べやすい羊羹に…。
京の名物のひとつと言われる甘味たち。京みやげに買って帰りたくなる品々です。
大黒屋鎌餅本舗
京都市上京区寺町通今出川上ル4丁目西入ル阿弥陀寺町25
☎075-231-1495
営業時間:08:00~20:00 第1・3水曜休み
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