こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
今回は東京国立博物館で開催中(~2023年9月3日〈日〉)の「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」をご紹介します。はるかな国、メキシコからやってきた華麗なる女王様にお会いするチャンスです。「赤の女王」(スペイン語でレイナ・ロハ)と呼ばれる女性の遺体が1994年に出土し、世界に驚きを与えました。
今回の特別展では、その墓からの出土品がメキシコ国内とアメリカ以外ではじめて公開されます。マスクや冠、アクセサリーなどの華麗な装飾品が必見です。
アメリカ大陸には、ヨーロッパやアジアとは無関係な形で独自に発展した高度な文明があり、メキシコは今もその伝統文化を継承しています。紀元前15世紀から紀元後16世紀にスペインがアメリカ大陸に侵攻するまで、メキシコでは、3000年にもわたり、古代文明が繁栄したのです。この特別展では、そのうちマヤ、アステカ、テオティワカンという代表的な3つの文明の遺跡からの出土品約140件が展示され、独自の世界観、死生観によって生み出された不思議な美の世界を堪能できます。
第1章「古代メキシコへのいざない」
マヤ、アステカ、テオティワカンは、古代メキシコを代表する文明です。
ここではまず、各文明の出土品から、古代メキシコ文明に共通する特徴を見て行きます。
トウモロコシはアメリカ大陸を代表する栽培植物で、現在もメキシコ人の主食です。チコメコアトル神は熟したトウモロコシの女神で、農村でも宮殿でも、盛んにこの女神の像が造られました。両手に2つずつトウモロコシを持っています。
農耕が主だった古代メキシコでは雨季と乾季の違いが重要で、太陽暦が使われていました。また、月や金星、日食、月食の周期なども観測していました。天体の動きを知ることは、古代メキシコ人の生活に欠かせない要素だったのです。
こちらの石板には、夜空を表現した素晴らしいレリーフが施されています。
シぺ・トテック神は「皮を剥がれた我らが主」という意味で、生贄となった人間の皮をまとった男性の姿で表されます。人身供犠、すなわち人間を生贄とする儀式は3000年以上この地で継続された慣習でした。戦争捕虜が多かったのですが、女性や子供の生贄もありました。それらを描写した彫刻や壁画も数多く残っています。
この慣習の根底には、あらゆる生命体は神々の犠牲によって生まれており、自然界の動植物も他者の犠牲によって保持されているという考え方があるようです。つまり、豊かな食物を得るための犠牲として生贄を神に捧げるということです。
第2章「テオティワカン 神々の都」
テオティワカンは、海抜2300mほどのテオティワカン盆地に築かれた古代都市で、10万人もの人が住んでいたということです。中心となるエリアには「死者の大通り」というまっすぐな道があり、3つのピラミッドなどの重要な建物が並んでいます。古代人の世界観や暦に基づいて計画的に造られた先端的な都市でした。
地平線に沈んだ(死んだ)夜の太陽を表すとされます。西に沈んだ太陽は水の地下界をさまよい、夜明けとともに東から再生すると言われています。
貝で装飾された鳥の形の土器。テオティワカンは内陸部で本来貝はないはずですが、他の多くの貝製品とともに出土しました。これはメキシコ湾周辺の地域との交易が行われていたことを示しています。
第3章「マヤ 都市国家の興亡」
マヤ地域は政治的に統一されることはなく、多くの王朝や都市が並列する形でした。暦や文字など高度な知識を持つ王族が中心となり、周辺地域との交易や戦争を繰り返して発展しました。
王、もしくはそれに次ぐ高位の男性を表した土偶。
さまざまな装飾品で着飾っていますが、これは祭祀の際の服装で、普段はもっと簡略な姿をしていたということです。
カカオの実でできた首飾りをつけた猿の神。
これは土器の蓋で、猿はカカオを好んで食べることから、このような形に表されることが多かったとのこと。マヤやアステカの人々もカカオで作った飲料をよく飲んでいました。
「赤の女王」(レイナ・ロハ)は、マヤの代表的な都市国家であるバレンケの黄金時代を築いたパカル王の妃とされます。赤い辰砂(水銀朱)に覆われて見つかったことから「赤の女王」とよばれます。
今回は、その墓からの出土品が初来日。「赤の女王」をイメージした赤いマネキンが女王の装飾品を身に着けています。
上の写真のマネキンを横から見たところ。
ヒスイ輝石岩、孔雀石など希少な半貴石がふんだんに使われています。
第4章 「アステカ文明 テノチティトランの大神殿」
首都テノチティトランを築き、強国を拡大しましたが、スペイン人の侵攻により滅亡しました。
首都テノチティトランの大神殿(テンプロ・マヨール)の北側の「鷲の家」に置かれていた2体の像のうち1体。170cmもの高さがある立派な像で、勇敢な軍人である「鷲の戦士」の姿を表していると言われます。
トラロクは大地を神格化した雨の神。降水量は農耕に大きな影響を与えるため、雨ごいのために祈祷が行われ、供物や子供の生贄が捧げられていました。
ミュージアムショップには、カラフルで楽しいメキシカングッズもたくさん並んでいます。
これらは現代に作られたお土産品ですが、よく見ると、今回の展示物にどこか似たものもあります。古代メキシコ文明の美意識は、今も脈々と生き続けているのですね。
特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」
東京国立博物館 平成館
2023年6月16日(金)~9月3日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時 ※土曜日は午後7時まで
※総合文化展は午後5時閉館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、7月18日(火) ※ただし、7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開館
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